まず、介護に関わる諸制度の実態とどのように認識されているかを簡単に見ておきます。(厚労省雇用環境・均等局職業生活両立課 「改正育児・介護休業法の解説」(月刊社労士2025年3月 号 pp.11~17を参考にしました)
*介護をしている雇用者において、「介護休業等制度の利用あり」はわずかに11.6%とのこと(総務省「令和4年就業構造基本調査」)
*介護休業期間は介護に専念するための期間という誤解がある
*介護・看護を理由に離職した者が、離職前に利用したかった介護両立支援制度等の調査
介護休業制度 約6割
介護休暇制度 約4割
*どのような職場の取組があれば仕事を続けられたかに対し「仕事と介護の両立支援制度に関する個別周知」とする回答は5割強にのぼる
*「いつ発生するか予測できず」「いつまで続くかわからない」という特徴から、介護に直面する前に準備や心づもりをすることなく、介護に直面した後は自らが介護に専念するという状況に陥る場合が多い
①介護離職防止のための個別周知・意向確認
家族介護の必要性に直面したとの申出をした労働者に対し、事業主が介護両立支援制度等に関する情報を個別に周知し、労働者の制度利用に関する意向を確認しなくてはなりません(義務)
なお、対象となる「家族」は配偶者・父母・子・祖父母・兄弟姉妹・孫・配偶者の父母を含みます。また同居しているかどうかは関係ありません。
②介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供
[労働者が40歳に達する日の属する年度]または[労働者が40歳に達した日の翌日から1年間]に於いて、労働者に対し介護両立支援制度に関する情報提供を行わなければなりません(義務)
(40歳の年齢設定に関しては、介護保険制度の第2号被保険者として介護保険料を支払い始める年齢であり、かつ、親の介護等が生じうる年齢であるためとされています)
情報提供が望まれる具体的な内容は以下の通りです
◾介護休業制度は、介護の体制を構築するため一定期間休業する場合に対応するものであること
◾介護休暇制度は、介護保険の手続や日常的な介護のニーズにスポット的に対応するためのものであること(常時介護を必要とする状態にある対象家族の通院の付き添いなど)
◾所定労働時間の短縮等の措置、その他の仕事と介護の両立のための柔軟な働き方に関する制度は、日常的介護のニーズに定期的に対応するためのものであること
③介護離職防止のための雇用環境整備(以下のどれかを一つを講じれば義務を果たすことになります)
(1) 介護両立支援制度等に関する研修の実施
(2) 介護両立支援制度等に関する相談体制の整備
(3) 自社の労働者の介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
(4) 自社の労働者への介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
④介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
労使協定の締結により介護休暇を取得できる対象から除外できた(1)(2)の労働者のうち(2)の要件が改正により廃止されます
(1)週の所定労働日数が2日以下の者
(2)継続雇用期間6か月未満の者
⑤介護のためのテレワーク導入(努力義務)
⑥[常時介護を必要とする状態に関する判断基準]の見直し