唐津くんち四番曳山、呉服町『九郎判官義経之兜』
唐津くんち四番曳山、呉服町『九郎判官義経之兜』
■制作過程 ※制作期間:2020年10月~2021年7月
まずはこれまで同様、粘土型の骨組み作成。この曳山、図面がきっちり揃っていて上面図もあります。これがあると三次元化がとても楽になります。
いつもながら台車は慣れたもの。精度もだいぶ上達しました。ここまでほんの数日。羽目板の薄さも檜材粘着シートを使う事により薄く削り込む切削加工が飛躍的に向上♪
そうこうするうち鉢の粘土型完成。鉢の筋と星(縦方向の区分けと間の丸い突起)は貼り抜いたのか、後で可飾したのかを散々曳山内側の漆黒の部分に目をこらしたのですが判らん!多分他の飾り同様後付けと判断。従って鉢がツルツルです。眉庇は薄さで貼り抜けないので木型後付けとし、切り取りました。
まるまるした曳山って意外と油断すると歪んでしまいます。(鯛曳山もそうでした)外形スケールを厚紙で色々作り、当てては削り、当てては盛り、ちょっと大変でした。。。
面頬の粘土型です。図面では面頬はあまり詳しくなく、写真からの目コピを余儀なくされました。何度も何度も粘土を盛っては削り、盛っては削り、おかげで刃物もすっかりなまくらに。。。
さて問題です。これは何の工作でしょう?そうです、吹き返しです。古老が残された文書では、吹き返しは紙型か木型か不明との事。錣の繋ぎ目を写真で見るに木型と判断しました。アール付けは鳳凰丸の屋根で培ったノウハウを発揮。曲面台を厚紙で作りマスキングテープでコーティング。こうすると同じ曲面部材が出来上がります。
前立の龍の粘土型。まぁ小さい小さい。。。浦島太郎の顔ほどではないのですが、歯噛んでて隆々の形相なので大変です。ある程度造形し、どうせ貼り抜いた後の細工が必要なのでその時細工する事に。。。あぁ先が思いやられる。。。
粘土型への紙貼り、ほぼ完。鉢はつるりとしているのでがっちり貼りができました。が、面頬と龍は凸凹が多いので薄い。。。崩れない様抜いた後の強化が大変です。。。
ぱっかん♪抜けました。粘土型の防水には透き漆を使ってたのですが、余った青漆がもったいなかったので使ったら、異様な質感に(笑)
抜きが終わった張り子には本物同様、忠実に補強の木組みを施します。筋も外側に付け加えます。右の円状の物はヒノキ材をお湯に浸けて曲げを施した材です。眉庇も取り付け完。
能古見を飲みながら星を貼り付け。星をどう作るか?でさんざん悩み、型に粘土を押し込んだり、木を削ったりしてみたんですが、どうもうまくいきません。辿り着いた方法が、各径の円柱材の木口に粘土を半球状に盛り乾かしパリっと剥がすという手法。意外と上手くいきました。
鉢と面頬の補強材もだいぶできました。特徴的なバッテン状の筋交いも。しゅう君、OJGさん参考写真どうもありがとう♪
鉢の頂上には天辺と八幡座と呼ばれる装飾を取り付け。菊座とも呼ばれる菊文様は悩んだ挙句、プラモのリベットバーツを二段に並べ削って整形しました。
錣を構成する小札(こざね)をPCでデータ化して印刷。これをベースに厚く貼り込んて行く予定です。おー怖い怖い。。。
おせちをバックに。塗りを始めました。鉢はいい感じ♪ 金箔貼りが楽しみ。
問題の龍頭細工開始。鱗は切削加工が難しい小ささだったので、1枚1枚貼り重ね。まぁ大変。。。
頬面、吹き返しの部品群も塗りが進みます。まだ見えにくいですが、恐れていた吹き返しの三つ巴の造形、案ずるより産むがやすし、意外とうまく出来ました。
これまた難題、龍の腕と手の細工です。もはや手の細さでは鱗の細工は不可能。。。それっぽく仕上げれば良しとし針金にプラパンチ板を巻き鱗に見立てました。手は以前バードカービングをやってた頃の技、針金に糸を巻き上げる方式で仕上げます。
悩みに悩んだ髭の材質、刷毛の毛にするか?歯間ブラシをばらすか?金属線にするか?松葉にするか?、、、結果素直に竹材を限界まで削り植え付けました。いちおう四角錐にしている(つもり)です。
鍬形と、眉庇の飾り金具と鋲。鍬形は紙貼りだと強度に難があり檜材を縦目横目で合わせ貼り、限界まで薄く削りだし。飾り金具は天辺の菊座であみだしたプラモのリベットパーツを並べる方式。鋲は檜の丸材の小口を削って、切り出しました。写真は下地塗りの状態。
龍頭は、この複雑で細かい造形なので箔押しは不可能です。。。やむなくクレオスのスーパーゴールドで塗装。喉元だけでも箔押しするかな。なんか写真にして塗り残しの多い事に気づく。。。上塗りが必要だな。。。
眉庇を緑漆塗り。ここは艶消しでマットな感じになっています。漆の艶消しは難しく、私は同色の色鉛筆の粉を使います。微妙な配合で何回か失敗し、なんとか落ち着きました。そして箔押し開始。天辺の菊座はさすがに押せないので塗装。
吹き返しの防具板。ここも三つ巴紋と鋲は箔押し不可能で塗装。横に突き出た棒を鉢に差し込み固定される仕組みです。
眉庇に飾り金具装着。細工の都合上ひと回り大きいですが、慣れればいい感じ♪ 星、篠垂れ(真ん中の剣状の金具)の可飾、箔押し完。
そして前立ての龍頭、鍬形、吹き返しを仮組。我ながらいい感じ♪ ただ錣の恐怖が改めてゾクゾク。。。まぁ避けては通れない。頑張れ俺!
箔押しで判明したのは、金箔の色と、塗装の色の食い違い。クレオスのスーパーゴールドをやめ、タミヤカラーエナメル:ゴールドリーフを採択。それでも違和感があるので調色の為テストピースで色目を見ます。まだ試行錯誤中。。。
教育委員会採寸図面で錣の小札(こざね)の枚数を数え、大きさも合わせていたのですが、提供いただいた写真にて枚数が大幅に違う事が判明。。。合わせる為、データを縮小。粘土型に張り付けてみて大きさ調整作業です。ふた回りぐらい小さくなった。。。神様は乗り越えられない試練は与えない!頑張れ俺!。。。
上から錣一段目の小札切り出し、本塗完。失敗したのは、印刷の裏表間違って、仕上げがとんでもなく面倒に。。。次から反転印刷せねば。。。
そういえば、台車の状況を掲載してませんでした。台車はちょっとほっぽり気味ですが、車輪がはまり、梶棒も装着完。地味ですが鞘柱の締め付け金具が超難関。なぜかというと、巻いてあるだけでなく、ボルトで締め上げる構造の再現がまぁ大変。。。なんとか新しい技法を編み出しクリアしました。
まずは吹き返し。吹き返しの錣は小札(こざね)が接着してあります。従って縅毛(おどしげ)を通すのみ。下段は防具板と組み合わせたもの。
錣の小札作成状態。枚数が半端ないので、この様に角材に両面テープを貼り、なるべく多く並べ、下地塗り、漆塗り、箔押し、止め漆を施します。これは止め漆の時の状態。
錣を鉢に固定する為の飾り鋲。なんと面倒くさいことに全て菊座で中心もつるつると格子状の二種類が、、、心材は金色の釘、花弁はプラモのリベットパーツ、格子状加工は織目が大きいテーピング素材。まあいい感じに♪
そして小札を編んでいきます。一段目と二段目。実物同様、糸で仮編みした状態。実物は最下段を除き数枚一組で、棒に留め組み合わせる形なのですが、このサイズだと逆にいびつになってしまう為全て編み合わせる形にしました。
上段は一段目、二段目を縅毛で編み合わせた状態。下段は三段目まで。下段にいくにつれ、カラフルな縅毛が入ってきます。縅毛は悩んだ挙句、刺繍糸を使用。まぁ、こんなもんでしょう。。。
最下段。ここまでくるとフル装飾。配色が良いですね♪ ここまでの苦労が癒されます。
そして錣完成♪ と思いきや、よく見ると最下段の縄目が逆!シカトしようかと思いましたが、泣く泣くやり直しました。。。
面頬と咽輪。この様に錣も下段にいくにつれ小札の枚数が増えていきます。従って赤い縅毛で繋ぐ際、何枚かに一回同じ穴に通す必要が。まぁこれが間違う事、何度やり直したか。。。最終的にはごまかしごまかしでしたけどね。。
錣を鉢に取り付け。編みが少し緩いかな?と締め上げてたら、きつきつに。。。緩めながら取り付けるのに苦労しました。
心棒を差し、台車に仮組。後の図面と比較しても良い感じ♪ いいぞ、いいぞ、わくわく♪
この紐が付いた輪っかは『笠標の環』と言うそうです。紐の結び方は『総角(あげまき)結び』むずっ!
前立ての龍頭、各部彩色、眼を入れ、髭、腕周りの炎、等加飾。髭は真鍮線、炎は銅板切り出し。え?でかすぎ?これが俺の手作業限界っす。。。
面頬の髭は最後の難関。素材を何にするか?さんざん悩みトライアルを繰り返し最終的にシンク用ストッキングゴミ袋を解き棒に巻付けボンドで端を固め、、、なんとかそれらしく。
台車の町名は、新町飛龍で経験済み。迷わずデカール。
幕と幟。PCでイメージ作成、そしてアイロンプリント予定。いつも結構苦労するのだが、直線が多くすんなり♪ あとはどれだけ柔らかく仕上げるか。