('、`*川あたしの親友のようです从'ー'从

1 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:38:45 ID:28qcjxVA0オレンジデー祭参加作品です

2 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:39:25 ID:28qcjxVA0
昔から束縛されることが嫌いだった。付き合うとか、ましてや結婚とか、窮屈そうでまるで魅力を感じない。あたしの人生はあたしのもの。他の誰にもくれてやるもんか。
(; ´ー`)「意味わかんねえって。ちゃんと説明しろよ、何怒ってんだよ」
('、`*川「別に怒ってないし、そういうところがウザいって言ってんの。もう連絡してこないでね」
('、`*川(めんどくさ……)
('、`*川(一回やっただけで何彼氏面してんだか。ばっかみたい)

3 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:39:52 ID:28qcjxVA0
(;´・_ゝ・`)「い、伊藤さん、そういうのやめたほうがいいよ」
('、`*川「は? 何よ、そういうのって」
(;´・_ゝ・`)「だから、男を取っ替え引っ替えするような……」
('、`*川「人聞きが悪いわね。別に浮気してるわけじゃないし、割り切ってるんだからいいでしょ。何が問題なの?」

4 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:40:12 ID:28qcjxVA0
(;´・_ゝ・`)「問題あるよ!……だって」
(*;´・_ゝ・`)「す……好きな人がそういうことしてるの、嫌に決まってるじゃん……」
('、`*川「……」
('、`*川「……は?」

5 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:40:53 ID:28qcjxVA0
最初は「そういうフリ」かと思った。わかったような顔で頷いて、理解者を気取って、自分が更生させてみせるって張り切る奴。「冷たい女の心を溶かしてやった俺」を演じたいだけの一番くだらない男。
(*´・_ゝ・`)「日本酒がおいしい店見つけたんだ。今日はそこに行こう」
('、`*川「いいけど、あんたって下戸じゃなかった?」
(´・_ゝ・`)「そうだけど……でもペニサスは日本酒好きでしょ?」
(*´・_ゝ・`)「それにご飯もおいしいんだ。一緒に食べようよ」
('、`*川(変な奴)

6 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:41:28 ID:28qcjxVA0
その店は狭いし椅子も固かったけど、肉豆腐が妙においしかった。私が日本酒を何杯呷っても肉豆腐を独り占めしても、デミタスは嬉しそうに笑っていた。
そのまま家に上がり込む気かと思ったら、送り届けたら帰るだの言いやがる。しかも遠慮がちに「手繋いでもいい?」だって。バッカじゃないの。今時小学生でももっと進んでるわよ。ナメてんの?

7 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:42:12 ID:28qcjxVA0
(;´・_ゝ・`)「うわ、また散らかしてる。ダメだよペニサス、ちゃんと片付けないと虫が湧くよ」
('、`*川「やっといてー」
(;´・_ゝ・`)「もう、しょうがないなぁ……」
('、`*川「あんたさ、なんで私のためにそこまでしてくれるわけ?」
(´・_ゝ・`)「好きだからに決まってるでしょ」
('、`*川「……ふーん」
どうせすぐ飽きて離れていくだろうと思ってたけど、デミタスはしぶとかった。これが愛されるってやつ? ふーん、そっか。なかなか悪くないじゃん。
そう思ってたのに。

8 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:42:44 ID:28qcjxVA0
(´・_ゝ・`)「ごめん。別れてください」
('、`*川「え?」
(´・_ゝ・`)「僕、好きな子が、できて」
('、`*川「……」
あたしとデミタスの関係は呆気なく終わった。

9 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:43:14 ID:28qcjxVA0
('、`#川「ざっっっっけんな!!! あのハゲェ!!!!」
从*'ー'从「ハゲって! あはは、ウケる~!」
('、`#川「笑いごとじゃねーし!!」
渡辺綾香は口元に手を添えてコロコロと笑っている。女らしいその仕草も、ピンクのモヘアニットも、ジュースみたいな酒も、あたしなら絶対に選ばない。

10 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:43:52 ID:28qcjxVA0
('、`#川「ったくよぉ……何が「ずっと一緒にいたい」だよ……クソッタレがよぉ……」
从'ー'从「あ、地鶏のタタキがある! 追加しちゃおーっと」
('、`*川「あたしの話聞いてる?」
从'ー'从「聞いてる聞いてる~」
絶対聞いてないだろ、この女。だけど店員が持ってきた地鶏に目を輝かせる仕草も、バカみたいに小さい一口を含んで表情を崩す姿も、女のあたしが見惚れるくらい可愛い。だから渡辺には彼氏が途切れないんだろうな。あのハゲ野郎も、渡辺みたいな女だったらきっと手放さなかった。ああもうクソ。本当にクソ。クソクソクソ。

11 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:44:25 ID:28qcjxVA0
从'ー'从「タイミングが悪かったんだろうねぇ」
渡辺がグラスを傾けて、残り少ないカシスオレンジを呷る。氷が音を立てて揺れた。二人きりの狭い個室に静寂がしんと降りる。若いグループの笑い声が、扉を隔てた向こうから響いてくる。
从'ー'从「時期的に、好きな子って職場関係かなぁ。新入社員とか」
('、`*川「わかんないけど……それっぽい気がする」
デミタスは職場と家の往復みたいな生活だったから、出会いなんてそこにしかないだろう。そういえばあたしとあいつが出会ったのも職場だったな。あたしは性に合わなくてすぐ辞めちゃったけど。

12 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:46:03 ID:28qcjxVA0
从'ー'从「元カレ君、しんどくなってきたんだろうねぇ」
('、`#川「それ、まさにそう言ってたわ。僕には無理だったとか、支えきれなくてごめんとか。ふざけんじゃねーっつーの」
結局あいつも他の男と同じ。誠実そうな顔で近寄ってきて、飽きたらポイ。ふざけんな。ふざけんな。クソッタレ。あたしの人生はあんたらが気持ちよくなるためのおもちゃじゃねえんだよ。

13 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:46:32 ID:28qcjxVA0
从'ー'从「でもさでもさ、ペニちゃんも似たようなことしてたよね~?」
('、`#川「はぁ? 私がいつ……」
从'ー'从「ほら、高校のときクラスメイトだったは瀬川君とか。ペニちゃんのこと本気で好きだったのに、あんな振り方して可哀想だったよ~?」
('、`;川(……は瀬川とかクラスにいたっけ?……いたんだろうな)
渡辺は人のことをよく覚えてる。顔や名前はもちろん、会話の内容や思い出話まで。絶妙に庇護欲をくすぐる顔立ちもあって、学生時代からモテていたし、女子からは嫌われていた。何もかも違う私達が今でも会う間柄なのは、女社会の異物同士だったからかもしれない。

14 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:47:57 ID:28qcjxVA0
('、`#川「てかさ、渡辺も空気読んでよ。あたしのこと慰めるとかないわけ?」
从'ー'从「え~? ペニちゃん、前に「女同士の馴れ合いとか慰め合いってウザい」って言ってたじゃん。自分はいいの? ワガママ~」
('、`;川「うっ……」
言ったかもしれない。いや、多分言った。だって女のそういうところってウザいじゃん。メソメソグズグズして、自分の中で答えは決まってるくせに、他人から言葉を引き出そうとするところ。それにしても渡辺って意外とはっきり物を言うのよね。嫌われてた理由もモテるとかよりこういうところだったな、そういえば。

15 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:48:24 ID:28qcjxVA0
('、`*川「……言ったけど、さぁ……」
言ったけど、つらいものはつらいし、しんどいものはしんどいんだよ。そんな時くらい慰めてくれたっていいじゃん。友達ってそういうものじゃん。あたしたちって友達じゃないわけ?

16 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:48:48 ID:28qcjxVA0
从'ー'从「昔から思ってたけど、ペニちゃんはワンナイトとか向いてないよ~。元カレ君とはダメだったけど、次もちゃんとお付き合いしたほうがいいと思うな~」
('、`#川「はぁ?」
('、`#川「何よそれ。バカにしてんの?」
从'ー'从「え~? してないよぉ。なんで怒ってるの?」
いやしてるだろどう見ても。思いっきり見下してるだろ。自分は彼氏と順調だから上から目線ってか?結局渡辺もあいつと同じか。私のことを理解したふりをして下に見てる。

17 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:49:10 ID:28qcjxVA0
うざい。うざいうざいうざいうざい。どいつもこいつもあたしをバカにして!
('、`#川「あたし、もう帰る」
从;'ー'从「えぇ~? ちょっと、ペニちゃ~ん!?」
万札を机に叩きつけて店から飛び出した。当然渡辺からメッセージや着信が飛んでくる。全部無視して、通知も速攻スワイプで消した。

18 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:49:59 ID:28qcjxVA0
( 、 *川「あー……もう……」
( 、 *川「……クソ……」
本当、全部クソッタレだ。


.

19 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:50:36 ID:28qcjxVA0
それからの日常は静かだった。といえば聞こえはいいけど実際はひどいものだ。生きているというよりも、ただ死んでないだけのような毎日。
起きて、食事をして、風呂に入って、寝る。ひたすらその繰り返し。喋る相手といえばコンビニの店員くらい。重い指を動かしてアプリをダウンロードしてみたはいいものの。
('、`*川「……めんどくさ」
マッチングどころかアプリを開いた時点で面倒臭さが限界突破、即アンインストール。一年も経っていないのに、男漁りをしていた日々が遠く感じる。もう特定の相手はいないんだから好きなだけ遊べるのに。金は若干心許ないけど、暇ならいくらでもある。

20 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:51:27 ID:28qcjxVA0
('、`*川(……あー)
('、`*川(あたし、デミタスと渡辺以外、何にもなかったんだな)
学生時代の縁なんて全部千切れて、渡辺以外の連絡先もわからない。デミタスと付き合うまでひっきりなしに連絡してきた男達も「そういうこと」ができないと知ったらそれっきり。
一人で生きていけると思ってた。デミタスと渡辺、二人にしがみつきながら「一人で生きてる」と思い込んでた。二人との交流が途切れた今、あたしは汚部屋に逆戻りした自室でゴミのような生活をしている。
あたしってなんだ。あたしの人生って、いったいなんだ。

21 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:51:58 ID:28qcjxVA0
('、`*川「……腹減った」
もはや体を動かすのは食欲と排泄欲が芽生えた時のみ。何これ、生きる屍? ゾンビってやつ? 笑えねー。
('∀`*川「はは、ウケる」
全然ウケねーし、普通に死にたいんだが。

22 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:52:40 ID:28qcjxVA0
毛玉まみれのスウェットを脱いで、普段着に着替えるまで十分かかった。沈んでいく太陽をぼんやり眺めながら見慣れた道を歩く。
('、`*川(いつものコンビニ飽きたな。あの店弁当の種類少ないし)
ここ数日ヘビロテしていたお陰で、弁当コーナーはとっくに制覇済みだった。幸い近くに別のコンビニがある。今日はそっちにしようと顔を上げた、その瞬間だった。
('、`*川「あ」
(;´・_ゝ・`)「……あ」
もう少し暗くなっていたら気付かない可能性もあったのに、ばっちり視界に入ってしまった。

23 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:53:08 ID:28qcjxVA0
('、`*川「……は? なんでいんの?」
(;´・_ゝ・`)「いや、そういうのじゃなくて、たまたま通りかかっただけで……」
ミセ*゚ー゚)リ「デミタス君、知り合い?」
あたしより数段高い、鈴が転がるような声。渡辺と同じかもう少し華奢な体躯。ご多分に漏れずふんわりした服。自分の影から出てきた女を、デミタスは庇うように立ち位置を変えた。

24 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:53:50 ID:28qcjxVA0
('、`*川「……何? 見せびらかしに来たの?」
(;´・_ゝ・`)「違っ、本当に違うんだって! これからご飯食べに行くところで、それで……!」
ミセ;*゚ー゚)リ「え? え?」
わかってる。デミタスはそんな男じゃない。あたしのことを嫌いになったわけでもないし、あたしを見返してやろうと思っているわけでもない。

25 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:55:01 ID:28qcjxVA0
だけどあんたが庇っている女は、その女が今立ってる場所は。本当ならあたしの場所だったのに。
ミセ*゚ー゚)リ「……あの!」
その女はデミタスの後ろから飛び出して、あたしの目の前に立ち塞がった。

26 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:56:11 ID:28qcjxVA0
ミセ*゚ー゚)リ「事情はわからないけど……デミタス君が困ってるので、やめてください!」
(;´・_ゝ・`)「ミセリ! いいから!」
ミセ#゚ー゚)リ「よくない!」
ミセ#゚ー゚)リ「私はデミタス君の彼女だから、言う権利があるの!」
('、`*川(……あ)
彼女。かのじょ。あたし、デミタスの彼女として何かしたことがあったっけ。

27 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:56:33 ID:28qcjxVA0
ミセ*゚ー゚)リ「……予約時間過ぎちゃうから、行こ」
(´・_ゝ・`)「あ……うん」
(´・_ゝ・`)「……」
(´・_ゝ・`)「……ペニサス」
( 、 *川「……」

28 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:58:14 ID:28qcjxVA0
(´・_ゝ・`)「……君にはひどいことをしたと思ってる。本当にごめん」
(´・_ゝ・`)「でも、これからはもう関わらない」
(´・_ゝ・`)「……ごめん」
( 、 *川
デミタスと彼女の後姿をずっと眺めていた。お店。予約。去り際に聞いた言葉が頭の中でグルグル回って、記憶と繋がった。「早く行かないと席埋まっちゃうじゃん」デミタスを急かしながら二人で歩いたこと。

29 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:58:49 ID:28qcjxVA0
( 、 *川「……あぁ」
思い出して、思い出さなきゃよかったと思った。あの肉豆腐が美味しい店。他の料理も意外に美味しくて、通ってみれば居心地良く感じてきて、二人で何度も足を運んだ。
デミタスと別れて以来行けなくなった店。

30 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 14:59:42 ID:28qcjxVA0
頭を小突かれた。それが雨だと気付いたのは、何度も小突かれて髪も服もずぶ濡れになった頃だった。もはや空腹なんてとうに感じなくなっていたけど、家に戻る気力もなかった。
太陽が沈んだ空は暗い。その上この雨で、誰も彼もが足早に通り過ぎていく。

31 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:00:10 ID:28qcjxVA0
ちょうどすぐそばに雨を凌げる建物があった。そこは昔数年前までカフェだった場所で、今でも色褪せた「テナント募集」の張り紙が貼られている。ありがたいことにオーニングは残っていて、あたしはそこに身を寄せた。
雨はますます酷くなっていく。大粒の雨が、行き交う人々と立ち尽くすあたしを分断するカーテンのようだと思った。
ふと、ポケットに入れたままだったスマホを思い出した。

32 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:00:36 ID:28qcjxVA0
( 、 *川(渡辺……)
そういえばあの日から連絡を取っていない。メッセージアプリを開くと、未読メッセージや不在着信が十数件入っていた。
『~♪』
( 、 *川
『~♪』
( 、 *川(出るわけないよね)

33 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:01:08 ID:28qcjxVA0
当たり前だ。勝手にキレて店から飛び出して、連絡を無視し続けていたのはあたしだ。そういえば電話をかける前に「ごめん」の一言すら送ってない。あたしって本当にこういうところだ。本当に。
( 、 *川(渡辺、週末はいつも彼氏と会うって言ってたし)
仕事が続かないあたしと違って、渡辺は堅実に働いている。渡辺は昔からそうだった。ふわふわしていておっちょこちょいで掴みどころがないのに、そのくせ芯はしっかりしてる。

34 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:01:56 ID:28qcjxVA0
渡辺は嫌われることも多かったけど、ちゃんと友達はいた。きっと今でも連絡を取り合っているのだろう。あたしと違って。
( 、 *川(羨ましかったんだよなぁ)
ふらふらと根無し草のように生きてるあたしとは正反対。「かっこいいな」って、本当は思ってた。

从;'ー'从「ペニちゃん!!」
('、`*川「……え?」

35 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:02:28 ID:28qcjxVA0
('、`*川「渡辺、なんで……」
从;'ー'从「ペニちゃんのことだから、遠くには、行ってないだろうって、思って……どうせ、家で、落ち込んでるだろうって……」
言葉の合間に挟まる荒い呼吸音。いかにもデートコーデなセットアップもメイクも雨でグチャグチャ。傘がまるで意味を成してない。
从 ー 从「この――――」
从#'ー'从「バカッッ!!!!!」

36 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:02:55 ID:28qcjxVA0
从#'ー'从「一人で落ち込んで! 何ずぶ濡れになってんの、いい歳して悲劇のヒロイン気取ってるつもり!?」
('、`;川「わ、渡辺……?」
从#'ー'从「一回失恋したくらいでさあ、バッカじゃないの!? こちとら前の彼氏なんて浮気された上逆ギレで修羅場でしたけど!?」
('、`;川「は? え? 嘘、何それ? 聞いてない」
从#'ー'从「てかいつまで座ってんの!? 立てよ!!」
('、`;川「はい!」
あ、立てた。

37 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:03:33 ID:28qcjxVA0
从#'ー'从「てかさ、なんで一人で病んでんの? さっさと私に電話すりゃいいじゃん」
('、`;川「だって前あんなことしたし……どの面下げてっていうか……」
从#'ー'从「は? 今更?」
怖すぎるんだけど。目の前にいるの、本当に渡辺?

38 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:04:39 ID:28qcjxVA0
从#'ー'从「あのさ、ペニちゃんは自分のことサバサバ系って思ってるんだろうけど、誰よりもネチネチしてるから。まずそこを認めて?」
('、`;川「はい」
从'ー'从「自立したいい女ですみたいな顔してるけど、死ぬほど男に依存しちゃってるから。そういうのも卒業して?」
从'ー'从「あと、友達をもっと大切にすること。女とは話合わない~とか言わない」
从'ー'从「ペニちゃんに女友達がいないの、男脳とかじゃなくてそういう見下した態度が出ちゃってるせいだから」
('、`;川「はい……」

39 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:05:17 ID:28qcjxVA0
('、`*川「あ、そういえば渡辺、大丈夫なの?」
从'ー'从「何が~?」
('、`*川「だって週末は彼氏とデートだって……今日もそうだったんじゃ」
从'ー'从「ああ……うん、デートだったけど、切り上げてきたよ」
('、`;川「は!?」
待ってよ、それってまずくない?これがきっかけで喧嘩とか別れたなんてことになったらさすがに申し訳なさすぎる。

40 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:05:55 ID:28qcjxVA0
从'ー'从「え~? そんなの仕方ないじゃん」
('、`;川「でも……」
从'ー'从「だって親友が困ってるんだよ? 助けに行かなきゃだめでしょ」
('、`*川「え?」
雨音のせい? よく聞こえなかったけど。渡辺、今、親友って言った?

41 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:06:42 ID:28qcjxVA0
从'ー'从「あー、服びしょびしょだぁ。ペニちゃんちのお風呂借して~」
('、`*川「うん。洗濯もしていきなよ、着替え貸すから」
从'ー'从「やったあ、助かる~!」
('、`*川「……あのさ、渡辺」
从'ー'从「ん~?」
('、`*川「……ありがと」
从'ー'从「は~い、どういたしまして~」

42 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:07:24 ID:28qcjxVA0
从'ー'从「ていうかお腹空いちゃった~、コンビニで何か買って行かない?」
('、`*川「この格好で?」
从'ー'从「いけるいける~」
('、`;川「いけるかなぁ……」
ビニール傘の中で寄り添って、コンビニへの道すがらくだらない話をした。どこそこのコンビニにイケメンがいるだとか、あのコンビニの新商品がわりと美味しいだとか、そんな箸にも棒にもかからない話を。

43 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:08:08 ID:28qcjxVA0
从;'ー'从「ペニちゃん、もうちょっと詰めてよぉ~! 濡れちゃうじゃん!」
('、`;川「無理無理無理! 肩! 肩もう出てるからこっちも!」
从;'ー'从「これかばん新しいやつなの~! 高かったし~!」
あたしはスッピンだし、渡辺はメイクが落ちてるし、結局お互いずぶ濡れだし、なんかもう色々最悪だ。だけど不思議と気分は晴れていた。

44 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:08:39 ID:28qcjxVA0
('、`*川「あ、そうだ。ご飯と言えばさ」
('ー`*川「肉豆腐がおいしいお店知ってるんだ。今度一緒に行こうよ」


.

45 : ◆eGnLqfyqwY [] :2024/04/23(火) 15:09:03 ID:28qcjxVA0おしまいありがとうございました!

46 :名無しさん [] :2024/04/23(火) 16:06:08 ID:QHTBI3Ds0乙乙!

47 :名無しさん [↓] :2024/04/23(火) 20:09:59 ID:KHjUfiiM0

48 :名無しさん [↓] :2024/04/24(水) 01:16:12 ID:gCV7/Qkw0渡辺みたいな友達欲しいねぇ

49 :名無しさん [↓] :2024/04/24(水) 12:37:39 ID:LXVP/.220乙乙渡辺さんいいこだね~これぞ親友って感じ

50 :名無しさん [↓] :2024/04/25(木) 23:20:04 ID:VTSl0ex60乙乙友達を親友と言いきれる人って格好良い渡辺さんの前の彼氏は見る目が無いなぁ

51 :名無しさん [] :2024/04/27(土) 19:50:36 ID:mq4Bu8No0爽やかな終わりでいいね