1. 開催日時 平成28年1月9日(土)14時~17時30分
2. 会場 奈良教育大学文講義棟1階103教室
3. 参加者 計23名(以下、内訳)
大学教員 4名
小学校教諭 3名 中学校教諭 4名 高等学校教諭 6名
学部生 4名 大学院生 2名
4. 実践発表 司会 佐藤臨太郎(奈良教育大学) 記録 泉谷忠至(奈良教育大学大学院生)
実践報告①「小学校英語教育の現状と今後の課題」 岡田茉沙子(箕面市立西小学校)
箕面市立の小学校での外国語活動での実践の現状とこれからの課題について報告が行われた。市より授業で使う教材や指導計画が配布され、子どもたちを英語の音声に慣れ親しませるために、英語の歌やゲームの活用やALT主体の授業を通して、音声指導を中心に授業が行われている。しかし、その一方で、活動の見通しを持った系統性や教師自身の英語力、中学校との連携が今後の小学校での英語教育の課題とされた。質疑応答においては、小学校段階での文字導入の賛否が議論された。従来の読解中心の英語指導から脱却するためには、まず音声面の指導を十分に行うことが重要とされ、今後音声指導をさらにどのように行っていくかが課題となるであろう。
実践報告②「中学校での英語での授業の効果と今後の課題」 木村有希(生駒市立光明中学校)
次に、中学校での教師の積極的な英語使用での効果と課題について報告が行われた。発表者の授業では、教室内での英語の使用率を高めるために、教師による英語使用が積極的に行われている。クラスルームイングリッシュや文法説明などにおいて、繰り返しや言い換え、特にジェスチャーを効果的に行うことで、子どもたちの理解度を確認しながら授業を進めている。しかし、今後の課題として、教師自身の英語力、生徒の英語使用の確保、小学校との連携が挙げられた。参加者との議論では、go to homeではなくgo homeが正しいことを生徒が暗示的に学習しているなど、小学校での英語学習の影響が見られることが確認され、小中の連携についての意見が多く出された。
実践報告③「中学校でのICTを取り入れた授業の効果と今後の課題」 岸田みなみ(奈良教育大学附属中学校)
中学校の英語授業でのICT活用について発表を行った。発表者が勤務している学校では電子黒板やタブレット端末などのICT機器が豊富にあり、実際の英語授業でもその使用が行われている。ICTの活用例としては写真や映像を簡単に提示することで実際に近い英語使用場面を設定することができることや、生徒が作成した英文や作品を集約し全体に瞬時に共有することができることを示してくれた。勤務校での研究会でもタブレットを使用し生徒の活動の様子を記録し、授業内にその共有を行うことで、生徒が次の活動のための振り返りを瞬時に行うことができたこともICTの活用として報告された。しかし、ICTが授業方法の1つであり、それに頼りすぎないことがICTを使用する上での留意点として指摘された。
実践報告④ “Communicative activities that can motivate students in high school English lessons: demonstrations and discussions”
原佑輔(奈良県立橿原高校)
最後の実践報告として、高等学校での英語授業の取り組みとして、コミュニケーション活動の提案が行われた。生徒の動機づけを行うためには生徒自身が活動に従事し、成功や失敗の体験を重ねることが重要とされ、実際に生徒に英語を使い相手と意思疎通を行わせる活動を検討している。生徒同士でのチャットや、語彙学習、リテリング、グループワークなどの様々な場面で単なる受動的な活動に終始せず、生徒が積極的に活動に取り組むことができるような工夫が行われていた。しかし、参加者たちとの議論では、活動の難易度などの課題について指摘がされたが、活動をさらに発展させるための意見や助言が多く出された。
5. 会を終えて 泉谷忠至(奈良教育大学大学院生)
今回の研究会は奈良教育大学英語教育研究会の再開回としての2回目になった。今回は、渡邉一保奈良教育大学名誉教授を始め、奈良教育大学の卒業生である河合良樹先生、西嶌俊彦先生にも参加頂いた。他にも多くの教育大の卒業生、在校生が参加した。発表者には小学校、中学校、高等学校でのそれぞれの実践を報告してもらい、質疑応答での参加者との議論も盛んに行われた。今後、卒業生と在校生のお互いにとっての学習の場となるように、この会の開催を定期的に継続していきたい。