MIB「タブレ」

投稿日: Dec 06, 2010 4:39:9 PM

昨年(2009)安斎が受け持っていた早稲田大学文化構想学部・デジタルメディア論ゼミにおける思考実験。

BMI(脳・機械インターフェース)によって人間の感情が外部からコントロール可能になった未来は?

感情が直接書き換えられる未来におけるアートとは?

きっかけはこの記事…

MIB社 神経接続サービスを提供か 早大過去ゼミと連携

MIB社は9日、神経接続技術を用いた新サービスを8月に開始すると発表した。

MIB開発部による「TABURE(タブレ)」は、AR(拡張現実)技術、神経接続技術を組み合わせた新技術で、一部の識者による強い反対運動 のなか、製品化に踏み切った形になる。神経接続は情報だけでなく情動や既視感を直接伝達できる。通信インフラは、同社傘下のクラウドネットワーク「ええもばいる」を用いる。

MIB社は2011年、早稲田大学草原ゼミを卒業した仲間数名が起業し、意表をつくアイデアで急成長した。近年は米グーグル社買収の噂も流れている。

MIBによれば「TABURE」応用技術開発は、早稲田大学文化構想学部安斎ゼミ(2009年)に依頼した。未来の企業が過去の大学に研究を依頼する時間差産学連携は、全国でも始めて。なぜ過去の大学機関と連携が可能になったかについて、MIB会長は「彼らは来てもいない注文に応えるくらい、わけありません」と語った。

MIB会長はまた「彼らには社会的に有益な技術だけでなく、反社会的な製品企画も含め、思考実験とブリコラ手法によって可能性を抽出してもらった。反社会的なアイデアを募ったのは、われわれ自身が技術に飼いならされないための予防的対抗措置である」とも語り、暗に競合他社をけん制した。

新製品とサービスの詳細は明らかにされていないが、MIB会長は「すべて準備はできている。なにしろ、2009年7月末に仕上がっている」と成功への自信を見せた。

2015年(平成27年)7月9日 木曜日 朝刊一面

投稿された企画から、いくつか抜粋

TABURE演劇「ミクロコスモス」

MIB社傘下で劇団「ミクロコスモス」が始動することとなった。これは同社開発の情動系神経接続システム「TABURE」を演劇に応用したものである。「TABURE」とは「記憶とそれに付随して再生される感情」を送受信できるもので簡単に言えば自分とは別の「人格」を手に入れられるものである。そしてこの「TABURE」を役者に作用させることで「ミクロコスモス」は演劇を大きく覆す。なぜならこの演劇には“演じる”役者も決められた結末もないのだから。

「ミクロコスモス」は“演じる”演劇ではなく“生きる”演劇である。

役者は「器」となって架空の人物の人格を引き受けることで文字通り変身する。

脚本はある。しかし意味はあまりない。脚本が支配するのは世界観だけで、意志を持って生きる人間を恣意的に支配することは出来ない。

また別人格となり演劇を生きる役者が毎回同じことを考え、同じ行動をするとも思えない。

だから“結末”はない。

別人となって演劇を生きることとなった役者は自由である。

公演時間内はそこに生きるものとして世界の中で好きに振舞えばいい。

役者に抵抗はない。

舞台に立っている間はそこで生きていた記憶と思い出を持っているのだから。

これはもはや演劇ではないと批判されるだろうが、「公演時間」という時間的な制約が“演劇性”をかろうじて残すだろう。時間がくれば演劇は終わる。途中だろうがなんだろうが終わる。未完成に見えても終わる時は終わる。

決められた結末を持つ演劇なんてどうでもいい。

安心して観たい、いつでも同じものが観たい、そんな観客は来ないほうがいい。

「ミクロコスモス」は演劇の姿を借りた小世界なのだから。

-劇団長-

試食放題

メニューや料理番組を見たときにその味を疑似試食することが出来る。

実際に食べるのではなく、食べたときのおいしい!とかまずい!とかを

メニューを見た人の好き嫌いや好みに応じて感じることが出来る。

もちろん食べたときの感情を脳が発してそれを受け取るだけなので

実際に満腹感を得るようなことはない。

だから私はBMIセックス

バア・グリーン・システム

植物によって、日本のお墓に、死者と生者の世界の架け橋を作るシステム。TABUREを用いて、ある人が生前に所有していた植物にその人の情動、性格、記憶を蓄積させることによって、その人の死後、墓参りに来た人々が植物を通じて死者とコミュニケーションをすることを可能にする。また、墓地が植物でおおわれることで、殺風景・怖いといった従来の日本のお墓のイメージを転覆させ、お墓という場所を近所の公園くらい身近にする。バアとは古代エジプトの言葉で、身体の死後も不滅の魂を表す。

昔から、植物にはこの世とあの世を繋ぐ霊的な力があると信じられてきました。「ジャックと豆の木」では、巨大な豆の木が天上と地上を繋ぐ役割を果たしますし、日本でも、たとえば柳の木の下には霊が宿るといわれますし、榊は清浄な力を持つ神木とされています。

私がTABUREで提案するこのシステムは、まさに植物を使って、あなたとして植物が家族や友人とコミュニケーションしてくれるシステムです。つまり植物が、この世とあの世を「つないでくれる」のです。

方法は以下のとおり。まず、あなたの人生の節目に、記念樹を買いましょう。そしてTABUREをあなたと樹に付けます。双方向性のある TABUREをあなたと樹それぞれが持つことによって、あなたは水が足りない、寒いなど、逐一樹の状態を把握できます。樹にもあなたの情動が伝わります。そして樹は、年輪を重ねるのと同じように、年を経るごとにあなたの性格、記憶、情動、その他くせなどさまざまなことを、その皮の下に蓄積していきます。

やがて、あなたが一生を終え、死途の旅に出るとき、あなたと連れ添った樹はあなたのお墓に植え替えられます。株分けして半分を家に残すのもいいですが、あなた自身も生前のようにそばで樹に見守られている方が安心できるでしょう。

そして、今度はTABUREアウトプット機能で、樹はその中に蓄積されたあなたの人格情報をもとに、あたかもあなた自身がそこにいるかのように、あなたに代わって、お墓参りに来たあなたの家族や知人と語らいあい、コミュニケーションすることができます。お墓参りに誰も来ていないときは、きっとあなたの樹は隣のお墓の樹と、おたがいの昔話に「花を咲かせて」います。

これを使えば、まさに植物を通じて、この世とあの世の境がきわめて希薄化した社会が実現するでしょう。格式通り、年に1、2度のみお墓参りをするという今までとは違って、お墓はもはや疎遠な場所、異界ではありません。子どもたちは肝試しの場所に事欠いて困るかもしれませんが、近未来には、孫が亡くなった祖母のお墓に悩みごとの相談に来る、また、お互い顔も知らないひ孫と祖父がお墓で自己紹介し合う、なんてことは、ありふれた光景になっているでしょう。

また、これは植物という「生体」を通じて死者と接するということにおいて、従来の旧ARを使った仮想3D映像技術による死者の復元とは大きく一線を画している点にも言及しなければなりません。

いずれにせよ、これからのお墓は、今までの硬直した空間とは、きっと大きく異なるものになるに違いないでしょう。もしかして、おしゃべりな樹たちが大きく育って森のようになれば、別にお墓の手入れなんて必要なくなるかもしれません。

Toile-To

みなさんはトイレをどう使っていますか?

用を足したいときに行くのはもちろん、それ以外にも落ち込んだとき、考え事をしたいとき、一人になりたいとき、

疲れて休憩したいとき、時間を持て余したとき…デートの前の身だしなみチェックをするなんて人も少なくないはず。

公衆トイレ、学校のトイレ、お店のトイレ…トイレはちょっとした人生の交差点。もやもや、どきどき、わくわく、しょんぼり、いろんな感情が交差します。

トイレの中のあの人を、ちょっとだけ覗いてみませんか?

Toile-To(トイレット)は便座型のBMI。便座に座っている間作動します。

座ると自動で書き込みモードがオンになり、座っている間その人の感情や思いを集積します。

読み取りモードをオンにすると集積されたデータの中からランダムに感情が拾えます。

データの管理はMIB社によって徹底されるほか、そのトイレを使っている人が3人以下の場合は個人の特定を避けるため

読み取りモードに切り替わらないなどのプログラムがあり匿名性は守られます。

展望としては同一のToile-Toを介した感情のやり取りだけでなく、各地に設置されたToile-Toのデータを集めて遠隔地同士のToile-Toの交信も行いたいと思います。

これにより六本木で合コン参加中のOLのトイレと高田馬場の飲み会で潰れかけている学生のトイレ(における感情)が繋がる、などなどの全く新しいトイレの形が生まれます!

(添付資料にあるキャッチコピーのjoined at the hipは和訳すると一心同体という意味になります。)

新しい自殺

びっくりするほどユートピア!

いまや日本社会の主役はオタクです。

しかし、今の社会はオタクに優しくありません。

色々な漫画などで少しずつ認知されてきたが、何かが違う。

同じオタクでも女と男で「萌え」る所が違うのに、それをいっしょくたにしたり、ただのアニメ好きまで「腐女子」と言ったりしています。

しかしそれは間違いです。

男は男、女は女で「萌え」の原理も違えば求めているものも違うので、それぞれ別のサービスが適用されなければなりません。

そこで、性別に合ったユートピア作成サービスを開発しました。

ほら、びっくりするほどユートピア!

ショシンタブレ - 0からやりなおしたろう -

この習慣っていつ身についたのかな?

あなたは、そんな思いを抱いたことがあるだろうか。

どうして歯を磨けるようになったのだろう?

どうしてがゴミ箱にゴミを捨てるようになったのだろう?

ショシンタブレは、あなたが抱いた問いにこたえてみせます。

そのためには、

あなたにとって当たり前になっていることを消してしまう必要があるう。

それがショシンタブレが提供するサービスです。

ショシンタブレは、記憶をリセットするのではありません。

習慣消去によって生じるであろう、初心。

その初心がありもしない方向へ帰着するのを見守るサービスです。

私たちは初心者志望の味方です。

歯をみがけなくなったら、あなたの生活は歯みがきに挑戦する生活にかわります。

人は習慣に飼いならされ、それが出来なかったときへさかのぼることが出来ないようです。

ショシンタブレはそれを可能にしようと思うのです。

あなたが歯みがきだけが抜け落ちた生活をするとどうなるのだろう?

記憶は消しても、体が覚えているかもしれませんだがそれもまた新たな発見でしょう。

そのような発見こそが、ショシンタブレたる者の試みなのです。

開発責任者談話:

情報を蓄えることによって選択の習熟・成熟を計っていこうとする世の中の流れにのりたくない。

この天の邪鬼さだけが開発の起点でした。MIB社が志しているのは未熟への道です。

もはや未熟でもないのかもしれない。行為が欠落したまま生活は行なわれるかもしれないから。