1. 開催日時: 平成30年5月12日 14時~17時
2. 会場:奈良教育大学講義棟 201号教室
3. 参加者45名
4. 発表者からの発表
司会 佐藤臨太郎(奈良教育大学)
研究発表&ワークショップ①
“How can we motivate students to speak English in the Japanese EFL context?”
泉谷忠至(近畿大学附属高等学校・中学校)
本発表は、生徒の英語を話そうとする意欲についてであった。高校に加えて、今後中学校においても英語の授業は英語で行うことが基本とされることになっている。「英語で授業を行うことの利点と欠点について」や、「なぜ英語で英語の授業が行えていないのか」について参加者を含めて議論を行い、日本の英語教育の現状について振り返った。コミュニケーション活動を取り入れた英語の授業を英語で行うことが学習者の英語を話そうとする意欲についてどのような影響をもたらすかについて研究を行った。この意欲はWTC(Willingness to Communicate)と言われており、WTCが上昇するためには英語を話す学習者の不安度が減り、自信が高まることが必要であるとされている。WTCに関する質問紙の調査を3度行った。結果として、WTCは変化しなかったが学習者の英語を話す不安度は下がった。学習者の英語を話す不安度が低下したにも関わらず、WTCが変化しなかったことからテストや評価に対する不安が考えられる。また、WTCのモデルがESL(English as a Second Language)環境で考えられたため、日本のようなEFL(English as a Foreign Language)環境におけるWTCの在り方や調査の仕方を再考してかなければならない。
ワークショップ②
“Conducting English Lessons in English at JHS”
笠原究(北海道教育大学)
中学校の英語授業を英語で行うために、本ワークショップではDSA(Distributed Spiral Approach)、分散スパイラル学習という新しい授業計画についての紹介があった。今回発表があった新しい授業計画では、「繰り返し学習すること」が非常に大切であるとされている。従来の授業計画では、1つのパートが終われば次のパートに進むことが一般的であり、全ての学習項目を習得することが求められてきた。しかし、新しい授業計画では繰り返し学習するため、初めから完全な理解や習得が目標とされるのではなく、繰り返し学習の中で学習者が少しずつ学習していくことが期待されている。授業計画の概略としては、全体を通したリスニングと文法指導、スパイラルタイムと学習した文法を用いたインタビュー活動を繰り返し行うこと、リテリング活動とライティング活動である。大きな特徴であるスパイラルタイムにおいては、英語の歌、単語学習、文法ドリルを行う。発表の最後には、三人称単数現在の”s”を指導する際に効果的な英語の歌としてThe Beatlesの”She loves you”の紹介があった。
フロアを交えたジョイントトーク
“Joint Talk by Kiwamu, Rintaro and You all”
今回の発表に関して、フロアを交えて活発な質疑応答や意見交換が行われた。今回行われた回答や議論について簡潔にまとめる。
・DSA(分散スパイラル学習)では、一度にすべての内容と文法を導入するため情報が多くなりすぎるのではないか。
→ 全ての情報を理解しなければならないのではない。学習者は少しずつ理解することが求められる。
・DSA(分散スパイラル学習)を取り入れたときに、どのような宿題が考えられるか。
→ 生徒の自主性を尊重することと生徒に選択を与えることが大切である。生徒がノートにしたいことをさせ、毎日チェックする。
・DSA(分散スパイラル学習)を取り入れたときに、どのようにライティング指導を行うか。
→ まずは、音と文字を結びつけることが大切である。授業においては、文法の練習で用いるたてよこドリルを使う。家庭学習では、内容を理解したうえで本文を日本語から英語に直すことも考えられる。
5. 感想
東川裕基(近畿大学附属高等学校・中学校非常勤講師)
今回の研究会でも、2つの発表や新たな企画であるJoint Talkなどを通してとてもたくさんのことを学びました。自分自身4月から英語の教員として授業を行う中で、どのように授業を改善していくか毎日のように悩んでいます。研究会に参加する度に素晴らしい発表やお話を聞けてとても刺激を受けます。今回学んだことを少しでも多く次回以降の自分自身の授業に取り入れていきたいと思います。ありがとうございました。