お客様ニーズが見える ID-POS分析。
【選択肢とニーズ】品揃えの絞り込み VS 豊富な品揃え の冒頭でも書かせていただいたように、対立に思える殆どの事象の背景には、仮定の誤り(あるいは言葉の定義の不一致)があります。「品揃え」という言葉が売り手視点では「SKU」、買い手視点では「ニーズ」であったのと同じように、生産性という言葉も二面性を持っており、その一つが物的生産性、もう一つが付加価値生産性です。簡単に言ってしまえば、前者が「モノを生み出すスピード」、後者が「お金を生み出すスピード」です。
近年「生産性」という言葉がかまびすしく叫ばれていますが、多くの企業が生産性という言葉を「モノを生み出すスピード」と仮定しているようです。
不良在庫も生み出されたモノです。
お金を稼ぐ事を生業としている私達にとって重要なのは、あくまでも「お金を生み出すスピード」です。
次の図のAさんとBさんは、同じ生業を持つものとします。
Aさんは精力的にテキパキと働き、紙の資料をはじめとしたモノを生み出し続けています。Bさんはソファに座ってスマホを眺めています。
二人の前には山一つ分の同量のコインが置かれています。
これは二人の「お金を生み出すスピード」が同じである事※を示しています。
精力的にテキパキと働くAさん
スマホを眺めるBさん
※.モノを生み出すには経費が掛かります。また、多くのモノは在庫の増加、要らぬ炎上リスクの発生に繋がります。お金=儲けですので、実際には既にこの時点でBさんの方が生産的です。
次の図のBさんの前には、コインの山が四つ置かれています。
これは、スマホを眺めるBさんの「お金を生み出すスピード」が、精力的にテキパキと働いているAさんの四倍である事を示しています。
精力的にテキパキと働くAさん
スマホを眺めるBさん
勤労、それも目に見えるそれを美徳※と見る向きには、楽して儲けているように見えるBさんは受け入れ難いかもしれませんが、生産性を「お金を生み出すスピード」と定義した以上、その評価はプロセス(労働)ではなく結果(儲け)で決まります。ですから、単純にその定義から生産性を図示すれば、必然的にこの図のようになってしまいます。
実際に少子化、ワークライフバランス、AI等、私たちを取り巻く世の中の流れ自体が、大なり小なりBさん的な生産性を志向していますし、選べるのであれば、あなた自身もBさんのように働きたいのではないでしょうか?
誤解を恐れずに言うならば、生産性を高めるという事は、あなたとあなたのチームが「如何に楽して儲ける状態に近付けるか」です。
※.顧客に貢献する気高さこそが美徳であって、忙しい事が美徳な訳ではありません。
図ではBさんが「楽して儲けている」ように見えますが、Bさんがこのような状態になれた裏には、Aさんには無い(場合によっては既存の市場に留まらない)「アイデア」とその生産があったはずです。また、仕事のお金は市場からしかもたらされませんので、そこには確実にAさん以上の市場からの評価があります。
ここまでの生産性の定義上、それが運であったのか、天賦の才であったのか、脳みそから汗をかくようにして絞り出したものなのかは、関係ありません。
しかし多くの場合、市場に評価されるアイデアを生み出し続けることは、それ自体が極めて困難な生産活動です。
いずれにせよ、Bさんが一つのアイデアにかまけ、余力を新たなアイデアの創造に使わなければ、いずれAさんのように勤勉な競合に模倣され、過当競争に陥ってしまうことでしょう。
過当競争、すなわち生み出すモノの価値が、市場から見て競争相手と大差ない、もしくは真似し易い安直なものの場合、モノを生み出すスピードが(利益率の低下により)お金を生み出すスピードに近づき、(付加価値の競争よりも)物的生産性の競争が優勢を占めるようになります。
アイデアの欠如、もっと言えばビジネスモデルの浅薄さこそが多くの企業が生産性という言葉を「モノを生み出すスピード」と仮定してしまっている原因です。
過当競争に追われる事となったBさん
過当競争下でモノを生み出す事に追われるばかりでは、市場から見て競争相手との間に差を生み出す、競争相手にとって真似がし難い新たなアイデアは生まれません。過当競争を脱するアイデアを生み出すためには、大きな余力が必要なのです。
その意味では、生産性を高めるための第一歩は「余力を生み出す事」※と言えます。
※.解説は避けますが、TOC(Theory Of Constraints:制約条件の理論)の観点からすれば、物的生産性にすら余力は必要です。
「余力を生み出すのが第一歩」といっても、日々の「モノを生み出す事」に追われている現場では、その「余力」をどうやって最初に生み出せばよいのか?「言うは易し」ではないか、という反論もあるかと思います。
ご心配ありません。余力を生み出す方法は、驚くほど簡単です。
まず、あなたの会社、もしくはあなた個人の仕事を棚卸しして、大雑把に次の図の通り「お金を生み出す仕事」と、「法令を遵守するための仕事」、「どちらにも関係ない仕事」の3つに仕訳してみてください※。
※.具体的には、例えば「会議」がどれに分類されるのか?と考えるのでは無く、現に存在する幾つかの会議を「お金を生み出す会議」、「法令を遵守するための会議」、「どちらにも関係ない会議」に仕訳して下さい。
法人に必要な仕事の分類
いかがでしょうか?
法令を遵守しつつ、お金を生み出すのが法人ですから、答えはもうお分かりですね。
そう、「どちらにも関係ない仕事」は今すぐやめてください。次いで「法令遵守」への過剰な反応が無いかを確認し、それが認められれば、それもやめてください。
たったそれだけで、あなたの会社にはずいぶんな余力が生まれるはずです。
「人間は機嫌よく働いている時が最も生産性が高い」というのはよく言われる言葉です。売る人が売ることに、作る人が作ることに集中できれば、お金を生み出すスピードがより一層速くなるであろうことは言うまでもありません。
「お金を生み出す仕事」、「法令を遵守するための仕事」、「どちらにも関係ない仕事」を仕訳すること無く効率化へと邁進すれば、やめるべき事を効率化し、コストをかけて存続させ続けるという茶番になるのですから、目も当てられません。
例えば、かつて隆盛を誇ったチェーンストアを思い浮かべてみてください。規模を拡大して仕入れ量を増やし、原価を下げることで「圧倒的な低価格で提供できる」事がチェーンストアのビジネスモデルのはずです。しかし、日本最大級のチェーンであっても「大手と言っても圧倒的という程安くない」という肌感覚を持ちませんでしたか?それは、図でいうところの「どちらにも関係ない仕事」が肥大する事で、規模のメリットを上回り、規模のデメリットとなってしまったからに他ならないのではないでしょうか?
私たちが目にして来た時代の寵児とも言える企業の凋落の原因の一端は、まさにここにあるのかもしれません。
完全に客観的な棚卸しをしていただければ実感できるかと思いますが、現に「どちらにも関係ない仕事」は存在しています。
なぜそのような仕事が存在できるのかと言えば、それが「必要」だと信じられてきたからです。しかし、それこそが「必要」だとする「仮定の誤り」に他なりません。
多くの場合、こうした「仮定の誤り」は、企業の成功体験に基づいた「フィロソフィー」から生まれています。
チェーンストアで言えば、「価格破壊」「ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア」「ワンストップショッピング」「単品管理」「エブリディ・ロープライス」といった、仕訳の目すらも曇らせる企業の代名詞、必殺技たる自負を持ったフィロソフィーです。
これらの強力なフィロソフィーが、いつしか思考を差し挟む事を許さない組織の「パラダイム(物事の見方)」を醸成し、それを堅守する為の数々の「仮定の誤り」を支えているのです。
そういった根深いフィロソフィーの少ない中小企業にこそ大手を出し抜くチャンスはあるはずですが、こういった“代名詞”、“必殺技”の形だけを模倣する事で悦に入り、みすみすそのチャンスを逃してしまっているケースも多く見受けられます(個人的には、例えば中小企業が在庫評価の方法を、税務に適い簡便な売価還元法から、複雑なオペレーションを要する移動平均法に変えることが、「お金を生み出すスピード」にどの位影響しているのかを問いたいものです)。
往々にして最大の制約条件、まさに「言うはやすし」はここにこそあります※。
※.ボトルネックの探索と特定という意味では、驚くほど簡単とも言えます。
成功者のフィロソフィーが、かつて「お金を生み出すアイデア」であったことは、みなさまもご承知の通りです。
しかし、もしもその「聖域」が、今現在、従業員の余力を奪い、「お金を生み出すスピード」の足枷となっていたならば、それこそが数々の「どちらにも関係ない仕事」の根っこ、「お金を生み出す仕事」「顧客貢献」への最大の制約条件です。
私たちが提供するID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPeは、「市場のニーズに応える」事で競争相手との間に差を生み出す、まさに「お金を生み出す」ことに特化したツールです。
余力がなく「忙しい」からやらない、「難しい」からやらないと考える企業には、到底実行不可能な「競争相手にとって真似がし難い」という、うってつけの特性も備えています。
余力を生み出すアイデアである本稿と、お金を生み出すアイデアである「BiZOOPe」という私たちの処方箋に「仮定の誤り」は無いでしょうか?もしよろしければ、ぜひ皆様の職場で“査読”していただけましたら幸いです。