MOVIE-tonbori堂

インファナル・アフェアⅢ終極無間

MOVIE-tonbori堂Vol.66インファナル・アフェアⅢ終極無間

無間につづく地獄。その道に踏み込んだものは永遠に彷徨う

「インファナル・アフェアⅢ(無間道3)終極無間」 全ての謎が明かされ、Ⅰでのラウ・キンミンのその後が描かれた今作。物語の終末を迎えるのに充分な出来だった。 最近のトリロジーものとしては「ロード・オブ・ザ・リング」のように拍手をもって迎えられるか? それとも「マトリックストリロジー」のようにこきおろされるのか?というのがどっちかなのだが この「インファナル・アフェア」はⅠの撮影前にはⅢの構想がありⅡは撮影時に産まれたと言う。つまりは元々2部作前後編として構想されさらに深みをもたせるためにⅡが生まれたという事だ。(もっともヤンとキョンの関係やサムとのつながりに若干食い違いが出てきているが)輪廻や因果応報という仏教的な死生観が一本の筋を通しているこの映画。 ちょっと思ったのは「無間道」に限らず香港映画って儒教、仏教的価値観や思想がその根底にあるなとよく思うんだけどこの作品はそれが重要なベースになってきているという点ではそれが数ある香港ノワールの中でも作品に厚みを加えたなと思う。(他にも探せばあるだろうけど超級キャストを揃え映像もホンも凝った作品として)

「インファナル・アフェア」を観た人は是非観たほうがいい。 その上でⅡを観なかったという人はⅡを観てから観て欲しい。 全てが繋がっているのだから。 ヤン(トニー・レオン)の殉職から10ヶ月、一時的に庶務課へ回されたラウ(アンディ・ラウ)はあの日自分が射殺したもう一人の潜入マフィアだったラムの言葉により残りの潜入マフィアが気にかかっていた。「潜入したのは自分を含め5名」と。この半年自分の警察官の立場を危うくする彼らの存在を始末してきたラウ。そんなある日保安部のヨン警視(レオン・ライ)のオフィスで暗黒街での潜入捜査を行ってきたチャン巡査部長が自殺する。その現場に居合わせたラウはヨンが潜入では?と疑念を抱く。庶務から内務調査課に復帰したラウは早速ヨンを調べることに。自殺したチャンのデスクには死んだサム(エリック・ツァン)との会話テープが残されていた。そしてチャンと接触していた中国本土の大物シェン(チェン・ダオミン)そのシェンとヨンが一緒に写っている写真が残されていた。 ヨンに対する疑惑がますます膨らむラウは一人で保安部に監視カメラを仕掛けヨンを監視する。 一方生前ヤンを診ていたリー医師(ケリー・チャン)にも接近。彼女のPCからヤンのカルテを盗みだす。そしてヤンとリーの過去を垣間見それを自分に重ね合わせる。マフィアに潜入した警察官、警察に潜入したマフィア。善人だった男と善人になろうとした男。虚実がない交ぜになっていくその時、ラウは一体なにを掴もうとしたのか? というあらすじ

物語は殉職する前のヤンの行動と現在のラウの行動が描かれており少なくともⅠは必須。 そういう意味では一本の映画としては失格かもしれない。 しかし男達の矜持や誇りというものが描かれたこのシリーズ。 そういう意味ではこの映画もその部分はしっかり描き出されている。 そしてラウとヤン2人の無間道の決着がここで示されるという意味でトリロジーとして完結している。 事件後、ほとぼりを冷ますために庶務へ一時配属されたときから徐々に壊れていくラウ。Ⅰで妻のマリーが真実を知り家庭も崩壊。彼に残されたものは警官である自分。善なる者としての自分。そして時系列がヤンのその死までの行動をトレースし徐々にだぶっていく。その部分が2人の心情を描き出す。ほんとこの映画を観て良かったと思う。 今回新しく登場した保安部のヨン警視のレオン・ライ(黎明)不気味な微笑をたたえたエリートを演じておりなかなかに良かったがおいらの推したいのはシェンを演じたチェン・ダオミン(陳道明)彼の演じる本土の大物シェンがこれまた良かった。 とくに頭をこする仕草。これが非常に心に残る。己の道を全うする為運命に殉じながらもそれを乗り越えようとした戦友たちへの鎮魂。これにピンときたら是非確認して欲しい。 ここまでしっかりとトリロジーを結実させたアンドリュー・ラウ(劉偉強)とアラン・マック(麥兆輝)には拍手 そして2人の主演俳優トニー・レオン(梁朝偉)とアンディ・ラウ(劉徳華)にも。

※ブログに掲載したエントリを加筆修正しました|「インファナル・アフェアⅢ終極無間」 : web-tonbori堂ブログ 

監督 アンドリュー・ラウ|アラン・マック 脚本 アラン・マック|フェリックス・チョン

キャスト アンディ・ラウ/トニー・レオン/レオン・ライ/チェン・ダオミン/ケリー・チャン/アンソニー・ウォン/エリック・ツァン/チャップマン・トウ