( 2025年2月27日作成 /3月25日更新)
変形労働時間制の特徴を表にまとめたものです。以下の記事を読む際の参考になさってください
労働基準法では法定労働時間として1日8時間、1週40時間の制限が定められています。
ですから所定労働時間(会社で設定する労働時間)はその枠内に収めなくてはならず、1日の労働時間を9時間とか、1週の労働時間を45時間と設定することは原則的にはできません。
勿論36協定を締結して社員に残業してもらうことは可能なのですが、あるシステムを導入することによって残業時間なしに法定労働時間の枠を超えて労働させることができます。
このシステムを使えば1日9時間、1週45時間といった所定労働時間を設けられるのです。
これが変形労働時間制で、一定期間の平均労働時間が法定労働時間に収まるようにすることで、特定の日・週の労働時間が法定の枠を超えることを認めるものです。
ここでひとつ確認しておきたいことがあります。
変形労働時間制を、残業代を支払わずに、定額で何時間でも従業員を働かせることができる制度だと勘違いをしている事業主が少なくない、という話を聞いたことがあります。
そんなことがあろうはずがありません。
規定の時間を超えて労働させれば当然に残業代は支払わなくてはなりません。
もし従業員の方で残業代を正当に受け取っていないと感じている方がいれば、社会保険労務士会や弁護士に相談なさった方が良いでしょう。
このサイトの時間外労働と割増賃金のページにも、変形労働時間制における残業時間・残業代の計算方法を記しましたが、何せ計算が複雑ですので。
[概要]
1か月以内の一定期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(44時間)を超えない範囲内で、特定の日または週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
[職種]
1か月以内の期間内で業務に繁閑の差がある会社で多く採用されます。
また1年単位の変形労働時間制では1日の労働時間が最長10時間に制限されています。それに対し1か月単位ではそういった制限がないため、夜勤があり長時間勤務を余儀なくされるホテル業・タクシー業・病院などに向いていると言えます。
[導入手続]
・就業規則に定めておけばこの制度を採用できます。
労使協定を締結して採用することもできますが、その際は労働基準監督署に届け出る必要があります。
・就業規則、あるいは労使協定に定める内容は以下の表のとおりです
[メリット・ディメリット]
メリット
・業務の繁閑に合わせた労働時間を設定できるため、業務効率が上がります
・人員の配置が効率的にできるようになり、残業代の削減につながります
・労働者の側から言えば、メリハリの利いた働き方ができるようになります
・ライフワークバランスを重視した働き方を進めることができます
ディメリット
・労働時間の法的な遵守が求められるため、労働時間の管理が複雑になる可能性があります
・同時に、残業をさせた場合の計算も煩雑になる恐れがあります(残業代の計算については時間外労働と割増賃金 のページに詳しい説明があります)
[概要]
時間外労働・休日労働を減らして総労働時間を短縮し、労働者のライフワークバランスに資することを目的として作られた制度です。1か月超~1年以内の期間を平均して週当りの労働時間が40時間を超えないことを条件に、繁閑に応じ労働時間を設定できるようになります。
[職種]
季節的な要因で繁閑がある業務、特定の月に業務が集中する職種などで多く採用されています。例えば、季節的商品の製造、デパート、建設業、ホテル業などで導入されることが多いようです。
参考までに厚生労働省の調査による、1年単位の変形労働時間制を採用している職種別上位5つを上げておきます(平成30年就労条件総合調査 労働時間制度)
鉱業、採石業、砂利採取業 66.2%/建設業 56.1%/製造業 51.2%/運輸業、郵便業 50.1%/教育、学習支援業 43.0%
[導入手続]
・導入には労使協定を締結し、労働基準監督署に届ける必要があります。1か月単位変形の場合とは異なり就業規則に定めるだけでは導入できません
・労使協定に定める内容は以下の表のとおりです
*対象期間内の各日・各週の所定労働時間を定める必要があります。
対象期間の全期間にわたり定めなくてはならないのですが、対象期間を1か月以上の期間に区分する場合には以下のように定めることができます。
・最初の期間については労働日、労働日ごとの労働時間
・最初の期間を除く各期間の労働日数、総労働時間
例えば4月24日からの一年間を対象期間とし、その最初の区分を4月24日~5月23日とした場合の所定労働時間を以下のように定めます。
4月24日 8時間
4月25日 10時間
4月26日 10時間
4月27日 休日
・・・・・・
5月23日 8時間
以上のように日付とその各日の労働時間を明らかにします。
それ以降の各期間に関しては:
5月24日~6月23日 労働日数22日間/総労働時間176時間
といった具合に定めていくことになります。
各期間の初日の30日前までに書面で労働者に通知します。
[制約]
一年単位の変形労働時間制では、労働時間に関して幾つかの制限が設けられています
(1) 対象期間が1年未満の場合は以下の計算式により上限が算出されます
280日×対象期間の暦日数/365日(366日)
但し対象期間が3か月以内の場合制限はありません
(2) 小数点以下切り上げ
(1日の所定労働時間×7日-40時間)÷(1日の所定労働時間×7日)×365日(366日)
[メリット・ディメリット]
メリット
・繁忙期の所定労働時間を8時間超~10時間に延長できるため残業代を削減できます
・繁忙期に労働時間を延長した分、閑散期の所定労働時間を短くすることになるので、労働者はライフワークバランスを重視した生活を営むことができるようになります
ディメリット
・月ごと・週ごと等に労働時間が変わり、所定労働時間が一定しないため、労働時間の管理が複雑になります
・手続が複雑になります。例えば、一か月単位の変形労働時間制と異なり、必ず労使協定を締結しなくてはなりません。
・残業代を削減すれば労働者の収入が減ることになり不満が出る可能性があります。働き方改革の動向なども踏まえ、労働者と話し合い、理解を求める必要があろうかと思います。