ACASをカード化する
【2024年5月記述】
B-CASカードのセキュリティ不備を受けて、4K/8K対応機器のみならず地デジ/BSCSのみの受信機も、B-CASカードから機器内蔵のACASチップへと世代交代が進んでいます。
暗号化が強化され、簡単に取り外しができない(=機器間で使い回しが出来ない)仕様のため、普段使いの利便性が大きく下がる形となりましたが、正規ユーザーが不利益を被らないためにも(または業界の利権構造を死守する上でも)致し方ないところでしょう。 ※新CAS協議会は非営利の一般社団法人です。念のため
ACASモジュールは2018年の対応機器販売当初から、機器のメイン基板とは別体式になっている形で実装されていました。これはACASチップ側に有料放送などの契約情報が入るため、故障時の取り外しの可否や、ACASモジュールの供給自体がテレビなどの出荷に遅れていた事情など様々な理由があります。
2024年現在ではACASモジュール別体型ではなく、映像機器のメイン基板上にACASチップを搭載した機器も出回っています。
ACASの仕様を策定する「一般社団法人新CAS協議会」に記載されている技術情報によると、少なくとも8種類のACASモジュールが存在するようです。
以下、筆者が実際に取り外した上でカードリーダーでPCに読める形にしたものについて記述します。
目的 : ACASモジュールをPCに接続された一般的なPCカードリーダーで使えるようにする
【重要】レコーダーやテレビなどのB-CAS対応機器にそのまま入れ替えても動作しません。あくまでPCでの使用が前提となります。
ACASチップはB-CASカードの機能を内包していますが別途制御コマンドが必要なため、カード化したACASモジュールをB-CAS専用機器に入れても、まず動作しません。
(相互互換性について逆の使用方法となるが、なぜか概ね動いてしまうB-CASカード対応改造PIX-SMB400[ラジオライフ2020年6月号132P]など一部機器を除く)
PCでもB-CAS用のアプリ、ツール類などは、そのままではACAS用としては使用できません。
また、B-CASカードと異なりACASはクラックされていないため、有料放送を違法に視聴することは出来ません。
2024年5月時点では、あくまでも「PCからアクセスができ、ACASの機能をPCから使用するアプリの作成につながる」ということを実現するのみです。
有志により各種解析やツール開発などが徐々に進行している段階です。通常のB-CASカード代わりにカード化したACASを使用して地デジ/BSCSを視聴録画したい場合、ACAS用に変更したB25Decoder関連のファイルを用意する必要があります。5/上旬段階ではTVTestなどから直接使用するためには、デコーダー関連のソースファイルを一部修正してビルドし直すなどの手間が必要になります。また現状ではBS4K/8K番組をPCでリアルタイムに復号して視聴できるアプリは、一般向けに配布されていません。
ACASチップの規格はB-CASカードと同様「ISO 7816-2:1988」に準拠しているため、ICカード形状にすることでカードリーダーでそのままアクセスが可能です。
事前準備 必要な機材
・ACASチップ内蔵チューナー
ACASモジュールを取り外すのが目的(=モジュールを戻さない限り本来の用途に使えない)ため、極力安価なものを選定する。
2020年〜2021年前後のオススメ機器
ピクセラ PIX-SMB400
2020年頃は9800円前後で購入でき、2023年にはメーカー直販で5千円以下で投げ売り処分されたこともある定番の外付けチューナー。BS4Kだけでなく地デジ/BSCSにも対応し、本体の改造でB-CASカード化※などの改造実績もあるマニア定番の機器(ただし4Kは受信不可能になるので一長一短)
2024年現在では相場が高騰しており、3万円近い価格で取引されることもあるため、ACASモジュールの部品取り用としては高価。もし安価に入手することができるのであれば抑えておいて損はないと思われる。
ACASモジュールはピンヘッダが8本出ているタイプ。
ピクセラのACASモジュール「40B」
ACASモジュールはピンヘッダがソケットに挿さっているだけなので、簡単に取り外しが可能
2024年前半時点でのオススメ機器
シャープ 4S-C00AS1
4K専用チューナーの中では最安価格帯。2024年5月時点でのAmazon新品価格は5千円前後。
ACASモジュールは USBmicroBメスコネクタ で接続するタイプ。
シャープのACASモジュール「40A」
ACASモジュールはmicroBコネクタから抜くだけで簡単に外すことができる
ACASモジュールをPCのカードリーダーに接続するためのアダプタカード。機能的には信号線を引き出しているだけであるが、ピンヘッダ用のケーブルが付属するなどわかっている仕様。ACASモジュールにはんだ付けなど手をいれることなく着脱が可能になる。
ピクセラのピンヘッダタイプのモジュールを使用する場合ははんだ付けは一切不要。
シャープのmicroBコネクタのモジュールを使用する場合は、別途microBオス変換基板にピンヘッダ5本をはんだ付けしておけば、ACASモジュールを一切改造することなく手軽に着脱が可能となる。
・USB microB変換基板 + ピンヘッダ(シャープ機の場合あると便利)
これを用意しておけばACASモジュールの着脱が容易。なお、USBmicroBコネクタは規格上信号線を5本使用する。シャープ機が採用しているACASモジュールは接続にUSBコネクタを流用しているだけで、内部信号はUSBのシリアル転送形式と一切関係がない。ACASチップの端子数は8本だが使用している信号は5本のみ(他はNC)のため、このコネクタで問題なく使用できる。要はんだ付け5箇所(超簡単)
あると便利な機器
特に特徴のない汎用のPCカードリーダー。2024年現在は中古価格が500円前後から、高くても1500円程度で入手が可能。
純正の動作確認用ユーティリティを起動すると、正常動作時にはカード固有の「ATR(Answer To Reset)」が返され、その内容を表示することができるため、ACASモジュールのカード化で(ピンアサインを間違えていないかなど)正常動作の確認が容易というメリットが有る。
ATRはICカード各製品固有の簡易的な識別情報で、B-CASカードとACASチップでは返り値が異なる。用途不明のICカードでもATRから素性を確認することができる。
なおLinuxを普通に使える人や、コマンドプロンプトからCUIのアプリを実行する手間を厭わない人、GitHubでコードがあれば自分でなんとかできる方などはATRを表示できるツールが色々あるので、特にこのリーダーである必要はない。
発売時期から対応ドライバはWindows7時代のものしかないと思われがちだが、サンワサプライへのOEM製品として、現在でもWindows10でも動作するドライバなどが入手できる。(Windows11の場合の対処法)
余談ですが、シャープの法人向け超大型液晶タブレットPC PC-BM10 をバラすと、中に丸ごとこのリーダーが入っています。
動作確認ツールでATRを表示
ACASをカード化した場合、正常なら 3B F0 13 00 FF といった文字列、
B-CASカードの場合は 3B F0 12 00 FFといった文字列が表示されます。
ちなみに各値の意味はARIB STD-B61仕様書に詳細が記述されています。
(英語版ドキュメント「ARIB STD-B61 Version 1.4」 132P〜)
日本語版は有償ですが英語版は無償で閲覧が可能。
上蓋を開け本体前面を手前とした際に右下にあるのがACASモジュール
2. ネジを1本外して、ACASモジュールをそのまま取り外す
3.フラットケーブルを上から順番に上記の接続を行う。ICチップの正式なピン番号とは異なり、このケーブル限定で上から順に割り振った番号なので要注意!
見た目通りの接続でOK です(本来は5〜8は順番が反転します)
4. 収まりが良いので8本繋いで問題ありませんが、信号的には上記5本が繋がっていれば機能します(上から4,5,7本目はNC)
1.ネジを外し上蓋を開け、本体前面を手前とした際に右下あるのがACASモジュール基板。
2.右にスライドさせると簡単に取り外しができる。
3.USBmicroB変換基板にピンヘッダ5本をはんだ付けしておく。
本カスタムICカードと付属ケーブルの場合、ピンの配線は左から4,5,7を接続しないで左詰で5本差す。これで完成
【重要】カスタムICカードの仕様、付属するケーブルなどは変更される可能性があるので、テスターで接続を確認しながら配線を行うことを推奨します。くれぐれも自己責任でどうぞ