四月馬鹿たちのようです

66 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:49:45 ID:/FRKiMFE0


四月馬鹿たちのようです
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67 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:50:18 ID:/FRKiMFE0

『好きだよ』とメールが来た。来た、のでした。
(゚、゚トソン「……」
たった四文字だけで何も他に文字はありません。タイトル欄は空白で、本文を開けばぱっとその文字が鎮座しています。なんだと言うのでしょう。腕を組み、首を傾げて疲れ目を酷使すべく画面の凝視を試みます。カラクリもタネも仕掛けもわからないそれを何度見ようと同じ文面が嘲笑うかのようにぽんと居て、全ての事に頭を抱えました。

68 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:50:47 ID:/FRKiMFE0

いくらお茶目な所がある差出人でも、己が人を悲しませたり怒らせたりする嘘やふざけの類が苦手だと分かっているから、例え四月一日のその日だとしても変なことはして来ませんでした。(流石に他の人にしていたかは知らないけれど)だというのにメールは十一時五十九分だなんて究極至極面倒で絶妙に嫌がらせに近い時間に来ていてなんとも言い難い。
なんて返してやるのが正しいのかもわからない、だからずっとそのままで、頭の中のモヤはどんどん増えていくばかり。
(゚、゚トソン(なんだと言うのでしょう)

69 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:51:11 ID:/FRKiMFE0

もしかしてこの言葉は別のことに対するものなのではと、直近で送った文面を見直しましたがどう考えても関係ない内容。何度目かのなんだと言うのでしょうが頭をよぎります。こちらだって忙しいし彼だって予定は詰めに詰められているはずなのに、何故今日この日にこんなものを寄越されたのか不明瞭が過ぎます。
(゚、゚トソン「いいや、もう」

70 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:51:52 ID:/FRKiMFE0

悩み疲れてしまいました。自然災害に見舞われたんだと思い込みましょう。急なゲリラ豪雨に悩む必要はありません、何処か屋根があるところに行って雨宿りをすれば良いだけ。流石兄者というおふざけが好きな男から悪戯じみたメールが来ても悩む必要はない、正直に返せば良いだけなのです。
カチャカチャターンと怒ってはないですが怒りにも似た感情をエンターキーに込めて打ち付けます。そうして推敲する意味もないくらい短い文面を送り返し、ノートパソコンを畳みました。するとどうです、数ヶ月出来ていなかった掃除を終わらせた時のような達成感、充実感、満足感。よしよし、雨なんて待ってりゃ止むんですよ、さっさと滞ってた仕事終わらせてしまいましょうと動き出した瞬間、電話が鳴りました。癖でケータイと言ってしまうけどもうスマホに切り替えているそれを拾い上げれば件の豪雨様からで、一瞬怯んで通話ボタンを押しました。

71 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:52:23 ID:/FRKiMFE0
( ´_ゝ`)「ね、本当?」
(゚、゚トソン「…………」

名乗りもしなければ主語も何もかもが足りない言葉が耳に響きます。なんですか、忙しいんじゃないんですか貴方様は。メールを返して即レスポンスコールだなんてしないでくださいよ、の意を込めた声をお腹から出してやりました。

72 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:52:47 ID:/FRKiMFE0
(゚、゚トソン「……本当」
( ´_ゝ`)「俺も本当」

嫌味や文句を口説いてやりたかったのに、あんまりにも嬉しそうなお声でそんな事を言うわけです、彼は。ともすれば己の一に対して十喋れる減らず口も少し減ってしまって眉間に皺だって刻まれて狡いんだよなぁがモンスターになって現れるのも致し方が無いのです。

73 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:53:20 ID:/FRKiMFE0

(『私も好き』)
たった四文字に対してたった四文字を返しました。断じて言いますが学生のほの甘いアベックだって今日日しないでしょうことを成人過ぎの人間がやっているのだから笑うか気味悪がるかどっちかなのが大正解。兄者さんの、彼の喜びも私の悔しさも何もかもは赤点級の大間違いなわけです。

74 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:53:52 ID:/FRKiMFE0

(゚、゚トソン「……あの、絶妙な時間狙ったのわざとでしょう。私こういう、作者の気持ちを考えなさい問題苦手なんです。やめてくださいよ」
照れているわけでは無いけど、どうしたってむず痒いしカーディガンの袖を伸ばし伸ばし、ぶつくさ本音のジャブを撃ち込みます。しかしながらそんなもの何でもないって顔で(電話で相手の顔、見えてないけど)避けてくるのがお相手でした。
( ´_ゝ`)「トソン、嘘嫌いじゃん。だから嘘が飛び交う時間に本当のこと言ってくる人間いたら惚れちゃうかなってさあ」
(゚、゚トソン「ばかじゃないですか」

75 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:54:16 ID:/FRKiMFE0

避けた上にストレートを撃ち込んでくる。素直さは善良で天邪鬼には敵わない力があるから、私は頭は彼に上がらない。いい加減屁理屈で相手を捩じ伏せるのはやめた方がいいですよって誰か彼に説いて差し上げて欲しい。私はだめですブーメランがデカ過ぎる。先程までのどうしようもない気持ちさえもどうでも良くする兄者さんに勝てないのはもう、惚れた弱みって時効が無いようなものを抱えているので諦めが肝心でしょう。

76 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:54:50 ID:/FRKiMFE0
( ´_ゝ`)「充電したかったんだよ~会えてないし。言いたいことは言いたい主義だから言おうって思って、折角だから喉に刺さって取れないようなことしたかったんだって。ごめんね」
(゚、゚トソン「変なことしなくてももう惚れてるんですよ」
( ´_ゝ`)「うーーーわ!なんでそんな事電話で言うわけ」

だからもう四月馬鹿を通り過ぎて四月馬鹿正直にモノを言うのが必勝法だと、舌触りが慣れない言葉を吐いてみました。残念そうな声が機械越しに伝わってくるので、少しだけすっきり、ざまあみろです。

おわり

77 : ◆XDgq1n/mJY [↓] :2024/04/20(土) 19:56:54 ID:/FRKiMFE0
【作品名】四月馬鹿たちのようです
【作品URL】>>66~>>76
【コメント】春の恋祭楽しみです

78 :名無しさん [↓] :2024/04/20(土) 20:11:40 ID:0asTP6Xk0大変に良かったありがとう

79 :名無しさん [↓] :2024/04/20(土) 21:02:26 ID:5qgyN.0I0乙乙乙