1. 開催日時 平成28年11月20日 14時~17時
2. 会場 奈良教育大学講義棟 210号教室
3. 参加者 計26名
4. 発表者からの発表 司会 泉谷忠至(近畿大学附属中学校)
ワークショップ① ”Teaching grammar communicatively in English” 佐藤臨太郎(奈良教育大学)
英語の授業を英語で行うために、改訂版PPP(Presentation-Practice-Production)の提案が行われた。従来型のPPPにおいては、目標文法の練習が主で、実際にコミュニケーションを行う機会がほとんどないとされてきた。改訂版PPPは目標文法の練習を行ったうえで、学習した文法を使うコミュニケーション活動を取り入れたものである。第1のP (presentation)では、スモールトークを使うことによってインプットを与え、英語もしくは日本語で簡単な文法説明を行う。日本のようなEFL環境においては、暗示的知識だけではなく、明示的知識が必要である。第2のP (practice)においては、文法の形式に注意を払ったmechanical drill に加えて意味にも注意を払うmeaningful drillを行うことが望ましい。最後のP (production)の段階では、目標文法を使うことを推奨する活動から生徒が自由に英語を選んで行える、より自由度の高い活動を取り入れるべきである。最後のPでの教師の役割として、生徒が活動に取り組むことができるように、足場かけ(scaffolding)が必要であると指摘していた。
笠原究, 佐藤臨太郎. (2015). Why not “hybrid” PPP? 『英語教育』64巻10号.東京:大修館書店.
佐藤臨太郎, 笠原究, 古賀功. (2015). 『日本人学習者に会った効果的英語教授法入門-EFL環境での英語習得の理論と実践』. 東京:明治図書.
実践報告① “English Communication Class for the third year of junior high school”
青島悠太(奈良学園登美ヶ丘中学校高等学校)
現在取り組んでいる中学3年生の週1回のEnglish Communication(EC)の授業実践について報告があった。1学期は、”Toy Story”を教材として扱い、スピーチの練習を主に行った。教材の利点として、①声の調子が様々で、感情や序教に応じて変化する、②スピード、③ジェスチャーや表情などノンバーバルな表現が多彩である、ということが挙げられた。しかし、教材の中の場面は現実では起こりにくいものであるといった欠点もあった。そのような活動を通して、生徒は、教師が訂正を加えながら、スピーチの下書きを作成する。2学期は、海外旅行のための重要な表現を暗記する。暗記した英語表現をランダムで選ばれたペアとの会話の中で使う。場面としては、空港、レストラン、ホテル、買い物、カラオケなどがある。暗記することの利点は、レベルの高い生徒から低い生徒まで取り組めること、目標をもちやすいこと等がある。しかし、レベルの高い生徒は早く終わってしまう、生徒にとって適切な場面設定が難しいなどの欠点もある。3学期は、生徒の自由なトピックの発表に向けて練習をする予定になっている。
実践報告② “Examining effective grammar teaching in junior high school: my reflection of the first two years”
新谷太一(大淀町立大淀中学校)
簡単な英語で話しても生徒には理解ができないことが多かったという状況から、どのように英語嫌いを減らすかを常に考えて実践してきた授業について報告が行われた。授業では80%以上英語を使用することを目標にしているが、実際は60%程度となっている。英語で授業を行う際に、英語の補助として、日本語を使ったり、ジェスチャーをたくさん使ったりしている。その結果、1年間で英語嫌いな生徒は減少した。教師の英語使用に加えて、教師が授業の中で使うクラスルームイングリッシュをノートにメモさせることで、生徒が簡単な英語を使うことが見られるよこともあった。
また、音読指導にも重点を置いて指導を行っている。単語の意味だけ分かっている生徒や、単語のスペルや読み方だけ分かっている生徒がいるので、音読を行うことによって日本語の意味と英語の単語を結びつけることができることを現在は目指している。
ワークショップ② “Reflective practice for busy language teachers” トーマス・アムンルド(奈良教育大学)
英語教師のためのリフレクティブプラクティスを有効に活用していくことによってより良い授業を行うことができる。リフレクティブプラクティスとは、自分の授業を振り返り、次の授業につなげていくことである。①授業の記録を手帳につける、②ラウンドテーブルで対等な立場で同僚と話し合う、③ボイスレコーダーやビデオを使って授業観察を行うというリフレクティブプラクティスには主な3つの方法がある。これらの振り返りを定期的に、そして継続的に行うことによって、授業の中では自分自身では気付かないことに気付くことができるようになる。例えば、自分の授業の中には何かしらのパターンがあるかもしれないし、自分は良い授業だと思った授業が生徒にとって良くない授業であるかもしれない。3つの方法には、それぞれ長所や短所はもちろんあるが、続けられそうな方法からリフレクティブプラクティスを始めていくべきであると提案があった。
5. 会を終えて
今回の研究会では、英語教育における理論と実践を各4名の先生方から学ぶことができました。教授法やリフレクション方法、中学現場での授業実践などを聞くうちに、来年度から始まる授業のイメージが湧きました。本研究会は、発表者と参加者の双方に学びのあるとても素晴らしいものでした。先生方、大変貴重な発表をありがとうございました。 (山崎隆史・奈良教育大学学部生)