教育講演Ⅵ
脳卒中後のPusher現象に対する作業療法
〜現象をどう捉えて治療に臨むか〜
講 師:阿部 浩明
福島県立医科大学 保健科学部理学療法科
著しい姿勢定位障害であるpusher現象は、脳卒中後のリハビリテーションに関わる多くの作業療法士が経験する、理解しがたく、最も対応に難渋する現象の一つでしょう。この現象を呈する症例の多くは重度の片麻痺や感覚障害、半側空間無視などの高次脳機能障害を伴うことが多く、これらが関与して著しくバランス不良となり、麻痺側へ傾斜すると考えることもあるかもしれません。ですが、重度麻痺、感覚障害、半側空間無視を呈しても垂直位に身体軸を保持できる症例は存在まします。おそらく、脳卒中後のリハビリテーションを多く経験する作業療法士の方ならば、pusher現象を呈する症例を担当した際、一瞬で、pusher現象を伴わない症例とは“何かが違う”事に気がつきます。ところが、この現象がどのいった背景により出現しているのか、また、どう対処すべきなのかについて、はっきりと説明できる方は多くないかもしれません。実際、この現象は1985年に初めて報告され、そろそろ半世紀という時期に差し掛かりましたが、未だ、明確に解明されているとは言い難い現象です。それでも、この現象を科学的に解明しようとする多くの研究が報告され、これまで不明とされていたことが少しずつ明らかになってきています。
本講演では、この現象に関わる様々な研究を紹介し、この現象の定義、具体的な評価、疫学、出現のメカニズム、関連する病巣、具体的な治療、作業療法においてのアイディアなどについて、演者らの治療経験を踏まえ紹介させていただきます。
この講演によって、参加された作業療法士の皆様の実臨床の取り組みにおいて、より根拠のあるものに、より効果的なものに近づけることに資することができれば幸いです。
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略歴
<最終学歴>
平成24年3月 東北大学大学院医学系研究科卒(医学博士)
<経歴>
平成 9年4月 KKR宮城野病院 勤務
平成15年4月 東北文化学園大学医療福祉学部 勤務
平成17年4月 広南病院リハビリテーション科 勤務
令和 3年4月 福島県立医科大学保健科学部 勤務(現在に至る)
<受賞歴>
第43回日本理学療法学術大会 大会長賞
第33回東北脳血管障害研究会 医学奨励賞(中村隆賞)
第48回日本理学療法学術大会 最優秀賞
<社会的活動>
日本神経理学療法学会運営幹事、学術誌「理学療法学・Physical Therapy Research」編集委員、学術誌「神経理学療法学」編集委員長などを歴任。
教育講演Ⅵはオンデマンド配信です。