(2024年9月22日作成)
2024年11月に施行されるフリーランス新法(あるいはフリーランス保護新法)は一応「新法」と通常呼ばれていますが、実は、まったく新しい法律というわけではありません。
これまで独占禁止法や下請け法がフリーランスとの取引に適用されてきた経緯があり、2021年の「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省)ではそれらの法律によって事業者が遵守すべき事項などが定められていました。
新法でもそれらが踏襲されているのです。
「フリーランス」とは実店舗を持たず、従業員も使用しない、自営業主などを指します。自身の経験や知識、スキル等を活用して収入を得る人です。
おそらく多くの人がフリーランスと聞いてイメージしやすいのは、フードデリバリーサービスなどのいわゆる「配達員」かもしれませんが、その職種は非常に多岐にわたっています。
思いつくままに上げておくと、「ITエンジニア」「You Tuber」「翻訳家」「通訳」「コンサルタント業」などなど多種多様な職種が含まれています。
私のように士業(社労士、司法書士、税理士、公認会計士、弁護士等)で独立開業している人たちもフリーランスに該当する場合があります。
① フリーランサーの責任ではないのに、成果物の受け取りを拒否すること
例えば、発注者側のミスで必要以上に発注した場合、何らかの理由をつけて物品等の受取りを拒否することはできません
② フリーランサーの責任ではないのに、報酬額を減額すること
例えば、想定していたよりも少ない作業量で成果物を完成できることが分かったから、などという理由で報酬額を引き下げることはできません
③ フリーランサーの責任ではないのに成果物を返品すること
例えば成果物を購入した客が返品してきたことを理由にフリーランサーにそれを返品することはできません
④ 著しく低い報酬額を不当に定めること
いわゆる「買い叩き」です。発注者がフリーランサーに対し著しく低い報酬額を強いることはできません。言いがかりをつけて支払いの延期・減額を要求したりすることなども含まれます
⑤ 正当な理由なく、発注者の指定する物品の購入・サービスの利用を強要すること
発注者の立場の優越性を利用して不当な条件を押し付けることにより、不要な物品購入やサービス提供を強いることはできません
⑥ 金銭・サービス・その他経済上の利益を提供させること
協力金を負担させたり、発注内容にないサービス(システムの追加開発などなど)を提供させたりすることはできません
⑦ フリーランサーの責任ではないのに、内容変更ややり直しをさせること
フリーランサーが契約に基づき業務を遂行した場合、やり直しを求めることはできません
① 書面等による取引条件の明示
業務委託をした場合、書面または電磁的方法(電子メール等)により、「業務の内容」「報酬の額」「支払期日」などの取引条件を直ちに明示しなくてはなりません
② 報酬支払期日の設定・期日内の支払
発注した物品等の受領日から60日以内のできる限り早い日に支払期日を設定し、それに則って報酬を支払わなくてはなりません
③ 7つの禁止行為 (上記の発注者がやってはいけない行為)
④ 募集情報の的確表示
⑤ 育児介護と業務の両立に対する配慮
6か月以上の業務委託につき、育児介護と業務の両立を図るよう、申し出に応じ必要な配慮をしなくてはなりません
⑥ ハラスメント対策
ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化・周知・啓発等
⑦ 中途解除等の事前予告・理由開示
6か月以上の業務委託を中途解除したり更新をしない場合には、原則30日前までに予告し、請求があった場合は理由を開示しなくてはなりません
原則的に労災保険が適用されるのは企業に雇われる従業員(アルバイトや契約社員なども含みます)です。労災法は基本的に労働基準法における事業主の災害補償責任を担保するものだからです。
そのためフリーランスは、仕事で怪我をしたり病気になったとしても、労災保険で補償を受けることはありません。
ただし、労災保険の特別加入という制度を利用すれば、フリーランスでも労災に加入できる場合があります。
「加入できる場合がある」というのは、現在(2024年9月)の時点では加入可能な業種が限定されているからです。
しかし2024年11月から業種の限定は解除され、要件に該当するあらゆる業種のフリーランスが労災保険に特別加入できるようになります。
より具体的に特別加入の対象業種をご紹介しておきましょう(厚生労働省リーフレット「フリーランスの皆さまへ」からの引用です)
・翻訳、通訳(外国書籍の翻訳、海外出張時の同行通訳)
・講師・インストラクター(ピアノ教室、スポーツジムのインストラクター)
・デザイン・コンテンツ制作(広告用のイラスト作成、集計プログラム作成)
・調査、研究、コンサルティング(商品売買のための市場調査)
・営業[商品(保険、電子機器等)の営業代行]
以下に列挙する事業・作業に従事する人はそれぞれの特別加入団体を通じて加入します。
それ以外の事業の人は今後設立予定の特定フリーランス事業の特別加入団体を通じて加入申請を行うことになります。
・個人タクシー業者、個人貨物運送業者など(いわゆるフードデリバリーサービスなど)
・建設業の一人親方等
・漁船による自営漁業者
・林業の一人親方等
・医薬品の配置販売業者
・再生資源取扱業者
・船員法第一条規程の船員
・柔道整復師
・創業支援等措置に基づく高年齢者
・あんまマッサージ指圧師、はり師、灸師
・歯科技工士
・特定農作業従事者
・指定農業機械作業従事者
・国または地方公共団体が実施する訓練従事者
・家内労働者及びその補助者
・労働組合等の一人専従役員
・介護作業従事者及び家事支援従事者
・芸能関係作業従事者
・アニメーション制作作業従事者
・ITフリーランス