「里山」生態系は、人が自分たちの生活のために手を入れながら維持してきた環境です。その中には実に多種多様な生物が生息しており、相互に複雑な関係を保って構成しています。この生物多様性が私たち にもたらす恩恵を生態系サービスと呼びます。中でも昆虫は、目立たなくとも生態系の中で重要な位置を占めています。花にくる昆虫による農作物への送粉はその一例で、これは多くの野生植物の繁殖にとって も欠かせません。しかし近年、生息地分断化や環境汚染、外来競争者の侵入などによって、在来の生態系における生物多様性の減少が深刻化しています。その現状を把握し、解決の糸口を見つけるためには、 種間・群集といったさまざまなスケールから相互作用の研究を行なうことが重要になってきます。
私は里山環境に生息する昆虫(主にハナバチ類)を対象として、基礎生態の解明から農業への応用まで幅広く研究を行なっています。
主な研究テーマは
1.昆虫の基礎生態・行動生態に関する研究
・生活史戦略や採餌行動、集合性、交尾行動など
2.ハナバチ類の社会的行動の進化・個体間相互作用に関する研究
・社会性ハナバチにおける非蜜源植物を利用する行動の適応的意義
・単独性ハナバチ類における匂いのマークを利用した採餌行動の進化
・ハナバチ類による睡眠集団の形成メカニズム
・疑似的社会における個体間でのヒエラルキー
3.里山生態系の送粉サービスの持続的活用と野生ハナバチの保全
・農作物生産における送粉サービスに周辺景観や開花植物がもたらす効果
・野生ハナバチ類を用いた持続的な送粉サービス
学部生や院生は、それぞれのテーマに沿って研究を進めてもらったり、ハナバチ以外にも様々な昆虫を扱ったりしています。
これまで学部生・修士学生が扱ってきた昆虫は以下になります。
・ノコギリクワガタ
・ホソミオツネントンボ
・オオカマキリ
・クモ食性クモ類
・ウシガエル
・フルーツオオコウモリ(モルディブ)
・セマルガムシ
・ホルバートケシカタビロアメンボ
・ウスバキトンボ
・クロオオアリ
など。