教育講演Ⅷ
MTDLPを取り入れた
作業療法参加型臨床実習
MTDLPを取り入れた
作業療法参加型臨床実習
講 師:小林 幸治
目白大学大学院リハビリテーション学研究科
目白大学保健医療学部作業療法学科
1)MTDLPを活用した作業療法参加型臨床実習
作業療法臨床実習は「診療参加型」で行うことになったが、学内演習の技能を試させればいいのではなく、実習指導者の指導・監督のもとで、作業療法士に必要な基本的態度・臨床技能・臨床思考過程を育成することを目的に、実際の作業療法に参加することで対象者の具体的なニーズの把握や生活行為向上支援を経験するものである。
そこで、経験ある作業療法士の頭の中を視覚化したツールであるMTDLPを活用することが最短ルートとなる。また、MTDLPはICF(国際生活機能分類)に基づいているが、医療専門職で日常生活におけるウェルネスの側面をみる職種は他になく(Iwama M.K)、私たちはこの専門性を高め、後進を育てていかなくてはならない。そのための作業療法参加型臨床実習=診療参加型臨床実習+MTDLPであり、つまりクリニカル・クラークシップ方式で実習指導を行ってMTDLPを活用することが望まれる。
2)MTDLPの学内教育の現状と課題
2015年、生活行為向上リハビリテーション実施加算が介護報酬に設けられたため、日本作業療法士協会は同年、全養成校の教員に対して教員研修を行い、それ以降、MTDLP概論1コマと演習2コマ以上を修得するカリキュラムになった。現在、その授業数に満たない養成校も依然としてある一方、4コマ以上講義を行っている養成校30%、5コマ以上演習を行っている養成校33%もあり、学校間の差が大きい現状が分かった。講義や演習で工夫されている例には、臨床家の講義、実習の事例や教員の事例を使用、地域住民や施設高齢者や当事者講師の協力で演習などの工夫がある。
協会では、教員研修(改訂版)やMTDLP教育法の研修会の実施、MTDLP推進協力校認定制度(現28校)と推進協力校連絡会(年4回開催)、「MTDLPを活用した臨床実習ガイド」発行等の推進を図っている。
3)臨床実習でのMTDLPの活用
急性期であってもMTDLPを用いたことで心身機能ばかりで対象者を捉えるのでなく、活動から参加までの包括的な視点で支援する指導や、後方医療機関に伝える際に学生を参加させた報告(小渕2020)がある。また、自己効力感の低い学生にMTDLPシートを用いた作業療法参加型臨床実習を行った結果、自己効力感の向上やフィードバック時間の短縮につながった報告(松本2019)がある。
4)学内教育から臨床実習に教育効果がつながった実習事例
本学では、1年次OT概論、2年次日常生活適応学、3年次地域作業療法学でMTDLPの講義を行い、ペーパー事例やビデオ事例での演習、地域住民への生活行為の聞き取り、当事者講師での演習などを行っている。4年次に回復期リハ病院で実習した学生1名は、実習指導者の指導のもと、施設入所方針の基本動作全介助だが自立心の高い事例に対し、聞き取りからベッド上での更衣の自立を合意目標として、PTや病棟看護師と連携し目標を達成し、チーム医療でのリハビリテーションを実感し、そのことをセミナーで報告した。これは学内教育から臨床実習に教育効果がつながった例であり、そこには実習指導者と教員の連携、学生から教員への毎週の報告があった。
5)今後のために実習から卒後に活用した方が良い理由
現在、回復期をはじめとしてリハビリテーションに医療統計を導入し、FIM利得など成果検証が求められているが、一方でADL至上主義への批判、FIMだけではなく生活の改善の評価が求められており、あらためてICFの重要性が言われている。介護保険領域でのLIFE(科学的介護情報システム)の導入等を見ても明らかである。学内教育と臨床実習をつなげて生活の専門家と言えるOTの教育を効果的にするために、MTDLPの活用は非常に重要だと考えられる。
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