1. 開催日時 令和2年2月29日 13時30分~17時30分
2. 会場 奈良教育大学講義棟 101号教室
3. 発表者からの発表 司会 佐藤臨太郎(奈良教育大学)
ワークショップ
“Use It or Lose It: Developing Fluency Through Fun Repeated Activities”
奥平和也(訓子府町立訓子府中学校)
今回の発表では、発表者の授業実践の紹介を通して「繰り返し練習すること」の重要性が示された。実践活動に関しては、反復練習が組み込まれた帯活動「縦横ドリル」が紹介された。充実した練習を行うためには「基礎練習を大事にすること」を意識することが大切である。その際には「学習者へのハードル設定を全員に行うこと」「飽きさせない工夫をすること」の2点が重要となる。ハードル設定は「どこまでならこなせそうか」について生徒と話すこと、飽きさせないためには、低くもなく高すぎない難易度を設定することが不可欠となる。また、下位層の学習者には「こんな事もできないか」ではなく「ここまで出来たんだね」と肯定的な声掛けを、上位層の学習者には、他の生徒を補助してもらう指示を、教師が活動中に行うことが重要である。こうした教師の工夫により、最終的には、生徒が主体となって、お互いに学び合い支え合う活動が可能となる。基礎的な反復練習は時に退屈で継続が難しい。しかし、教師がファシリテーターとして生徒に働きかけることで、生徒が主体的に練習活動に取り組み、生徒が能動的に学びに取り組む学習者としての姿勢を身につけ、しっかりとした英語力を身に付けることが可能となる。
研究発表
“Principles of Repeated Practice: Insights into and form the Yokohama 5-Round System and the TANBU Model”
鈴木祐一(神奈川大学)
今回の発表では、5ラウンドシステムとタナブモデルの見識をもとに繰り返し練習の原理が示された。横浜5ラウンドシステムとは、10個のユニットを1年間で5回繰り返す中学生用のカリキュラムのことを指す。一方、タナブモデルとはレッスンごとに教科書の扱いを変える高校生用のカリキュラムである。これらのカリキュラムから繰り返し練習の原理について考えた。練習志向のカリキュラムとは何か。授業において指導時間と練習時間の割合はとても大切であるが、上記にあげた2つのカリキュラムで共通することは練習の時間を非常に沢山取っていることである。明示的に教える時間はあまり多くとらない。明示的な指導と練習のバランスと順序はどうか。多くの学校では生徒が練習する前に生徒は指導されるが、5ラウンドシステムやタナブモデルでは、全体を通して練習し、練習をする中で時折簡潔に明示的な指導を行ったり、何度も練習した後で明示的な文法指導を行ったりする。では、よい練習とはどんなものか。これら2つの練習志向のカリキュラムによる見識から良い練習の要素について、意味のあるインタラクティブな練習、意図的体系的な練習、配分、適切な推移、やりがいのある練習が示された。練習というと機械的なものでコミュニケーションではないように一見みえるが、もちろんここでの練習は機械的なものではない。50分の授業のうち最初の30分は教師生徒間のインタラクティブなやり取りの時間に割り当てられる。また、生徒は本文の会話を最初から最後まで覚える。横浜南学校では1つのユニットにつき少なくとも30回音読する。音読とは教科書本文を読むことではない。本文を上手に読めることがゴールではない。あくまでゴールは会話で英語を実際に使えることである。教師はいつも生徒になぜこれらのタスクを行うのか思い出させる必要がある。やりがいのある練習は重要である。リプロダクション練習における教師の役割は以下が挙げられる。
・リテリングの大切さを教える。
・コミュニケーション能力を発達させるというゴールを思い出させる。
・新しく楽しくクリエイティブなタスクを準備する。
・練習中あるいは練習後にフィードバックを与え、動機付けする。
ワークショップ
“Speaking Practice and Activities for Fluency Development”
笠原究(北海道教育大学)
今回の発表では、英語の早口言葉やスピーキングのアクティビティを用いて、日本人英語学習者の流暢さを鍛える方法が提起された。この発表は主に三つに分けられ、発音指導とスピーキング活動と英語による歌である。初めに発音指導方法が紹介され、英語の早口言葉をペアごとに練習した。発音練習の前にスピーキング活動を行うことは、生徒にとって負担になる可能性があり、教科書で学ぶこととさらに口述的な練習も必要である。早口言葉は生徒にとって意味は乏しくても、発音の練習としては有意義なものである。次は、スピーキング活動である。生徒をペアに分け一方の生徒にある単語を見せ、片方の生徒に説明させると言った活動が見られた。例えば、”beach”という言葉を見せて片方の生徒が”This is a place which…”と言ったように続けることが期待できる。最後に発表者がギターを用いてQueenの”We are the champions”を合唱するのだが、ここにおいても初めに十分な練習がなされた。複数の文がブランクになったハンドアウトを使って、歌詞のディクテーションを行い、その後歌の練習を行なってから本番である合唱を行う。歌一つにとっても練習は、生徒の負担軽減と流暢さを育てるために必要であることが強調された。発表後のディスカッションにあったように、日本における英語教育の発音指導において文の中でどの部分の音節に強調が置かれるかの指導が乏しいので、英語教育に従事するものとしてsyllableごとの発音の仕方を練習させることの啓発が最後に為された。
4. 参加者からの感想
今回、5 Round Systemといった理論と、EFL環境におけるスピーキング学習、発音・アクセントを楽しみながら学ぶことのできる方法といった実践の両方について学ぶことができました。4月から教壇に立ち、英語を教える私にとって、とても参考になりました。生徒が英語を楽しみながら学ぶことができ、そして英語力を向上させることのできる授業づくりを行っていきたいと思います。ありがとうございました。(奈良教育大学4回生 岡村竜誠)