ハナバチ類における花粉資源の重要性

一般的に、メスは卵巣を発達させたのちに、成熟卵を産みます。孵化した幼虫は、母親が用意した花粉団子を食べて成長します。この一連の過程で、母親と幼虫に共通する栄養源としては、花粉と花蜜が挙げられます。これはハナバチ類においては当然のことと思われてきました。仔の栄養源は紛れもなく花粉であることはわかっているのですが、母親が卵巣を発達させるために、花粉を必要としていることを裏付けとなる研究はほとんどありませんでした。そこで、クロマルハナバチを使って、実際に花粉を摂食したら、卵巣発達が起きるのかを実験してみました。羽化後24時間以内のワーカーを単独飼育したところ、14日目で、ほとんどの個体が卵巣を発達させていることがわかりました。今回の結果から、花粉資源は母親にとっても重要な栄養源であることが明らかになりました。この結果をふまえて、現在、社会性種におけるワーカーの卵巣発達行動と、個体間のヒエラルキーを解明しようとしています。

また、花粉栄養の評価をしようとしたときには、これまで大量の花粉を用意しなければ解析が出来ませんでした。そのため、ミツバチやマルハナバチが脚につけて持ち帰る花粉を利用した栄養分析が主流でした。ただし、このやり方だと複数の植物の花粉が混在したサンプルを解析することになります。また、小さな花をつける植物種の花粉を分析することは困難でした。そこで、微量な量からでも花粉の栄養分析が可能な手法を開発しました。これを用いて、多くの野生植物の花粉を分析し、定量的な評価をおこなっています。


Chisato S Tanaka, Mito Ikemoto, Aoi Nikkeshi, Yuya Kanbe, Masahiro Mitsuhata and Tomoyuki Yokoi

Ovarian development related to pollen feeding in workers of the bumblebee Bombus ignitus (Hymenoptera: Apidae). Applied Entomology and Zoology.

Volume 54, pp85-89, (2019) doi.org/10.1007/s13355-018-0597-1

Aoi Nikkeshi, Kazumu Kuramitsu, Tomoyuki Yokoi and Keiko Yamaji

Simple methods of analyzing proteins and amino acids in small pollen samples. Journal of Apicultural Research. In press.

https://doi.org/10.1080/00218839.2021.1915633

クロマルハナバチのワーカーにおける卵巣発達度合