フィールドワーク学

イギリスの人類学者に声を掛けていただき、文化人類学者・社会人類学者・自然人類学者・霊長類研究者とのワークショップに参加し、フィールドワークという手法自体についての研究をふたつまとめました。ひとつは、フィールドワークの「作法」について、もうひとつはフィールドワークにおける倫理についてです。


(1)フィールドワークの「作法」 (Kutsukake 2011)

フィールドワークをしていると、研究対象をどのように理解するか(したいか)という姿勢に、文化的、個人的な背景が強く投影されることに気がつきます。日本人によるアプローチは、いわゆる西洋のアプローチとちょっと違うのではないか? と、研究を進めるうちに、また留学や海外の研究者と交流するうちに思うようになりました。そのような意見をまとめたものです。


(2)フィールドワークにおける倫理 (Kutsukake 2013)

動物のフィールドワークをしていると、さまざなま倫理的問題に直面します。保全、コミュニティーとの関係、行政機関との交渉などなど。飼育動物を対象にした倫理規定と比べると、野外調査における倫理は、議論されることが少ないテーマです。フィールドワークで直面する倫理問題の構造、ニホンザルの保全をめぐる事例をまとめ、どういう問題点があるのかを整理しました。


今後、この方向の研究を継続するかどうかは未定ですが、いくつかの宿題はあると思っています。(1)については、他のアジア諸国はどうなのか? (2)霊長類以外のフィールドワークではどうなのか? などです。また、日本の動物行動学の歴史についても興味を持っています。


Kutsukake N 2013 Complex and heterogeneous ethical structure in field primatology. In: Ethics in the field: contemporary challenges (ed) MacClancy J. & Fuentes A. Oxford & New York, Berghahn. p. 84-97

Kutsukake, N. 2011. Lost in translation: field primatology, culture, and interdisciplinary approaches. In: Centralizing fieldwork: critical perspectives from primatology, biological anthropology and social anthropology. (ed) MacClancy J. & Fuentes A. Oxford & New York, Berghahn. p. 104-120.