1. 開催日時 平成30年2月17日 14時~17時
2. 会場 奈良教育大学講義棟 201号教室
3. 参加者 計20名
4. 発表者からの発表 司会 佐藤臨太郎(奈良教育大学)
卒業論文発表
“Effective Use of Gestures in English Class in EFL Environment”
池上岳昭(奈良教育大学学部生)
本発表は、英語の授業でのジェスチャーを用いることの有効性に関するものであった。発表者はまずジェスチャーの種類の説明を行い、発表者が観察した高校と中学校での英語の授業でそれぞれの教師がどのようなジェスチャーを用いたかについて、また教師が英語を話す際に意図的に用いるジェスチャー、意図せずに自然に出てくるジェスチャー、またそれらがどのような頻度で行われるかなどの観点で分析が行われた。そして、最後に教師が英語で授業を行うためにジェスチャーが1つの有効な手段であることを結論としてまとめた。
近年、文部科学省により、英語の授業は基本的に英語で行うことが提言されている。しかし、英語で授業の全てを行えば生徒が授業の内容を理解する負担がよりいっそう大きくなる。そこで、教師が自分の英語を、生徒に理解してもらうために、ジェスチャーはまさに、英語での授業を実現するために有効な手段の1つであり、本発表を通して、英語の授業におけるジェスチャーの有効性を感じた。
修士論文発表
“Exploring the effectiveness of small talk in senior high school”
東川裕基(奈良教育大学大学院)
本発表は、英語の授業での教師のsmall talkの重要性に関するものであった。まず、発表者は授業の導入段階においての英語によるsmall talkの種類やその機能について述べ、発表者が行ったsmall talkの研究について報告した。研究では発表者が授業の導入段階で実際に英語でsmall talkを行い、その後その授業を聞いた生徒にsmall talkから何を学んだか(文法、語彙、内容など)についてのアンケートを行った。結果からsmall talk中に使用された語彙を学んだという回答が特に顕著であり、さらに、追加で行ったアンケートから一部の生徒の間でsmall talkを通してWillingness To Communicateが向上したことも報告された。
生徒に英語のインプットを与えたり、動機づけをもたらしたりなど、small talkは英語の授業の中で重要となる。今回の発表によって、英語でのsmall talkの重要性をよりいっそう認識した。
授業実践報告
“My lessons to improve students’ Willingness To Communicate in junior high school”
泉谷忠至(近畿大学附属中学校)
発表者が行った英語の授業について、生徒のWTCを引き上げていくために重要なこと、生徒のWTCが授業の中でどのように変化するかなどについて発表が行われた。発表者の授業の様子が実際に撮影した動画を通して紹介され、発表者が生徒たちに英語で説明を行っている様子や、生徒たちが英語でコミュニケーション活動を行う様子が紹介された。発表後のデイスカションでは、授業に関する質問や、生徒たちのWTCを引き上げるために必要なことなどについて議論された。また、授業の改善点に関する指摘もあり、授業を行った本人だけではなく、発表を聞いていた者も、自分自身が行う英語の授業についても考えることができ、非常に有意義な時間であった。
発表者が行った授業は、生徒に英語の楽しさを知ってもらい、英語をしっかりと学んでもらいたいという気迫が伝わってくる授業であった。また、発表者自身が自分自身の英語の授業に抱く信念がこちらに伝わり、その授業を受けていた生徒の動機付けを促しただけではなく、この発表を聞いていた我々の、自分自身が行う英語の授業をより良いものにしていこうとする動機を高めてくれた。
ワークショップ
“How to increase teacher L2 talk time with effective nonverbal communication”
トーマス・アムンルド (奈良教育大学)
本発表は、英語の授業の中で、教師がnonverbal communicationを使うことの重要性、nonverbal communicationを行うには、どのような種類のジェスチャーがあるか、また、英語の授業における効果的なnonverbal communicationを発表者と聞き手が共に考えていく、実践的なワークショップであった。実際に教科書の一節の中で、この表現を授業の中で生徒に伝えるときは、ジェスチャーをどのように使っていくかなどを考えた。興味深いことに、ジェスチャーは、ある程度は一貫しているものの、個人によって多少異なる場合があることがあった。また、自然に出てくるジェスチャーと、意図して用いるジェスチャーなどの分類など、英語の授業で非常に生かすことのできる技術を学べたワークショップであった。
英語で授業を行うにあたって、やはり、言葉を介さないコミュニケーションの方法についても考える必要があり、英語の授業をより円滑に行うために重要な技術について学べた実践的なワークショップであった。
5. 会を終えて
今回の研究会では主に、英語の授業の中でジェスチャーを効果的に用いることの重要性と、生徒のWTCを引き上げるために大切なことは何か、この2つを主に参加者が議論を行っていた。どの発表からもより良い英語の授業を行うにあたって非常に重要なことを学べた。その一方で、より良い授業を行うためには、英語教授法などの理論を学ぶことも大切であるが、まずは、教師自身が、自分自身で行う授業に対する揺るぎない信念を確立すること、教師自身が1人の学習者として、英語学習に誠実に向き合っていくこと、そして、生徒自身と真正面から向き合い、生徒と心の通わせた信頼関係を築いていくことがベースとなければならないと感じた。しかし、だからといって教授法等は学ぶ必要がないということは決してない。理論さえ学べば、良い英語の授業を展開できるというわけではないが、このようなことを学ぶことは、良い授業を行うための必要条件となる。今回の研究会は非常に有意義なものであり、機会があれば今後も参加していきたいと思った。
黒木浩亮(奈良教育大学学部生)