異所性蒙古斑について

少し長くなりましたが、私が異所性蒙古斑の診療の際に考えているポイントについて記載しました。

「異所性」蒙古斑と蒙古斑の違い

アジア人のお尻には、「蒙古斑」があることが多く自然消退するため、治療対象にはなりません。
経験が浅い、若いことを揶揄する「尻の青い〜」という表現は「蒙古斑」がもとになっています。

異所性蒙古斑は、組織学的には同じものなのですが、お尻以外に発生すると何故か自然消退せず、見た目として気になる場合はレーザー治療が行われる場合があります。

治療に用いるレーザーについて

異所性蒙古斑に色がついている原因は、皮膚の比較的深い部分(真皮)にある色素です。
理想は異常な色素だけを破壊して、正常の皮膚にある色素と、その他の真皮にある組織を破壊しない治療です。

そのために、非常に短い照射時間(パルス幅)をもつレーザーが治療に用いられてきました。
ナノ秒単位のパルス幅をもつ、「Qスイッチ付き」ルビーレーザーやアレキサンドライトレーザーが一般的に使用されてきました。これらは、美容医療のシミ治療にも使われているので、経験のある方もおられるかもしれません(シミの治療も、シミの原因となる色素を破壊して、周囲の組織を破壊しないことが理想です)。

近年登場した、さらにパルス幅の短いピコ秒単位のパルス幅を持つレーザーも、異所性蒙古斑の治療に有用であると報告されるようになってきました。
治療回数や治療効果は従来のレーザーと謙遜なく、周辺の組織へのダメージがさらに少なくなるため、色素沈着などのトラブルが少ないことが報告されています。
結果として、レーザー治療を短期間で終えることができるとされています。

そのほか、私としては、なによりも「痛みが軽い」ことがピコ秒レーザーの利点だと考えています。治療を受けられる子供たちや、大人の皆さんのストレスを軽減できることが一番だと思います。

そのため、当院では、ピコレーザー「エンライトンSR」を使用した治療を行っています。

レーザー治療の対象となる異所性蒙古斑は?

「異所性」蒙古斑は自然消退しません。
ですが、体の成長に伴って「引き伸ばされて」大きくなるにともなって薄くなる傾向があります。
そのため、「体が成長しても残りそうなぐらい濃いもの」だけを、レーザー治療の対象とすることが多いです。

レーザー治療はいつ行うべき?

何歳からでも治療は行うことができますが、
乳幼児期〜3歳頃まで、もしくは小学校中学年以降を目処におすすめすることが多いです。

治療回数という観点からは、乳幼児期〜3歳頃までに治療をおこなうべきです。
乳幼児期のうちに治療を始めると、皮膚が薄く色素がレーザーに反応しやすいため治療回数が少なくなる傾向があります
ですが、麻酔をしてもレーザー治療には痛みがありますし、見知らぬ病院で治療を受けるのは子供にとっては恐怖でしかありません。
多少タオルなどで抑制するしかないのですが、3歳を過ぎてくると力が強く動き回り、安全にレーザーを当てることが難しくなります。また、そのぐらいになってくると、将来的にトラウマとして記憶に残りうるという懸念があります。

また、子供のコンプレックスにならないようにする、という観点からも、早期の治療がおすすめされます。
物心がつくと、人目を気にするようにもなり、あざを気にするようになる場合があります。
記憶に残らないうちに異所性蒙古斑を消してあげることができる、という点も早期治療のメリットです。

ですが、判断に迷われる場合も多いと思います。
お子様自身が大きくなってから、気にするようになり、治療をがんばりたいと思ってからでも遅くはありません。麻酔クリームを併用したレーザー治療を頑張ってくれる子が増えてきます。

そういった観点から、お子様の性格とモチベーション次第ですが、我慢して治療を受けられる小学校中学年を目処に治療を行うこともあります。

もちろん、大人になってからでも遅くはありません

麻酔は必要?

麻酔を行う場合もあります。
小範囲の場合は麻酔クリームを塗って20分〜30分程度待つことで、かなり痛みを軽減できます。
ピコ秒レーザーであれば、従来型のナノ秒レーザーよりも痛みが軽減できます。

広範囲の異所性蒙古斑の場合は、全身麻酔を行う場合があります。
これは、広範囲のレーザー照射には時間を要するため、患者さんのストレスを軽減するためであったり、どうしても安静が難しい子供たちの治療を行う時に選択されます。
全身麻酔がよいと考えた場合は、子供のレーザー治療を全身麻酔で行っている施設へご紹介させていただきます。基本的には入院となる場合が多いと思います。
もしくは、外来受診の際に少しずつ分割してレーザーの照射を行います。

治療の回数は?どの程度薄くなるの?

治療回数は、年齢、異所性蒙古斑の濃さと部位によってことなりますが複数回必要になることが多いです。
小さい頃に治療を始めると、皮膚が薄く色素がレーザーに反応しやすいため治療回数が少なくなる傾向にはあります。
また、体のプロポーションが小さいと、将来的な発育も考える必要があります。体が成長して、異所性蒙古斑が引き伸ばされたときに目立たないだろうという程度、少し薄く残っている程度で治療を終えることになります。

ある程度大きく発育した方であっても、レーザーを何度も当てると白く色が抜けすぎることがあります。
薄く残っているよりも、白く色が抜けているほうが目立つことがあり、少し残っているあたりを治療の治療のゴールとすることがあります。

治療をしたほうがよいのか迷っておられる方への助けとなればと思います。
治療に迷われている場合は、ぜひご相談ください。