刑を終えた人の人権

「刑を終えた人」って?

 皆さんは、「刑を終えた人」についてどう思いますか?罪を反省していないと思っていますか?そして、二度と社会復帰などしてほしくないと思いますか?

 「刑を終えた人」と一括りにしても、様々な人がいます。刑期を終えて出所し更生した方、社会復帰を目指している方、そして社会復帰をしても偏見・差別が一つの要因となって再犯してしまう方。

 現在の日本で、10年以内に再犯し、再び刑務所に入る方の割合は、約50%です。そしてその中には社会復帰を考えていた方も含まれています。ではなぜ再犯をしてしまうのでしょうか?

再犯をしてしまう理由と日本の課題

 再犯をする多くの背景には、偏見や差別があり、社会から排除され、再び犯罪に手を染めるという悪循環があります。

 また、日本には大きな課題があります。それは、「刑を終えた人」の住居の確保です。社会復帰をするには労働をし、お金を稼いでいく必要があります。しかし、就職をするときには住居が必要となります。そこで住居を確保しようとすると今度は家賃を払うため、すでに就職していることが必要になります。

 就職しようとしても、偏見や差別から住むとこを確保できないため、社会復帰を目指していた方でも断念し再び犯罪に手を染めてしまいます。また、無事に住居をを確保し、就職をすることができたとしても「刑を終えた人」ということからの差別を受けることで、再犯をしてしまうというケースもあります。

 例として、就職先で過去の犯罪について知られてしまい、周囲の方に冷遇されたり態度を急変され、退職したり、退職させられたりする、といったことが挙げられます。

 以上のことを踏まえ私達は、再犯の原因の多くはその方だけにあるのではなく、社会にもあるのではないかと考えています。

 周囲の人たちの「刑を終えた人」を避ける意識が一つの要因となって、これらの人たちが社会から排除されてしまう。その方の居場所を奪い、生活を極めて困難にさせる。結果、それが再犯へと繋がってしまう。

 再犯が増えるとその人の社会復帰がより困難になると同時にまた新たな被害者を生み出すことになります。ですから私達は、偏見や差別のない社会をつくっていく必要があります。そうすることで、連鎖をなくしていけるのではないでしょうか。

日本の取り組み

 現在、日本には法務省が作成した「再犯防止推進計画」があります。その主な内容は、出所者らの職業や住居の確保、刑務所などでの教育や職業訓練の充実、保護観察体制の整備です。

 このような計画があるのに再犯をしてしまう方がいるのは次のようなことに課題があるからです。

 就労・住居の確保、保健医療・福祉サービスの利用の促進、学校等と連携した就学支援の実施、効果的な指導の実施、広報・啓発活動の推進、このような課題を解決していくことが、「刑を終えた人」の立ち直りを支えることになります。

他の人の立場の視点と、私達第三者の意識

 ここまで、「刑を終えた人」について考えてきました。しかし、「刑を終えた人」がいるということは、その被害者もいます。その中には、自分に被害を及ぼした相手を許せない人や、自分の大切な方を傷つけられたり失ったりしたことで、罪を犯した人を許すことができない人もいるでしょう。

 そして、心に深い傷を負い、「刑を終えた人」には罪を償っても、社会復帰をしてほしくないと願うこともあると思います。

 事件の概要について、テレビやSNSを通じて情報を得ている私達は、「刑を終えた人」の事件に至るまでの心境や、犯罪被害者が何を願っているのかを知りません。私達が知っていることは、事件の内容だけです。

 「刑を終えた人」が反省をし、社会復帰を考えているかどうかも知らない場合があります。

 では、誰が「刑を終えた人」に偏見・差別を持っているのでしょうか。それは、私達一人ひとりの中に、偏見や差別につながる意識があるのではないでしょうか。私達は、「刑を終えた人」には出会ったことがない場合が多く、その人を知らないから偏見や差別につながる意識を持つのだと思います。

私たちにできること

 私達ができることは、自分の憶測でその人のことを決めつけないことです。

 もちろん、「刑を終えた人」は悪くない、とは言っていません。しかし、その事件に直接関わっていない私達が「刑を終えた人」を差別し、「刑を終えた人」のすべてを否定することはしてはいけません。

 私達にも日常の中で、改善しなければいけないところはたくさんありますし、周りの方々に迷惑をかけることもあります。ですが、私達はそれが原因ですべてを否定されてきましたか?

 「刑を終えた人」は、絶対にやってはいけないことをするから逮捕されます。しかし、だからといってその人のすべてを否定してもいいのでしょうか。

 私達は、周りの人のすべてを知りません。すべてを知らないからこそ、「罪を犯した」という悪い一面だけを見て、人のすべてを否定してはならない、それは「刑を終えた人」だけでなくすべての人に対してです。

 なのでまずは「知ること」が大切です。知らないから人は差別をすることがあると思います。なので、自分の憶測で判断し、自分がその人を傷つけ、自分が新たな加害者にならないために、これ以上傷つく人を増やさないためにまずは知ってみませんか?