投稿日: 2012/07/28 2:50:01
校則とは何なのか、その指導方法はどのようにすべきものなのか、考えさせられる事があった。
娘が高校に入学した時のことである。入学前に校則を見て、この程度のことならば、特に気になる事はないと思った。制服を着用するのは常識だと思っていたし、頭髪に関しては、女子は長い場合はゴム等で結ぶ。これも学習の邪魔になるという事であたりまえだと思った。パーマ、カール、染色、脱色等は禁止、スプレー、ムース、ジェル等で髪を固めてはいけない。これも別に問題はない。
娘は髪の毛がもともと赤いが、面接のとき何も言われなかったし、染色も脱色もしていなくてこの色なのだからかまわないと思っていたのだが、6月になって「おかあさん、これ書いてハンコ押して。」と、学校から手紙を持ってきた。
見てみると、『赤毛、縮毛届け』とあり、髪の毛が茶色だったり、癖毛の人は生まれつきのものであり、手を加えたものではない。という届けを出さなくてはいけないということだった。「染色、パーマは禁止されているのに、してくる生徒がいる。その生徒たちとの区別をつけるために届けを出してください。」という事だった。「届けを出すことによって、学校から注意を受けることはなくなります。」と言われて「ちょっとおかしいな」と思ったが、私立の高校ともなるとこんなものかなと「赤毛、縮毛届け」に署名捺印をした。
風紀検査は朝、校門のところに先生が立っていて、抜き打ちに行われた。娘は髪が赤いからチェックのときに引っかかる。「届けを出してあります。」と言うと、それから学校は本当にに届けが出ているかどうか確認する。「どうせそうだったら届けなんて出させずに、赤毛証明書を生徒に持たせておいて、チェックのときに見せられるようにすればいいじゃん、気分悪いよね。」と娘は言っていた。
学校からは「全部の先生がそれをしっているわけではない」と言われた。それなら何のための「赤毛届け」なのかと私は思った。校門での風紀検査はスカートの長さとか、靴の踵を踏んでいるとか届出の必要のない項目について注意をし、届出が必要な項目に関しては、それを把握している担任が教室で行えば良いのではないかと私は思う。
二年生になり担任が代った。そして再び「赤毛、縮毛届け」を提出させられた。すると新しい担任は髪の毛を黒く染めるか切るよう娘に提案してきた。娘は「校則で髪を染めてはいけないことになっている。染めるのは校則違反でしょ、だから黒には染めない。」と反発した。
担任の話では、中には一度赤毛届けをだしたらOKなので、その後どんどん染めていってしまう子もいるということだった。そんなふうに先生と生徒のイタチの追いかけっこみたいな事になっているらしい。「それならみんな最初から黒ければいいじゃないか」ということで、染めろとか切れとかいう話になったらしい。
これには「校則とは何だろう」とつくづく考えさせられた。教育の現場で持って生まれたものを否定するような指導があっていいのかとも思った。
娘は黒く染めることに反発したが、担任は「それでも・・・」と固執した。「頭髪検査のたびに注意をされるのではあなたも不愉快でしょう。だから黒く染めなさい」と担任がいう。
一見生徒のためを考えての提案のようにおもえるが、「担任は自分クラスにそのような生徒がいることが不満なだけだ。」と娘はいう。教壇に立った時に教室中の生徒全員の頭髪が黒い風景を見て満足したいらしい。担任の日常の言動を見ていれば、その担任が生徒のためを思っているのか、自分の立場を重視しているのか、生徒には判る。
私は娘に「切る必要も染める必要もない。このことに関して学校があまりしつこいようなら転校を考えてもいいと。」伝えた。ところが娘は「部活動がすごく楽しい。部活の先生もとてもいい先生なので学校を移る気はない」と言った。「担任にものを言ったことで居心地が悪くなると嫌だ。」とも言う。そして「部活に迷惑がかかるから染めるまではいかなくとも、とりあえず切る。」と言う。部活に迷惑がかかるとはどういうことなのかと聞くと、「あなたがそういう髪の毛の色だと、○○部には茶髪の子がいるよ、という見方をされてしまいますよ。」と担任に言われたという。悪いことをしていない生徒に対してプレッシャーを与えるこの指導はとても教育的とは思えない。
私は「では、学年主任とか校長先生に言ってあげるから。」と言った。娘は「あれからしつこく言ってこないからいい。」と言う。「親が学校に来るのは居心地が悪い。」とも言う。
子どもをまとめて手っ取り早く型にはめようとする取締りのようなやり方の反面、学習面ではきめ細かく行き届いた指導が行われていた。親としては学校がこの様に努力しているのだから、多少理不尽なことを言われても「まぁいいか、この程度のこと・・・」と思ってしまう。また、騒ぎ立てることで子どもが学校に居ずらくなるのではないか、進学の時など不利になったりしないか、などと考え、不満があっても口に出せない親は多かった。
高校ともなると中学の時に比べ、学校と保護者との間に距離が有り、親が学校へ行くこともずっと少なくなる。保護者同士の関係も薄くなるから、「おかしいな」とか「理不尽だな」とか思うことがあっても、保護者同士で相談したり意見交換することはほとんどない。」「高校ってこんなものなのか」とか「こんなことでいちいち学校に質問しに行く親もいないのかな?」とか思ってるうちに流されていく。よほど学校から個人的に呼び出し等がない限りは、学校に苦情を言う保護者は稀であったと思う。私にも「親が騒いで変に目立っても・・・」とか「私が言ったことで子どもに不利があっても・・・」という思いがあった。
あのときに黒く染めていたら、そのままだった。しかし娘は自らの決然とした意志でそめなかった。そして担任も強引にやるとまずいことになることはわかっていて、「ちょっと言ってみて、うまくいったらいいかな。」という感じだった。だからそれ以上のアクションはなかった。
親として、学校の方針が厳しいのならば厳しいのは構わない。しかし持って生まれたものに対して否定するのならば、「それだったら入学させるなよ」と言いたい。面接するときに髪の毛の色は見ているはずだ。もしも学校が「赤毛の人、縮毛の人は入学させません。」と表で言ったら、それは人権侵害、差別になる。学校もそこまでする気はない。入学して初めてそういうことは判る。
校則は誰のためにあるのか。
私立校の場合、経営を考えると、学校を「親が自分の子どもを行かせたいと思うような学校」にする必要がある。そのためには、まずは在校生を外見的に好ましい生徒らしく見えるようにすることが重要だ。制服を着用していることで在校生は学校の看板を背負って歩いているようなものだからである。
そして資料に載せる進学先、進学率のデーターの向上、部活動の大会での上位成績等が保護者にアピールする。より質の良い生徒をより多く集めることが経営上必要であり、これからの時代、教育も二極化されると予想されている。
学校としては生徒のためというよりも、学校経営のための校則と、そのための手っ取り早い取締りに近い指導方法が大切なのだという印象をうけた。
(ルール研究会会員)