動体×動体ワークショップ
ダンスとしての絵画
もし人間が、長時間シャッターで撮った写真のような長い残像を蓄積できるとしたら、人間はたぶんその残像を利用して、砂に文字を描くような記憶の形式をもったことでしょう。
もし人間が、砂の痕跡のような記憶をもっていたら、絵と舞踏は同じ表現を意味したかもしれない。
写真家がダンサーを撮影するとき、絵を描いているのは写真家か、ダンサーか。
杖道の話から得られたいくつかのエッセンス、 対話性、対称性(身体の左右、杖の手元と先端)、型(形、パターン、定跡)。
これらを頭の片隅において、杖をカメラに持ち替え、撮ることと撮られることの斬りむすぶ運動を写真に写し込むワークショップ。
導入
杖道から惑星軌道へ(中村,講義メモ)
描くことと描かれることの循環(安斎)
動体WS初日
絵や写真は網膜に静止した像の延長であり、線は物体の輪郭であるけれど、一方で線は運動の痕跡であり、運動を喚起する状態の配置でもある。
写真に像を写し込むことは、像に時間をたたみこむことでもあります。
17日のワークショップ初日は、まず写真に時間を写し込むテクニックを、その1から3まで順を追って習得。
動体WS二日目
24日は、初日の経験をもとに「動体×動体」に挑みます。
準備
その1. ブレ写真を撮ってみよう
まず、動体を写すところからはじめます。
Ernst Haas
自分のカメラに合った、ブレ写真の撮り方をみつけます。
マニュアルでシャッタースピードを変えられる場合は、数秒、あるいはバルブの設定に。
全自動なら、暗いところで撮る。
なるべく絞る(絞り値を大きく)
iso感度を下げる。
さらに暗くして時間を稼ぎたい場合は、NDフィルタ(光量だけ抑える)を用いる。
動体をカメラが追うと、動体が静止して背景がブレます(流し撮り)。
その2. ライトペインティングを楽しもう
次に、自分自身が動体としての被写体になってみます。
ライトペインティングは流行っているようで、ネットにたくさん作品や情報があります。
このテクニックだけで、すっかりはまってしまいそうな、ディープな世界です。
いくつか、技法的に気付いたこと。
三脚があるといい。
光源にいろいろ工夫が必要。オンオフできるボタンがあるといい。
懐中電灯、ペンライトなどは光に指向性があるので、散光するといい。
散光には、瓶の蓋やら、ピンポン玉やら、スーパーのレジ袋なども使える。
コンパクトデジカメやケータイだと、ピント合わせがむずかしい。
フラッシュをたくと、描画中の人間の一瞬が写し込める(ピカソの作品参照)
散光にエスカ(光ファイバー)は使えないか?
光源をいくつか作ってみました。
ライトは100円ショップ製。
左から、スーパーボール、ピンポン玉、化粧品の蓋をそれぞれ散光に用いた。
以下、ネットから拾ってきた作品。
リンク:
友達の結婚式のために作っている。こいつらすごい。
TAKEAKI & MAYUMI PiKA PiKA The Movie
http://msbplus.jugem.jp/?day=20100511
Learning Light Painting
http://abduzeedo.com/learning-light-painting
ライト・ペインティング2.0!光のアート集団「Lichtfaktor」とは?
http://white-screen.jp/2009/09/lichtfaktor.php
↑彼らの使っている道具
http://www.flickr.com/photos/lichtfaktor/2590165084/#/
これはいったいどうやってるんだ?
Light Painting - Light Graffiti - Ford Kuga (Table)
http://www.youtube.com/watch?v=WVaxuIKPKvU
その3. 円相
次に、撮影者としての自分が動体となり、世界のあらゆる光を絵画に変換します。
円相は、禅宗において悟りの形象をあらわす図像で、こんな本もあります。
幸村真佐男は、カメラ自身を回すことによって、円相の運動を写真に写し込みます。
カメラを自在に動かせば、写真は被写体を筆にして、どんな形も描くことができる。いわば静止した筆に紙をあて、紙を動かすことによって絵を描く。
「円相」シリーズは、幸村真佐男の奇想天外なパラドックスです。
幸村真佐男『zen ensoh』
http://www.flickr.com/photos/fomalhaut/sets/1667101/
幸村さんに倣って実際にやってみると、思ったより簡単じゃありません。カメラは、振らずに平行移動するといいようです。
幸村真佐男
円相(wikipedia):http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%86%E7%9B%B8
その4. 動体×動体へ
最後のステップは、向かい合った被写体と撮影者が、お互いに撮影者と被写体でもあり、お互いに動きながら光りあい撮りあいます。
それぞれが、動体としての円相撮影者であり、ライトペインターとしての被写体でもあります。これは非常に複雑で、難しい課題です。
惑星は天球上で、心を惑わすような動きをします。観測者も観測される対象も、動くから。
動体×動体では、まず描く人たちと撮る人たちが、それぞれ歩き始めるところから始めてみます。
描く人は、自分がここにいることを光の軌跡であらわします。撮る人は三脚を外して、描くひとひとたちの中に入っていきます。
楽譜のト音記号の位置から、終止線の方向を眺めることを想像してください。
描く人もまたカメラをもち、撮るひともまた撮られるところまでいたれば、たとえば以下のようなことになります。
AとBが向かい合い、たがいに相手を撮るために動く。その動きを相手が撮る。相手もまた撮るために動く。相手の撮るためのうごきを撮る…
Bを撮るためのAの動き
↑ ↓
Aを撮るためのBの動き
まさにエッシャーの絵の循環の中に閉じ込められます。
ムサビ基礎デ「オートポイエーシス論」において、つい先日行った「動体×動体」ワークショップの成果があります。(掲載予定)
これをミームとして、より先に行く方策を練りましょう。
(安斎)
動体×動体2日目の成果ダイジェスト - Jun 07, 2014 12:6:35 PM
動体×動体ワークショップ2回目 - Nov 22, 2010 12:59:47 PM
描くことと描かれることの循環 - Nov 14, 2010 9:8:18 PM