研究内容(DC)

コンパクト連星系に於ける重力波輻射の反作用の定式化

研究の目的

この数年のうちに、重力波の直接検出器が稼働する。重力波が検出されると、相対性理論をはじめとする重力理論の検証がなされ、今まで観測されなかった物理的情報を重力波源から手にすることができる。合体しようとしている連星系は、観測的に注目されている重力波源であるが、理論的には単純な系として長年研究されてきている。しかし、研究法自体に問題点があり、期待される観測精度まで理論的予測が成されていないのが、現状である。問題点を解決するために、新しい方法を展開し、正確な重力波に対する理論的予測を構築することを、まず第一の目的とする。続けて、現在用いられている近似を取り除き、重力波の時間的変化を全て追えるようなものを考えたい。

研究の内容

重力波源として有力視されている、合体しようとしている連星系に注目する。重力波は物質分布の時間的変化によって生じるので、重力波の放射に対する反作用を考慮して、連星系の軌道の進化を正確に考える必要がある。この研究の有効な方法として、一方が重力場を支配してブラックホール時空を形成し、他方を質点と見なし摂動を与えるものとして取り扱う方法がある。今までのアインシュタイン方程式の摂動論的な研究の中で、多くの有用な結果が導かれた。しかし、まだ系統的な計算法が確立されていないため、観測精度に見合うような理論的予測が成されていない。ここでは、質点の運動方程式を正確に取り扱うことによって、系統的な計算法を確立する。連星系の一方を体積を持たない質点と見なすとき、重力の摂動場は質点の場所で発散する。計量の摂動の局所的解析と、摂動をフーリエ調和関数展開の無限級数和の形で求められる、大局的解析を用いることで、この問題を考え発散の問題を解決し、質点の運動の情報を取り出す。これによって、系統的な理論の定式化を完成し、観測精度に見合うような理論的予測を構築する。膨大な計算量になると予想されるので、計算ソフトを用いる。その時に、実際の観測にそのまま応用できる、重力波の波形に対する専用プログラムの作成を行う。次に、コンパクトな天体を質点と見なさず、内部構造(密度分布・スピンなど)を考慮した理論を構築する。連星間の距離が十分小さくなり合体融合する段階に至ると、質点近似は正しくない。内部構造に大きく依存するようになる。そこで中性子星の内部構造の研究を行い、重力波の放射に対する反作用による内部構造の変化を考慮することによって、連星系の最終段階に放出される重力波を解析する。

----------Last updated: May 28, 1998