(´・_ゝ・`)ヒミツのようです

81 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:42:04 ID:n/BUvMv60(´・_ゝ・`)ヒミツのようです

注意:この作品には、読者の気分を害する表現が散りばめられ、場面がよく変わります。

【2千万】
ミセ*゚ー<)リ
 アタシはミセリ!ムダに大きい屋敷で暮らす愛人の子! 仇名は2千万!由来は愛人である母親が、アタシを5歳でこの屋敷に売った値段かな! このムダに大きい屋敷には、地下室と座敷牢がある。愛人に2千万円をポンッと払える富豪になれるほどの、ヒミツが地下に隠されている。
 アタシの役目は、そのヒミツのゴキゲン取りだ。
从*'ー'从ノ「ミっちゃんまたあしたぁ~」
ミセ*゚ー゚)リノ「サンちゃんバイバーイ!」
 楽しい楽しいファイナル市立小学校から帰ると、手洗いうがいより先に本妻さんに見つからないように地下室を目指す。
ミセ*゚ー゚)リ(こっそり移動するとか、スパイやホラーゲームみたいだな)
('、`#川「ちょっとゴミセリ!」  _,ミセ;゚ー゚)リ(うげっ、ここまでお酒のニオイがする!!)
 昼間から酒の匂いがプンプンする美熟女さんは、このバカデカ屋敷の本妻さんである。 つまり不倫したアホ当主とバカ愛人のクソ子供と暮らさなければいけなくなった、本っ当にカワイソーな女性なのだ。なお本妻さんも昔から浮気しているのを、探偵が調べ上げている。
('、`#川「ちょっと聞こえてるのゴミ!」
 本妻さんには悪いけど、アタシはゴミセリという名前じゃないので足を止めてやらない。 足を止めたら最後、冷たい土間に正座させられ最低1時間は罵詈雑言をぶつけられるのだ。幸い物をぶつけられたり殴られたりしない、罵るだけの本妻さんのストレス解消だ。
ミセ*゚ー゚)リ(いやぁ毎日毎日同じコトを言って、よくあきないよ)
 もはや暗記している説教で最低1時間も無駄にしたくない、時は金なり!いざ地下室へ!!
('、`#川「アンタみたいな不倫の子、ロクな大人にならないわよ!!」
ミセ*゚ー゚)リ(クズとカスのハイブリットでーす! ごめんなさーい!)

82 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:42:42 ID:n/BUvMv60【2千万とヒミツと彼女と】
 本妻さんが追ってこないから、地下室は好きだ。
ミセ*>ワ<)リ「たっだいまー!!」
( ・-・ )っ[お帰りなさい]
(´・_ゝ・`)「おかえりミセリ」
 シーンさんとヒミツがいるから、地下の座敷牢は大好きだ。
( ・-・ )っ[手洗いとうがいはした?] ペラッ
 スケッチブックで話す若いお姉さんはシーンさん、当主と年の離れた異母妹さんだ。声が出ないけれど、地下室と母屋を行き来してアタシとヒミツの世話をしてくれる。
ミセ*゚ー゚)リ「いまするー!」
(´・_ゝ・`)「きょうはそとで、どんなことがあったんだい?」
 手洗いうがいをすませると、牢屋から高校生くらいのお兄さんが話しかける。首と手足が鎖に拘束されて、壁に繋がれている。 眠くなるような穏やかな声で話すこのお兄さんこそ、この屋敷が栄えているヒミツだ。
ミセ*゚ー゚)リ「んっとねー、今日は授業中に校庭にすっごい大きい犬が来たの! フワフワのおっきい犬!」
(´・_ゝ・`)「どのくらいおおきいんだい?」
 ヒミツは不老不死だ。今アタシたちの前にいるのと変わらない姿で、何百年も生きているそうだ。
ミセ*゚ー゚)リ「子牛くらい! 白くてフワフワの犬が校庭を走ってて、ヨボヨボのおじいちゃんがやってきたの!」
(´・_ゝ・`)「フワフワのおおきいいぬ、みてみたいなぁ」
 ヒミツの肉体は、富をもたらす宝箱だ。 だからヒミツは今この屋敷の地下座敷牢に繋がれて、アタシとシーンさんが相手をしてあげている。 ヒミツの前でご飯やおやつを食べたり、ヒミツの前で本を読んであげたり、ヒミツと一緒にテレビを見たり、ヒミツの牢屋の前で寝たりする。
ミセ*゚ー゚)リ「今度は犬の図鑑を借りてくるね! 大きくてカラー写真いっぱいある図鑑!」

83 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:43:07 ID:n/BUvMv60
 シーンさんがおやつを持ってきてくれる、今日はホットケーキと牛乳だ。 バター、メイプルシロップ、果物ジャムや、チョコソースなどが用意されている。
ミセ*゚ー゚)リ人「いただきます!」
( ・-・ )人
(´・_ゝ・`)「どんなあじがするんだい?」
ミセ*゚ー゚)リ「あったかくて、バターのしょっぱさとメイプルシロップの甘いのは相性バツグンだね!」
( ・-・ )っG□
 シーンさんはホットケーキはバターだけつけて、紅茶にはジャムを入れている。
(´・_ゝ・`)「とけたバターのいいにおいがするね」
 ヒミツは食べなくても平気らしいけど、牢屋で鎖に繋がれている人の前で美味しいモノを食べるのは、とても気まずい。
ミセ;゚ー゚)リ(これは慣れないな)
 日曜日に起こる悪趣味なショーには、もっと慣れない。日曜日なんて来なければいいのに。
( ・-・ )っ[あなたにも、食べさせたかった]
 シーンさんも、多分アタシと同じ気持ちだろう。
(´・_ゝ・`)「シーンのつくるものは、みんなおいしそうでいいにおいがするから、だいすきだよ」
(* ・-・ )っ[ありがとう]
 上の母屋では淡々としたシーンさんだけど、ヒミツの前では顔を赤くしてなかなかに可愛い。 ヒミツも、アタシよりシーンさんのほうをよく見ている。
ミセ*^ー^)リ(はぁ~、いいよねぇ~)

84 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:43:31 ID:n/BUvMv60【2千万と日曜日】
 日曜日は嫌いだ、ヒミツが切り売りされるからだ。文字通り、毎週日曜日にヒミツが切り刻まれて肉を取られる。 ヒミツのお肉はとても美味しいから、悪いお金持ちにとても高く高く売れる。本妻さんがこっそりとヒミツの生肉を酒の肴にしているのを見た時は、酒瓶で頭を殴ってやろうかと思った。 ヒミツはどんなに刺されても死ななくて、どんなにお肉を削がれてもすぐに再生するから、好きなだけ取りたい放題だ。
(lli ・-・ )
ミセ;゚ー゚)リ
 世話係のアタシとシーンさんは、見ているしかできない。この屋敷の人間の義務だからと、悪趣味な肉削ぎショーを見せられている。 アタシはスプラッタにはすぐに慣れたけど、シーンさんは青い顔でヒミツをじっと見ている。 ヒミツはすぐ再生する上に痛みを感じにくい体らしいけど、シーンさんとアタシを辛そうな顔で見ている。
(´”_ゝ”`)「ふたりに、みせないで」
 ヒミツの願いは聞き入れられなかったどころか、舌を切られ、ノドを刺された。
ミセ;゚ー゚)リっ(lli。・-・ )
 アタシには涙を堪えるシーンさんの手を、握ってやるしかできない。
 最悪なショーが終わったら、シーンさんは泣きながらヒミツの手当てをする
(lli ;-; )
(´”_ゝ”`)「らいりょうふ、らいりょうふ、だよ」
 ごめんなさい、シーンさんの口はソレばっかり動いている。 ヒミツはシーンさんを抱きしめて慰めたいのに、腕に繋がれた鎖が邪魔をする。
ミセ;- -)リ
 日曜の夜は寝込んじゃうシーンさんのために布団や水を用意したり、おじやとか簡単なごはんを作るしかできない。 アタシが慣れないのは、すごく辛そうなシーンさんとヒミツだ。 2人になにもしてやれないだけじゃない、ヒミツの奪った血肉をでできたお金で育った自分が嫌でしょうがない。
 ヒミツの肉を食った連中、みーんな惨たらしくくたばってくれないかなぁ!!

85 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:45:41 ID:n/BUvMv60【2千万と先代当主】
 気分転換に話題を変えよう、シーンさんは当主の腹違いで年の離れた妹さんだ。
ミセ*゚ー゚)リ「ハラチガイってなに?」
(´・_ゝ・`)「おかあさんが、べつべつなんだよ」
 当主の父であるマララーはとんでもなくお盛んな先代で、外で色々な女の人たちとイチャイチャしまくったそうだ。 当主とシーンさん以外にも、ハラチガイさんはいっぱいいるとのこと。
ミセ*゚ー゚)リ「ひっでぇ頭チ◯ポ」
( ・-・ )づ
 悪い言葉を使うと、シーンさんにピシャリと平手で膝を叩かれる。
(´・_ゝ・`)「たしかにマララーは、おちんちんみたいなあたまをしてたね」
ミセ*゚∀゚)リ「モノホンのチ◯ポ頭じゃん! 見た目も中身も頭チ◯ポだ!!」
(# ・-・ )
 お腹抱えて大笑いしたら今度はゲンコツされた、おのれマララー。
  Ωミセ;゚ー゚)リ チェッ
 そんな頭チ◯p……先代を反面教師にして、当主は1人の女性しか愛さないそうだ。 いやいや浮気しているだろうがな至極まっとうなツッコミは置いておく。
ミセ*゚ー゚)リ(カワイソーな本妻さん)
(* ・∀(、゚*トソン ブチュッ             (::、::#川
 当主が本当に愛人を愛しているとして、本妻さんは愛されてないことになってしまう。
ミセ*゚ー゚)リ「あの女でもない本妻でもない、全く別の女を愛してたら面白いのになぁ。      アタシを嫌ってる連中が、ひっどい不幸になりますように」
(´・_ゝ・`)「ひとのふこうをのぞむのは、よくないよ」
 おっとドス黒い欲望が漏れて、ヒミツに聞かれてしまった。
ミセ*゚3゚)リ「だってアイツら嫌いだもん」
ミセ#゚ー゚)リ「特にアル中女が連れてくる長岡って男ね、シーンさんをヤラシー目で見てるんだよ!

86 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:46:42 ID:n/BUvMv60
(´・_ゝ・`)「へぇ」
 ヒミツの表情が消えたのを気付かず、アタシは愚痴を吐く。
ミセ#゚ー゚)リ「アタシがやめてって言っても、シーンちゃんおっぱいデカイねってヘラヘラしてんだよ!      そんでアタシの事はツルペタ2千万って呼ぶの!」
ミセ#゚皿゚)リ「ムキィーッ! 思い出したらもっとムカついてきたぁー!! アイツら脳天に隕石直撃しろ!!」
(´・_ゝ・`)「…………それ、はじめてきいたよ」
(´・_ゝ・`)「シーンはいわないから、どんないやなことがあったか、おしえてほしいな」
 声は静かなままだけど、ヒミツが怒ってるような気がした。
ミセ;゚ー゚)リ(アタシ、なんかやっばいコトしたかもしんない)

87 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:47:18 ID:n/BUvMv60【2千万と産みの両親】
 第二土曜日は学校が早く終わるけど、屋敷に来る愛人の相手をしなければいけない苦行がある。 アタシは、血の繋がった自分の両親が大嫌いである。
(;、;トソン「ごめんなさい……あなたに母親らしい事をしてあげられなくて、本当にごめんなさい」
( ・∀・)「大丈夫だよトソン、ミセリは僕が責任持って面倒を見るよ」
(;、;トソン「ごめんなさいモララー、あなたに甘えてばかりで……私ったら本当にダメな人……」
( ・∀・)「そう気に病むなよ、君だけが悪いんじゃないんだから」
ミセ*゚ー゚)リ(そーだね、浮気するアンタも悪いよ)
 娘の様子見を名目に月2回会いに来る愛人(遺伝子上の母)は、会うたびにしおらしく啜り泣いて、自分の不甲斐なさを泣きながら謝っている。それを屋敷の当主(つまり遺伝子上の父)が甘~く薄っぺらい言葉で慰めて、泣くだけの愛人を落ち着かせるのだ。
ミセ*゚ー゚)リ(毎っ回毎回、よく飽きずに同じやりとりするよね)
 高級ロングソファーに横並びに座って愛人の肩を力強く抱く当主と、当主にしなだれかかる愛人の目の前で、不平不満を一切顔に出さず可愛い娘を演じている。 所詮は扶養される子供だから、親にとってのいい子でいなければいけない。
ミセ*゚ー゚)リ(世間一般じゃアタシの方がクソ娘なんだろうなー)
 衣食住不自由なく暮らしている分際で、内心親をボロクソ言う性根の腐りっぷりは、誰譲りだろう。
(;、;トソン「同じ家で暮らせなくても、私はあなたの幸せを願っていますよ」
( ・∀・)「ボクも、トソンの幸せを願っているよ」
ミセ*゚ー゚)リ(あー、早く地下室行きたい)
(;ー;トソン「愛していますよ、私の可愛いミセリ」
ミセ*゚ー゚)リ(今日の夕ご飯はなにかなー)
ミセ*^ー^)リ「アタシも、お母さんとお父さん大好きだよ」
 うぅっ! なんて気持ち悪いぶりっ子を極めた笑顔と声!

88 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:47:46 ID:n/BUvMv60
(;、;トソン「ミセリっ!」
( ;∀;)「ああトソン! ミセリはこんないい子に育ったんだ! 僕達の事情を分かってくれてるさ!」
 愛人が感極まって泣き崩れるのも、いつも見ているお約束の光景だ。 パッ見は頭良さそうなヒトなのに、奥さんいる男性と浮気して子供を産んだり、作り笑いに騙されるものなのかな? もしかしてアタシの腐った性根と演技を見抜いていて、わざと愚かな女を演じているのだろうか。
     (゚、゚トソン「ふぅ、自分は賢いと思い込んでいるバカ娘を騙すのは快感です」
      (゚、゚*トソン「ちょっと泣くだけで大金を貢いでくれるボンボン最高ですね」
 とか実は自宅でタバコ吸いながら、アタシ含め周りを心底バカにしているかもしれない。
ミセ*゚ー゚)リ(そうだったら、少しは好きになれそうなんだけどなー)
 この2人の脳内では自分たちは家などのしがらみで引き裂かれた悲劇のカップルで、アタシは悲劇の副産物であり悲劇のバカップルの絆ってヤツなのだ。
ミセ*゚ー゚)リ「!」
('、`#|壁
ミセ;゚ー゚)リ(うへぇ、本妻さんがまだいるのにイチャつくなよ)
 見てよ、この隠れてるつもりで隠れてない本妻さんの憎しみに満ちた表情! スキがあれば全員2tトラックで轢き潰してやるってオーラがすごいってなんの!
( ・∀・)「どうしても行ってしまうのかい?」
(゚、゚トソン「まだ、2週間後に会えますから……」
(;・∀・)「待ってくれ!
 お淑やかに帰ろうとする愛人の(よーく手入れされた白魚のような)手を、当主は未練がましく掴む。
(゚、゚*トソン「あっ」
 引き止められた愛人も、満更でもない様子だ。
( ・∀・)「やっぱり君がいないこの家は、とても息苦しいよ」
ミセ*゚ー゚)リ(アタシはアンタたちのせいで息苦しいけどね)

89 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:48:42 ID:n/BUvMv60
(゚、゚;トソン「ダ、ダメです! あなたには奥さんがっ」
('、`#川 ))
 これ見よがしに当主と愛人がイチャつくから本妻さんは怒って贔屓のバーへ行きました、あーあ。
( ・∀・)「ペニサスのやつは年下のバーデンと交際しているからね、アイツを追い出せる日も遠くないさ」
(゚、゚トソン「奥さんも、寂しい人なんですよ……」
ミセ*゚ー゚)リ(コレ、どっちの浮気が先だろーなー)
 偶然聞いた探偵の調査結果では、長岡って年下バーデンは他に交際している巨乳女性が複数いるとのこと。 しかも元カノは赤ちゃんできてるけど、長岡は逃げたみたい。本当だとしたら、すっげぇ優秀な探偵だな!! しかし、うーんこのドロドロ具合、まいっちゃうね!!

90 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:49:11 ID:n/BUvMv60【2千万・地下に逃げ帰る】
ミセ*’A`)リ「た、ただいまぁ~」
( ・-・ )っ[お帰りなさい]
(´・_ゝ・`)「おかえりミセリ……ひどくつらそうだね」
ミセ*’A`)リ「ずーっとニコニコするのつーかーれーたー」
( ・-・ )っ[お疲れ様] ペラッ
 シーンさんが入れてくれたホットココアを飲んで、少し元気が出る。
ミセ*゚ー゚)リ「シーンさん、ありがとう」
 アイツら+本妻さんに対して感謝の気持ちは1mmも湧かないが、シーンさんは別だ。
ミセ*゚ー゚)リ(あーあ、シーンさんがお母さんだったら、よかったのに)
 なんとなく、この願望は口に出していけない気がする。 もしかしたらシーンさんは、ヒミツと自分の間に入ってきたアタシを本当は大っ嫌いかもしれないから。
ミセ*゚ー゚)リ(そうだったら、立ち直れないなー)
 アタシは早く大人になりたい。
ミセ*゚ー゚)リ「大人になって、シーンさんとヒミツを連れて、この家を出てってやる」
 三人で暮らすためのお金を、もらったおこづかいからムダ遣いしないようにコツコツと溜めている。
ミセ*゚ー゚)リ「大きすぎなくて地下室のない家がいいなぁ」
 大人になったアタシは働いてお金を稼いで、シーンさんがご飯を作って待ってくれて、ヒミツは庭で好きなだけ日向ぼっこできる、そんな家が欲しい。
 だけど大人になりたくない、そんなムジュンした気持ちもある。
 シーンさんもヒミツもアタシに優しくするのは、アタシがバイトすらできない無力な子供だからだ。 しかも母親に売られ、この家の本妻には毛嫌いされている不倫の子だ。
ミセ*゚ー゚)リ「あーあ、ずっと子供のままで、シーンさんとヒミツに可愛がられたい」
 でも不老不死になると、ヒミツみたいにしょっちゅう体を切り刻まれて食べられてしまう。
ミセ*゚ー゚)リ「嫌いな連中の血肉になるのは絶対ヤダ」

91 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:49:36 ID:n/BUvMv60【2千万、旅行に行く】
ミセ#^ー^)リ     (・∀・*(゚、゚*トソン っ【◎】
 今アタシはバカップルの撮影係をしている。親子水入らずの旅行だとさ、くたばれゴールデンウィーク!! アタシは子供用スマホとデジカメで撮るものを分けている。
( ・∀・)「どうしてわざわざデジカメを使うんだい?」
ミセ*゚ー゚)リ「だってトクベツな思い出でしょ?」
ミセ#゚ー゚)リ(アンタたち不倫バカップルをスマホに残したくねーからだよ!)
ミセ*゚ワ゚)リ「キレイな海! 宝石みたい!」
 シーンさんとヒミツに見せたいモノだけ、アタシのスマホで撮影する。 最初当主に旅行に誘われた時は、仮病かガチで病気になろうか悩んだ。しかしカゼをひいてシーンさんに迷惑をかけたくないし、ヒミツはアタシが治るまでものすごーく心配する。
( ・-・ )っ[ペニサスが男を連れ込むと言っていたから、行った方がいい]
ミセ;゚ー゚)リ「あのバーデン、シーンさんをヤラシー目で見てるよ? シーンさんも行こうよ!」
( ・-・ )っ[私は彼が心配だから行けない]
( ・-・ )っ[他にやる事がある] ペラッ
 シーンさんの説得でアタシは、家族水入らずGW旅行に参加することになったのだ。 そして予想通り、当主と愛人は人目を気にせずイチャイチャしている。こいつらサメに食われてくれないかな。

(・∀・*(゚、゚*トソン     ミセ*’A`)リ
 おみやげ屋さんで、お互いにコレが似合うだの、アレが似合うだの、不倫でなければ熱愛夫婦のようだ。 アタシは誘拐されたり、迷子にならないように、嫌だけど不倫バカップルからはぐれないようにしている。
ミセ*’A`)リ(いいなー、大人は好きにお金を使えて)
 夜空の夫婦茶碗と書かれた商品が目に入る。まるでヒミツとシーンさんみたいな、キレイな黒だ。
ミセ*゚ー゚)リ(あの2人に使って欲しいな)
ミセ;゚ぺ)リ(げ!高っ!! シーンさんがくれたお金がほとんどなくなるじゃん!)
 だけどあの2人へのおみやげを、アイツらの金で買われたくない。 アタシの自己満足だけど、アタシはあの2人が大好きだから。

92 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:50:01 ID:n/BUvMv60
ミセ*^ー^)リ つ□
 財布は薄くなったけど、いい買い物をした。心の底からゴキゲンなアタシに、当主と愛人もなぜか得意げだ。
ミセ*^ワ^)リ「連れてってくれて、ありがとう!」
 不倫でアタシを作ったことは許すつもりはないが、感謝は伝えておく。

 シーンさんとヒミツのところへ帰れる旅行最終日、当主がやたら慌てている。
(;・∀・)「僕は先に帰るから、トソンとミセリは予定通りの便で帰って!」
(゚0゚;トソン「ちょ、ちょっとモララー! 私を置いて行かなでください!!」
 とりあえずチェックアウトして予定通りの便に乗っている間、アタシはひたすらさめざめと泣く愛人をずっと慰めていた。
(;、;トソン「モララー……モララーっ」
ミセ;゚ー゚)リ「アタシたちのためにパパがんばってるんだよ、急なお仕事に入ってもしょうじゃないよ」
 どっかのドラマで見たような薄っぺらいセリフを、ひたすら繰り返していた気がする。 帰ったらバカデカ屋敷が全焼してるとか思わないじゃん!アタシも先に帰りたかったよ!
ミセ;゚0゚)リ「シ、シーンさんは? シーンさんはどうしたの!!?」
 火事で地下は危ないとテレビで知った。地下から出れないヒミツと、ヒミツが大好きなシーンさんに何かあったら、アタシはこれから何を楽しみに生きればいいの!? お金なんていらないから、2人を返してよ!!
(lli ∀)「シーンは無事だよ……ペニサス達に追い出されてビジネスホテルに泊まっていたそうだ」
ミセ;゚0゚)リ
ミセ;゚ー゚)リ
ミセ ∀ )リ
 憔悴した当主の言葉に、アタシは、こんな都合のいいことが起きていいのだろかと思った。

93 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:50:23 ID:n/BUvMv60【2千万と後始末】
 出火の原因は、バーデンの寝タバコらしい。あとバーデンはゲロが詰まってたそうだ、お酒って恐いね!! バーデンと本妻さんは邪魔なシーンさんを追い出して、飲めや歌えの大騒ぎをした末に酔い潰れて寝た上に、火の不始末で自分ごとお屋敷を燃やしちゃったのだ。 つまり当主は(不倫)旅行中に妻の浮気で家を焼かれた、カワイソーな男になったのだ。 色んな保険はおりるけど、もうとくにかく色々と面倒臭そうな話し合いや、手続きがあるそうだ。
 地下については、誰も不自然なほど触れようとしない。
 憔悴当主が警察のすごーく偉い人に電話をかけて、長時間お話したからだろう。
 シーンさんは口止め料として、マンションとか株とか大金をもらった。本妻さんに追い出されたけれど、屋敷を不在にして火事を起こした責任だとさ。
ミセ;゚ー゚)リ(一緒に暮らすって叫んでシーンさんに抱きつきたいけど、シーンさんはどうなんだ?)
( ・-・ )っ[ミセリちゃんは私が面倒を見ます]
(゚、゚;トソン「お願いします、私は今の弱ったモララーから離れられませんから」
(lli ∀)「あ、ありがとうシーン……助かるよ……」
ミセ;゚ー゚)リ(マジで? 明日隕石がアタシに直撃しないよね!?)
 シーンさんは、アタシの手を握ってくれた。シーンさんから微かに血の匂いがしたけど、アタシにはどうでもいい。

94 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:50:49 ID:n/BUvMv60【2千m……ミセリとシーンと】
 シーンさんはマンションも株も高く売って、アタシを連れて遠い所に引っ越した。まずは地下室よりせまいけど、なかなかきれいなアパートだ。もう少し落ちつたら、もっと遠くへ移動するそうだ。 転校は寂しいけど、シーンさんが一緒なら地獄だって平気だ。シーンさんだけじゃない、ヒミツだって一緒にいる。
ミセ*゚ー゚)リ「ヒミツ、ちっちゃくなったねー」
 シーンさんが見せてくれた血の匂いの元は、脈打つヒミツの心臓だ。 シーンさんがヒミツの体からえぐり出した心臓は、少しずつだけど肉や血管が再生している。
( ・-・ )[私と彼でやった]
ミセ*^ー^)リ「知ってる」
 すっごく簡単な話。シーンさんはヒミツの血と肉を、調理して本妻さんとバーデンに食べさせた。 中毒性の高いヒミツの血肉とアルコール度数の高い酒を、たくさん飲ませて、たくさん食べさせるように仕向けて、わざと火をつけたままにして”追い出されてやった”たらしい。 本当はもっと何かをしたらしいけど、詳しい話は刺激が強いと教えてもらえなかった。 シーンさん以外の異母兄弟や、バーデンとの子供ができたお姉さんたちも、協力してくれた。株やマンションを売ったお金は、お礼として協力者に配られた。 色々深入りできない汚い事情があって、【不倫の末の火事で死亡事故】で片付けられたそうだ。不幸中の幸いにも、本妻さんとバーデン以外は死んでいない。
( ・-・ )  つ◯と
 どんな姿でも愛している、そうシーンさんの唇が動いた気がした。
 心臓をえぐり取られたヒミツの本体はまだあるらしいけど、どうなるか分からない。 心臓から再生しても、アタシたちの知っているヒミツのままか分からない。 だけど
(* - -)  つ◯と
 ヒミツの心臓に愛おしそうに口付けするシーンさんは、旅行で見た海より美しかった。

95 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:51:11 ID:n/BUvMv60
【声が出ない女の回想】 初めてこの屋敷に来たあの子は、あまりにも哀れな姿だった。 伸びっぱなしのベタついた長い髪、何日も変えていない汚れた服、5歳にしては小さな子供だった。 感情を押し殺し虚ろな瞳は、まるで肉を削がれるだけの彼のようだった。
「すごく可哀想な子だろ? 助けておくれよ」
 異母兄モララーは言いたい事だけ言い、泣いているだけの女の肩を抱いて外に出た。闇金にその女の借金を返済しに行くそうだ。 小柄な子供は兄が妻以外の女性に産ませた子供、つまり私と同じ妾腹の子だ。 私の母は私を産んだ翌月に亡くなったので、モララーの母親が哀れんで娘のように育ててくれた。 この子の母……先ほどの泣いている借金女は、まだしぶとく生きている。
 私は泣きも暴れもしない子供の小さな手を引いて、地下室に降りた。 義姉のペニサスに見つかると、罵詈雑言を喚きながら最低1時間暴れるので厄介だ。夫の義妹である私をひどく嫌っているペニサスからすれば、夫と他の女との子供などおぞましい存在に違いない。
「そのこは だれだい?」
 座敷牢に繋がれた、虚ろな真っ黒い瞳の彼が訊いてくる。私は自分を指差し、「同じ」のジェスチャーをする。
「ほんさいさん、おこるね」
 困ったと呟く彼に、私も頷く。 そろそろお昼が近い、黙ったままのこの子になにか食べさせなければいけない。
[わたしはシーン、あなたのおなまえは?]
 スケッチブックに大きく字を書き、子供の名前を問うてみる。
「アタシ、じ わからない」
 子供の声は、他人への不信感に満ちている。困っていると、彼が助け舟を出してくれた。
「シーンおねえさんは、きみのおなまえのしりたいんだ」
「……なんで、しゃべらないの?」
「シーンおねえさんは、こえがでないんだ。 ぼくも、ここからうごけない」
「………………ミセリ」
 スケッチブックに「ミセリちゃんは、カレーはすき?」と書いて、彼が読み上げてくれる。ミセリは質問にたいして、蚊の鳴くような声でわからないと呟いて下を向いた。 彼にミセリの相手を任せ、昨日作ったカレーを、子供用の味付けにする。中辛カレーにハチミツや野菜ジュースを入れて、弱火で煮る。

96 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:51:48 ID:n/BUvMv60
「シーンおねえさんのつくるごはんは、おいしそうなみためで、いいにおいがするんだよ」
 彼はミセリに根気よく話しかけているが、ミセリは無言で部屋の隅で膝を抱いて蹲っている。 食事の準備が整ったので、ミセリを招く。彼が繋がれている牢屋の前に食卓が置かれていて、ミセリは変な顔をした。
「…………おにいさんのごはん、ない」
「ぼくはね、ごはんがいらないんだ。 しあわせそうなシーンおねえさんとミセリをみるのが、ぼくのしょくじなんだよ」
「…………へんなの」
 ミセリはそう呟いて、いただきますと小さい声で食前の挨拶をした。スプーンを握り、甘く味付け直したカレーを口に入れた。
「…………これ、おいしい」
 幸いにもカレーは口に合ったようで、ミセリは夢中で食べてくれた。急いで食べるから、喉を詰まらせないかと心配した。 デザートに昨日買ったオレンジチョコケーキをあげたら、目を丸くして「これもつくったの?」と訊く姿が可愛らしかった。
 腹が満ちたミセリは、彼としりとりで遊ぶ余裕ができたようだ。 急いで上の母屋に行って、幼い子供のための下着や服を探す。育ての母が記念として、私の古着が保存されていて良かった。「シーン5歳・春物」と丁寧な字で書かれたダンボールを抱え、地下に戻った。
[ふるいのでごめんね、あした あたらしいふくを かいにいこうね]
 彼が読み上げるとミセリは頷き、大人しく着替えた。ミセリは年齢より少し小柄なだけで、極端にやせ細っておらず、傷もない体で安堵した。
「……くさくない」
 なるべく綺麗な状態で残っていたオレンジ色のワンピースを着たミセリが、微笑んだような気がした。
 しばらくして眠くなったはずなのに、ミセリは檻に寄りかかって眠ろうとしない。彼に「おひるねしようよ」と言われても、いやいやと頭を振り近付いた私の服の裾を掴んだ。
「ママみたいに、ねてるうちに、どっかいかないよね……」
 そんなミセリを見て、モララーの母が私の世話をした気持ちがわかるような気がしてきた。 私はただただミセリを抱きしめるしかできなかった。

97 : ◆mzr18G4QOc [↓] :2024/04/21(日) 00:52:24 ID:n/BUvMv60
【小娘の独白】 とても静かなひいおばあ様の隣には、穏やかに微笑む青年がいます。 ミセリおばあ様は、その青年はひいおばあ様の何より愛しい人だと教えてくれました。 ミセリおばあ様が子供の頃からひいおばあ様と青年は恋仲だそうですが、私にはよく分かりません。
ノリ, ^ー^)li「あの男の人は、ひいおじい様の血縁ですか?」
 そう聞いてもミセリおばあ様はヒミツと笑うだけです。 私はその青年が食事をするのを、見た事がありません。 青年が私を庇って犬に噛まれた時、噛まれた傷はどこにもありません。
 ひいおばあ様のお葬式で再会した青年は、あの時から全く姿が変わっていません。
ノリ, ^ー^)li「あなたは誰?」
 私が聞いても、青年は微笑んで穏やかな声でこう言うだけでした。
(´・_ゝ・`)「秘密」



98 : ◆mzr18G4QOc [] :2024/04/21(日) 00:53:41 ID:n/BUvMv60
【作品名】(´・_ゝ・`)ヒミツのようです
【作品URL】>>81-97
【コメント】不倫などの迷惑な恋愛や、心臓に口付けするほどの恋愛を書いて楽しかったです

99 :名無しさん [↓] :2024/04/21(日) 01:28:52 ID:1SV9gucE0乙乙好き

100 :名無しさん [↓] :2024/04/21(日) 01:30:28 ID:nLXH03ds0乙乙面白かったぁ!好き!!

101 :名無しさん [↓] :2024/04/21(日) 08:09:05 ID:QZ3OBpck0このレス数でこの濃さ、凄すぎる面白かった

102 :名無しさん [↓] :2024/04/21(日) 09:46:18 ID:kxPGxSRc0乙です