教育講演Ⅰ

作業療法における目標設定

この教育講演は目標設定に焦点を当てる.冒頭では目標設定以前の問題として,意思決定の種類について確認していく.医療現場は盲目的にパターナリズムが採用される傾向がある.対象者の主体性を重視する作業療法において,作業療法士はパターナリズムを含めた複数の意思決定の形を意図的に使い分ける必要がある.特に,不確実性の高いリハビリテーション領域において望ましい意思決定モデルであり,EBPの実践においても重要な「共有意思決定(Shared Decision-making:SDM)」については,その概念やプロセスについて詳しく紹介していく.意思決定の種類について確認したら,次は,作業療法目標に含まれるべき要素について確認していく.望ましい目標は,対象者の作業遂行文脈を含み,具体性が高く,変化が測定可能であり,達成までの期限がある.このような目標を設定するために不可欠な知識について解説していく.

講義の後半では,面接評価を通して目標を共創・共有するプロセスに焦点を当てる.面接ツールはどのように選択すれば良いのか,対象者が自分の大切な作業を想起できるよう,どのような工夫ができるか,どのような関心を基盤に面接を進めれば良いのか等について,様々な先行研究や演者の研究を紐解きつつも,単なる概念や理論の紹介に終始することなく,翌日からの臨床に移転可能な形で情報を届けることを心がけたい.他方,どんなに丁寧に面接評価を行い,望ましい目標を設定しても,対象者が目標指向的に日々の作業療法場面に参加することは難しいことも分かっている.そのため最後は,作業療法士と対象者が目標指向的に「協働し続ける」ための方略について紹介し講演を結びたい. 


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略歴

学校法人北杜学園仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科 副学科長 兼 作業療法学専攻 専攻長 教授

臨床作業療法NOVA(青海社)編集顧問

宮城刑務所機能向上アドバイザー 

教育講演は現地開催です(大ホール 1420~15:20)。