Le Petit Prince
Le Petit Prince
日本では「星の王子さま」という名で知られている。原作はフランス語で書かれ,題名は「Le Petit Prince」である。直訳すると「小さな王子さま」である。サンテグジュペリのこの作品を最初に日本語訳した内藤濯の本では題名を「星の王子さま」と名付けた。確かに「小さな王子さま」より「星の王子さま」の方が詩的な感じがする。名訳である。しかし個人的には「星の王子さま」より「Le Petit Prince」である。そこには微妙な違いがある。
「Le Petit Prince」という表題にこだわるには理由がある。何故なら日本語訳があるのを知らず17歳の時フランス語の原文のままで読んだからである。当時所属した高校では第2外国語としてフランス語を学んだ。私は決してフランス語が得意ではなかった。むしろ避けていた。しかし,授業で「Le Petit Prince」を読む事になった。最初は読むのが苦痛だった。辞書と首っ引きである。しかし,途中から話しに引き込まれた。夢中になった。
まずフランス語が美しい。日本での「星の王子さま」は子供用に訳されたためか童話調であるが,原文は詩のような響きがある。文章が韻を踏んでいる。そして文章は短い。その雰囲気を伝えるためどうしても日本語訳は文章が長く,くどくなる。
内藤濯の訳が駄目だと言いたいのではない。後で内藤濯訳の日本語版を読んだが実に素晴らしい翻訳である。しかし日本語訳では意味が固定されてしまう。原文は詩のような文章なので,その解釈は自分次第で変えられる。自分にとって一番良い解釈ができる。
冒頭に「星の王子さま」と「Le Petit Prince」では微妙な違いがある,と記した。「星の王子さま」では遠い星の王子さまで距離感を感じてしまう。一方「Le Petit Prince」は自分の周りの何処にでもいる子供のような感じがする。サンテグジュペリはこの本を親友の Leon Werth の子供の頃に奉げると書いている。しかし実際の王子さまのモデルはもっとサンテグジュペリの近くいた人だったのではないかと思う。こんな感じを持つのは私だけだろうか?
作者のサンテグジュペリは小説家として著名であるが,本職は飛行機の操縦士である。飛行機の操縦士の目から見た人間の営み,地球,空,夜の星々,それらを題材にした幾つもの名作を残している。昔の飛行機は今と違い,性能と安全性に劣り,墜落などの危険が常に付きまとっていた。実際,飛行機が故障して砂漠に不時着し,一命を取り留めた。その経験から書かれたのが「Le Petit Prince」である。
サンテグジュペリは常に死の覚悟をしていたと思う。だから自分にとって大切なものは何か?いつも考えていたと思う。そして1944年ナチスとの戦いで撃墜されて亡くなってしまう。「Le Petit Prince」はサンテグジュペリの死後発行された遺作である。
サンテグジュペリは「Le Petit Prince」を読んだ読者に様々な問い掛けをしているような気がする。その問い掛けは,例えば次のようなことかもしれない。
自分の人生で大切なことは何なのか考えていますか?
あなたはそれをいつも大切にしていますか?
同じ気持ちで時間を共有した人との大切な時間を大事にしていますか?
子供の時の大切なものを忘れてはいないだろうか?
あなたは今でも自分の子供の時のことで大切にしていることはありますか?
それを大切に心に抱いて生きてきましたか?