2021年 第22回研究会
第22回研究会
【第22回研究会のご報告】
第22回研究会(オンライン)が5月22日(土)に無事終わりました。
基調講演2本、一般発表1本、院生発表2本、そしてディスカッションと盛りだくさんの内容で、延べ95名の方にご参加いただきました。
基調講演Ⅰでは、金沢大学の武居渡先生から「CODAの子どもたちの言語獲得」と題し、お話をしていただきました。
1歳半までは、手話環境のもとではCODAの子ども達もろう児と同様の言語獲得の過程を経る事や
その後の手話の発達には家庭の環境や親の言語方針が重要である事等のお話をお聞きしました。
また、「CODAはみんな手話ができる、通訳ができる」といったCODAへの誤解や親であるろう者やCODA自身へのメッセージもあり、興味深いお話ばかりでした。
基調講演Ⅱでは、東京大学の中津真美先生からは「コーダのアイデンティティ形成:聴覚障害の親への通訳を基にして」と題し、
子どものコーダが通訳活動をすることについて、またそのことがアイデンティティの形成にどのように影響しているのかについてお話をしていただきました。
親であるろう者が手話やろうであることにどのような態度をとるのかが、コーダが手話やろう者、親に対しての捉え方に影響を及ぼす事や
成人し、ろう者や手話への知識、周囲の理解に気が付くこと等を契機に親を受け入れ始めるコーダがいることなどを学びました。
一般発表では、大阪大学の中井好男先生より「コーダとしての経験から内省する手話の継承をめぐる課題」、
院生発表では、東京大学の院生である安藤明珠花さんより「文化的/病理的モデルから考えるコーダのバイリンガルズムとバイカルチュラリズム」と、いずれもコーダに関する発表がなされ、基調講演と併せ4つのコーダ研究に関するお話を聞くことができました。
また、京都大学の院生の佐藤美奈子さんからは、「4つの言語と4人の私-多言語社会ブータン王国の教育第一世代における複数の言語と複層的なアイデンティティー」と題し、ブータン王国の言語の状況やバイリンガリズムについて貴重な発表をお聞かせいただきました。
講演者、発表者の皆、ご参加いただいた皆様ありがとうございました。以下、参加者からの感想(抜粋)です。
**アンケートから抜粋**
・全然知識のなかったコーダについて、当事者である研究者の方々、手話通訳の方の話を伺い、視野が広くなりました。コーダはバイリンガルであり、バイカルチュラルでもあることがよくわかりました。聴覚障害を持つ親との生活によって、健聴者でありながら聞こえない世界の文化を共有しているコーダは究極なバイカルチュラルであると思いました。また、親が話せなくてもコーダは聴力があれば話すことを学んでおり、バイリンガルにおけるメディアや社会の影響、家庭の外で行われている言語習得についても考えさせられました。
・手話も言語であることを再認識したとともに、聴覚障害の親と健聴者との間に立つコーダの子どもの通訳などの苦労、社会の偏見の重圧、障害を持った親への複雑な思いなど、口話と手話のコードスイッチングという言語心理学的な問題にとどまらず、バリアフリーが叫ばれている日本社会であるならば、コーダの子どもへの言語的・心理的・経済的負担を社会全体がもっと深く考えるべきだと強く思いました。
・登壇された皆様、準備された皆様、お疲れ様でした。ろう者や聴覚障害者にとって身近な存在である「コーダ」について今まで知らなかった背景などを知ることができて、充実した学びとなりました。コーダの言語獲得の過程、アイデンティティを形成するまでの過程、コーダの文化的モデル、病理的モデルについて関心を持ちました。日本と中国のコーダ比較も面白かったですね
・コーダに関する研究をまとめて伺える機会は大変珍しく、とても勉強になりました。 「聴覚障害者」がろう者や難聴者、中失者と言う聴力レベルやアイデンティティによる多様性と、日本手話や対応手話、手話を使わないなど使用言語やコミュニケーション方法の多様性があるように、コーダも複雑だなと改めて思いました。 発表の中で、コーダは両親ろうかどうかや聴力レベル、手話を使うかどうかなどは問わないとありましたが、それでは一側難聴の親がいる場合もコーダなのだろうかと思いました。 また、最近は一部の書記日本語が得意なろう者が「日本語が苦手なろう両親の通訳的なことを小さい頃からしているのでろう者である自分もコーダだ」と主張しているのを見かけます。 コーダについて知れば知るほど、わからなくなる部分があるように思い、ますます興味が湧きました。 コーダによるコーダの基調講演2本、コーダ通訳による手話通訳、コーダの大学院生の発表と大変勉強になりました。
第1言語としてのバイリンガリズム研究会 (BiL1)–第22回研究会
「バイリンガルの世界ーコーダへの誘いー」
日時: 2021 年5月22日(土)(13:00~18:00)
場所: オンライン(Zoomにて)
プログラム
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総会 (BiL1会員のみ) 13:00~13:10 事務局: 花井理香、中村 ジェニス
会計:板垣静香、広報:平英司
司会 谷口ジョイ(静岡理工科大学)
開会挨拶 13:10~13:20 森(三品)聡美 (立教大学)
基調講演 I 13:20~14:20「CODAの子どもたちの言語獲得」 武居 渡 (金沢大学)
休憩 14:20~14:25
基調講演 II 14:25~15:25「コーダのアイデンティティ形成:聴覚障害の親への通訳を基にして」 中津真美 (東京大学)
休憩 15:25~15:30
一般発表 15:30 ~16:10
「コーダとしての経験から内省する手話の継承をめぐる課題 ―コーダである中国人留学生との対話的自己エスノグラフィー」 中井好男 (大阪大学)
休憩 16:10~ 16:15
院生発表I 16:15~16:50
「文化的/病理的モデルから考えるコーダのバイリンガリズムとバイカルチュラリズム」
安東明珠花 (東京大学)
院生発表II 16:50~17:25
「4 つの言語と 4 人のわたし ―多言語社会ブータン王国の教育第一 世代における複数の言語と複層的なアイデンティティ-」 佐藤 美奈子 (京都大学)
グループディスカッション 17:25~17:50
閉会挨拶 17:50~18:00 井狩幸男 (大阪市立大学名誉教授)
参加費: 会員は無料、非会員も今回限りは無料(定員100名先着順)
参加申込:こちらのリンクで5月16日(日)までにお申し込みください。
(登録後、ミーティング参加に関する情報の確認メールが届きます):
https://us06web.zoom.us/meeting/register/tZMlcOusrTMuG91TRp8Cld98leNe5ykgdFRm
当日は、基調講演と発表につきまして手話通訳が付きます。
The 22nd Research Roundtable for Bilingualism as a First Language (BiL1)
“The Bilingual World of CODAs”
Date: May 22nd 2021 (Sat) 13:00-18:00
Place: Online via Zoom
Program
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General Meeting 13:00〜13:10 Secretariats: HANAI, Rika, NAKAMURA, Janice
(for BiL1 members) Treasurer: ITAGAKI, Shizuka, PR:TAIRA, Eiji
M.C. TANIGUCHI, Joy (Shizuoka Institute of Science and Technology)
Opening Address 13:10-13:20 MISHINA-MORI, Satomi (Rikkyo University)
Plenary Lecture I 13:20-14:20
“Language Acquisition in CODA Children” TAKEI, Wataru (Kanazawa University)
Break 14:20-14:25
Plenary Lecture II 14:25-15:25
“CODA Identity Formation: Based on the Interpretation for Deaf Parents”NAKATSU, Mami (Tokyo University)
Break 15:25-15:30
General presentation 1 15:30-16:10
“Discovering Issues in Sign Language Acquisition as a Heritage Language for CODA: A Dialogical Autoethnography of Japanese CODA through In-depth Conversation with a Chinese CODA Studying in Japan” NAKAI, Yoshio (Osaka University)
Break 16:10-16:15
Post-graduate Presentation I 16:15-16:50
“Bilingualism and Biculturalism of CODA: From the Perspectives of Medical/Cultural Model”
ANDO, Asuka (Tokyo University)
Post-graduate Presentation II 16:50-17:25
“Four Languages and Four “I” - The First Educational Generation in a Multilingual Society, Bhutan”
SATO, Minako (Kyoto University)
Group discussion 17:25-17:50
Closing address 17:50-18:00 IKARI, Yukio (Osaka City University Professor Emeritus)
Fee: Free for members and non-members (for this time only). Limited to the first 100 registered participants.
Registration: Please register before May 16, 2021. Details will be sent via email upon registration.
Click on this link to register: https://us06web.zoom.us/meeting/register/tZMlcOusrTMuG91TRp8Cld98leNe5ykgdFRm
There will be Japanese Sign Language (JSL) interpretation for the plenary talk and presentations.
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発表者の募集は終了しました。
第1言語としてのバイリンガリズム研究会(BiL1)では、新型コロナウイルス感染の推移、現状を踏まえて慎重に検討を進めた結果、5月に第22回研究会を「オンライン研究会」として開催することを決定いたしました。つきましては、本研究会の設立趣旨に沿った研究発表を募集しますので、奮ってご応募ください。
研究会日程:2021年5月22日(土)13:00~17:30 (予定)
[研究発表募集]
発表の形式は、(1)一般発表 または (2)院生発表 の2種類です。一般発表は30分と質疑応答10分とし、院生発表は20分と質疑応答15分とします。いずれもオンラインでの口頭発表になります。発表方式の詳細は、募集締切り後採択した研究発表者にご案内します。
本研究会の目指すことの一つに、この分野の若手研究者育成を掲げていますので、院生発表の場合は、質疑応答の時間を多めに取っています。
使用言語は日本語を基本とします。なお、英語での発表を希望される方は、事務局までご相談ください。
研究発表の応募の締め切りは2021年3月20日(土)です。メールでのみ受け付けますので、subjectに必ず「BiL1発表申し込み(一般発表または院生発表)」と明記して下記情報をお送りください。4月中旬をめどに審査結果をメールでお知らせします。
[送付内容]
(1) 発表形式:一般発表か院生発表
(2) 発表内容:個人研究か共同研究
(3) 発表タイトル:
(4) 発表者(所属先): 共同研究の場合は代表者のみご記載ください
(5) 連絡先e-mailアドレス:
(6) 発表概要:500字以内で発表の意図や内容を具体的にお書きください。
発表に応募された方には、受付確認のメールをお送ります。数日中に受付確認メールが来ない場合は、事務局にお問い合わせください。
[送付先] BiL1事務局 : bil1kenkyukai[@]gmail.com([ ] を除いたものがアドレスです)