1. 開催日時 令和元年6月1日 14時~17時
2. 会場 奈良教育大学講義棟 201号教室
3. 発表者からの発表 司会 原佑輔(奈良市立一条高等学校)
ワークショップ
“Improving SHS Students’ Willingness to Communicate through Practice-based Activities”
泉谷忠至(近畿大学附属高等学校・中学校)
本ワークショップでは、英語授業におけるコミュニケーション活動で生徒のWillingness to Communicate(WTC)を向上させることについて、参加者同士で議論が行われた。発表者は、日常的に英語に触れる環境がほとんどない日本のEFL(English as a Foreign Language)環境下においてディベートやディスカッションなどといったコミュニケーション活動だけでは、日本人学習者のWTCを本当に向上させることができるのかという疑問を投げかけ、コミュニケーション活動の前に文法項目に関する明示的説明や練習を十分に行うことを提案した。英語による英語授業の意義や学習者のWTCを向上させる取り組みについて参加者同士で熱い議論が交わされ、非常に有意義なワークショップであった。(文責:奈良教育大学大学院 谷垣徹)
実践報告
“The English Lessons That Focus on the Real World in Public High School: Story Retelling to Jigsaw”
重野金美(大阪府立岸和田高等学校)
本研究発表では、公立高等学校の英語授業実践について次の2つのことが報告された。1つは、ジクソー活動を通して生徒に現実的な状況で英語を使う機会をたくさん与えることである。英語の授業で生徒たちが英語を使う場面があるが、機械的なやりとりになってしまうことがある。それゆえ、英語を使う必然性を与えることは非常に重要である。ジクソー活動では、目標を達成するために生徒それぞれが自分の役割を果たすために英語を使う状況を設定することができる。もう1つは、英語の教科書のストーリー・リテリングを効果的に用いることで、生徒の表現力を高めることである。この活動は、教科書で学習した英語を、読んだり聞いたりできる受容的知識から話したり書いたりできる発表的知識へとつなげることができる。しかしながら、生徒が話を上手く言い直すにはいくつかのステップが必要である。そこで、帯活動で一定期間同じトピックについて話させること、年間の授業計画を立て徐々に難度を上げることが工夫として挙げられていた。(文責:奈良教育大学大学院 中西悠策)
ワークショップ
“Thinking about grammar teaching/learning”
佐藤臨太郎(奈良教育大学)
本ワークショップは、EFL(English as a Foreign Language)環境における、文法指導・文法学習の重要性について扱ったものであった。第二言語習得の観点から、日本のEFL環境での適切な文法指導の在り方について参加者全体で議論が行われた。文法指導の中には、明示的な説明や練習を最低限にとどめて、コミュニケーションの中での文法定着を促す方法もある。しかし、それらは、日本のようなEFL環境でそのまま応用することができるかについては疑問が残る部分もある。そこで、今回のワークショップでは、明示的に文法的に説明すること・文脈の中での意味を伴う練習の重要性について大きく触れた。また、インプット強化・洪水、リキャスト等、具体的な指導法についても学び、それらをグループになって実践する活動もあり、非常に実践的なワークショップであった。(文責:奈良教育大学大学院 黒木浩亮)
4. 参加者からの感想
今回は、実際に現場で働かれている先生方の経験談を用いたプレゼンテーションがある一方で、理論を中心に触れたプレゼンテーションがあり、多様な視点から英語教育についての見識を深めることができました。現場の状況を知りたいと考えている学生や、理論の方もより深く学びたいと考えている人など、様々な参加者のニーズを満たしていて、非常に有意義な学会だと思いました。また、プレゼンテーション以外でも、実際に英語教育に関わっている先生方と交流する機会がたくさんあり、非常に勉強になりました。また、次回も参加したいと思います。(奈良教育大学大学院 黒木浩亮)
普段、理論や研究について書かれた本を読んでいることが多いので、今回実際に高等学校の現場で働かれている方のプレゼンテーションは非常に有意義であり勉強になりました。なかでもジクソー学習はとても興味を惹かれました。そのメリットは沢山あげていただきましたが、特に「実際の社会で英語を使うような必要性を生徒に与えることができ意味のある英語の活動につなげられること」と「生徒一人一人がそれぞれの役割をもつことで他者と協同する力が養われること」の2つは大きな意義があると感じました。沢山の話を聞いて次の学びにつなげたいと思います。非常に有意義な学びの場を提供していただきありがとうございました。(奈良教育大学大学院 中西悠策)