第11回WS

2015.07.07更新

第11回話しことばの言語学ワークショップ

おかげさまで話しことばの言語学も第11回目のワークショップを開催する運びとなりました。

第11回ワークショップを下記の通り開催いたしますので、奮ってご参加ください。

今回は「話しことばの定型性」をテーマとして、研究発表を行う予定です。

〈概要〉

日時:2015年8月22日(土曜)13時30分~16時40分(予定)

場所:慶應義塾大学日吉キャンパス 来往舎(らいおうしゃ)2F 大会議室(http://www.keio.ac.jp/ja/access/hiyoshi.html

内容:「話しことばの定型性」についての研究発表

参加費用:500円(コピー代、茶菓代、その他諸経費)

*事前参加登録は不要です。当日、直接受付にお越しください。

問い合わせ先:hanashikotoba.gengogaku[at]gmail.com

*今回のワークショップより、問い合わせ先が変更となりました。[at]を@に変更してください。

〈プログラム〉

〈発表要旨〉

・イントロダクション

題目:「定型表現研究概観ーWray(2013)を基にー」

発表者:横森大輔(九州大学)

概要:定型表現研究の歴史は古く、言語に関わる様々な分野で行われてきた。その歴史は2012年のAnnual Review of Applied Linguistics誌における12編のレビュー論文や、Wray(2013)のリサーチ・タイムラインにまとめられている。Wray(2013)では言語理論、言語障害、言語発達、第二言語習得、文化、コーパスの6つの分野における定型表現研究の重要な研究が紹介されている。本ワークショップのイントロダクションとして、Wray(2013)のうち、とくに言語理論に関する研究として挙げられているものを中心に簡単に紹介する。

参考文献:Wray, Allison. 2013. Research Timeline: Formulaic language. Language Teaching 46(3): 316-334.

・第1発表

題目:「談話の構築と定型表現ー中国語会話のデータから」

発表者:遠藤智子(日本学術振興会・筑波大学)

概要:定型表現と呼ばれる表現には、形式も機能も様々なものが含まれる。本発表では、中国語の会話データに基づき、談話標識(特に二人称代名詞と認識・発話動詞によって構成される談話標識)とイディオムの二種類を取り上げる。英語ではyou knowやyou see, you say等が談話標識として間主観的機能を持つことが指摘されているが(Fitzmaurice 2004)、中国語でもni kan “you see”, ni shuo ”you say”, ni xiang “you think”等の表現が語りの中の比較的早い時点で聞き手の注意を制御する談話標識として使われる。これに対し、イディオムは語りの終結部で語りの内容を総括する働きを持って使われる(cf. Drew and Holt 1998)。この観察から、語りの構造と定型表現の意味・機能の限定性および多様性との関連を論じる。

・第2発表

題目:「So was, I’m, I’m just getting a little confused here-自己反復は定型表現なのだろうか?」

発表者:柴﨑礼士郎(明治大学)

概要:自己反復(そして他者反復)の事例報告は多数存在し、言語毎に用いられ方に違いのある可能性もあるが、広義に解釈すると反復には普遍性のあることも指摘されている(e.g. Rieger 2003; Fujimura-Wilson 2007; Kjellmer 2008; Baba 2010)。そこで、本発表では現代アメリカ英語における「人称代名詞+繋辞」表現に注目し、以下の考察点を中心に、その反復使用の調査報告を行う。一点目は「人称代名詞+繋辞」表現が定型表現とみなせるほどに使用されているか否かである。二点目は「人称代名詞+繋辞」表現が話しことばに特有のものであるか否かである。三点目は「人称代名詞+繋辞」表現が用いられやすい談話環境が特定できるか否かである。

・第3発表

題目:「会話と定型性」

発表者:大野剛(アルバータ大学)・鈴木亮子(慶應大学)

概要:言語の本質を理解するための手がかりは、言語の最も基本的な形である日常会話に求める ― この当たり前のように見えて実践されているとは言いがたい手続きを使って分析を試みる。日常会話ではいわゆる定型表現が非常に多く見られることから「言語は文法規則で生成される」という言語学の最も一般的な考え方への疑問をもたざるをえない。同様の報告が英語に関しても多くなされていて(Altenberg 1998, Erman and Warren 2000, Cameron-Faulkner et al. 2003, Bannard and Lieven 2009, and Hopper 2011)、実は「定型性」こそが言語使用のメカニズム、更には言語の本質そのものを理解する手がかりになるとさえ考えられる。つまり、日常会話で使われる言語の定型性の特質を明らかにすることは、話しことば基盤の言語モデル形成の第一歩になりうる。定型性を定義すること自体が難しい(Wray 2013)ことからも、そのさらなる理解をめざして、個別の定型表現に焦点をあてるだけではなく、会話データ全体に観察される定型性を細かく観察・分析することの必要性も論じたい。