知的障害と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?会話の不自由や学習能力に支障が出ているなど色々なことを思い浮かべると思います。しかし、聞いたことはあるけどあまりピンとこないという人もいるかもしれません。この記事では、知的障害と発達障害の違いや細かな分類についてまとめていきたいと思います。

知的障害とその原因について

まず、知的障害とは何かについて説明していきます。知的障害とは、発達期までに生じた知的機能の障害によって、知的能力と社会生活への適応機能が遅れた水準にとどまり、日常生活において困難を抱えている状態をいいます。厚生労働省では知的障害について「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」と述べています。

また、知的障害の原因には様々なものがあります。その中で、ここでは「生理的要因」「先天的要因」「後天的要因」と分けて説明していきます。

生理的要因

 生理的要因は、子どもに特に基礎疾患は見られないが、知的能力と社会生活が知的障害とされる範囲に当てはまるという場合のことを指します。「突発的要因」と呼ばれることもあります。

先天的要因

 先天的要因は、出産前後の感染症や中毒、染色体異常(ダウン症)などによるものです。他にも先天的な代謝異常が原因となることもあり、この場合は新生児のスクリーニング(※)で判明することがあり、投薬や食事療法などの治療がおこなわれることもあります。

ふるいわけや選別検査の意味。自覚のない疾病や欠陥を暫定的に見分ける目的で行われる。

後天的要因

 後天的要因は、出生後の疾患やけが、栄養失調などによるものです。生まれた後に罹った日本脳炎やポリオ、麻疹、百日咳などが重篤化して、脳炎になることで知的障害を引き起こす場合があります。こういった感染症などは、予防接種をすることである程度感染の可能性を下げることもできます。また、事故や怪我などで頭に外傷を負ったことで、脳機能に影響が出て知的障害に繋がることや、乳幼児期の栄養失調などの成長環境が知的障害の原因となることもあります。

上記で紹介した以外にも、知的障害には様々な原因があります。一部に遺伝が関わっていることもありますが、「知的障害は遺伝する」ということではありません。親が知的障害の素因を持っていたとしても、子どもに必ず遺伝するわけではありませんし、仮に遺伝したとしても発現するとは限りません。実際、遺伝性疾患のほとんどは正常な遺伝子や染色体が突現変異して生じるもので、誰にでも起こり得ることといえます。

知的障害と発達障害の違い

知的障害と似た困りごとがある障害として発達障害というものがあります。知的障害と同じだと思われることもありますが、違うものです。ここでは発達障害について簡単に説明した後、知的障害との違いのついてまとめていきます。

発達障害とは

発達障害とは、生まれつきの脳機能の偏りによりさまざまな特性が生じる障害のことです。特性と周囲の環境とのミスマッチにより、日常生活や社会生活で困りごとが現れるといわれています。

発達障害の中にもいくつか分類があります。
・自閉スペクトラム症(ASD)
・ADHD(注意欠如・多動症)
・学習障害(LD)/ 限局性学習症(SLD)
それぞれを簡単に紹介していきます。

自閉スペクトラム症(ASD)

「対人関係や社会的なやりとりの障害」や「こだわり行動」がある発達障害です。「自閉症」という名前は漫画『光とともに…』などで聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?「自閉スペクトラム症」は、それまで自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害など様々な診断結果に分かれていたものを統一した診断名のことです。これは2013年に刊行された『DSM−5(※)』によって決められました。

「対人関係や社会的なやりとりの障害」では、あいまいな表現の理解が難しいことや、相手の立場に立って考えることが苦手などの特徴があります。「こだわり行動」では、特定の物事に対して強い興味を示すことや、自分のやり方など特定のことにこだわりが強いなどの特徴があります。こういった特徴により、主に人間関係などで困りごとを抱えることが多いです。 

また、自閉スペクトラム症の方には「まぶしい光が痛く感じられる」や「他の人が聞き取れない音も聞こえてしまいストレスになる」といった「感覚過敏」がある方や逆に「大きなケガに気が付かない」や「暑さや寒さを感じない」といった「感覚鈍麻」がある方もいます。 

※精神疾患の国際的な判断基準のこと。正式名称は「精神障害の診断・統計マニュアル第5版」

ADHD(注意欠如・多動症)