theory

  • 夏休みの自由研究と、大学院生・研究者の研究は何が違うのでしょうか? 「とりあえず数えました」「こんなことを観察しました」ということは、本格的な研究とは言えません。研究には、研究対象としてある動物を選び、アイディアを検証する作業です。

    • 一般性のある理論・仮説に興味があるので、研究対象の自然史(ナチュラルヒストリー)を知る必要はない

    • 自分の研究対象を溺愛しているので、他の種にも当てはまるような理論に興味がない

    • 動物をぼーっと見ていたい

  • これらは研究としては不完全になりがちです。理想は、

    • 研究対象の生き様全体に対して深い理解をもち、

    • 研究分野(例:行動生態学)の理論を十分理解し、

    • 研究対象の観察経験から、自分なりのクエスチョンを見つけ、検証する ということだと思います。

  • これらの点の、どれもが欠けないような研究を目指してほしいと思います。そのためには、研究対象をよく観察し、教科書・論文をよく読み(一日一本)、そして自分の観察経験と知識から、頭を使って、過去の報告と自分がみているものに違いはないか? 正しいといわれている理論やその仮定は本当に正しいか? 面白い実験はできないか? 他の説明可能性はないか? などを考えてみるといいでしょう。

  • 実際には、観察をはじめて、論文を読んで、クエスチョンを見つけて、、、というのは、大学院生には難しいと思います。お勧めしていることは、これら三つを同時進行で、しかもお互いに行きつ戻りつする方法です。ちょっと面白い観察をしたらば文献を調べてみる、ゼミで聞いたことが自分の研究対象にあてはまらないかどうか調べてみる、などなど。こういうことを繰り返していくうちに、クエスチョンが固まってきますし、動物を見る目も養われてきます(難しい言葉を使うと、このような往復作業をabductionといいます。帰納 inductionと演繹deductionの中間のような姿勢を指します)。

  • 理論的に考えるためのヒントです。

    • 変数はなにを取っている? 研究でどういう変数を取っていますか? 5項目の行動? 個体の性? 順位? 血縁?

    • 変数間の関係のなかで、理論的に意味のあるものはどれ? たとえば、10の変数をもっていたとしたらば、「○●が■□を予測する」という組み合わせは45通りあります(XとYの位置を区別したらば90通りになります)。では、それらすべては意味のあるものでしょうか? そうではなくて、どの変数とどの変数が、どういう仮説のもとでどういう関係にあると予測されるのか、ということを考えてみてください。そうすると、おのずと、どの変数とどの変数の関係をみるべきかが分ってくるでしょう。