読書百遍意自ずから通ず
この言葉の意味は,難しい書物も何度も繰り返して読んでいるとその内容が自然に解かってくるという意味です。百遍は100回のことですが,100回にこだわることはなく,繰り返し何べんもということです。
この言葉を教えられたのは,社会人になり1年程が過ぎた頃,職場のk先輩からでした。k先輩は有名国立大の大学院卒業で,私より6歳ほど年上でした。仕事には厳しく周りの人は何となく避けていました。上司にも若手技術者にも厳しかったです。勉強家で知識も深く広かったので,厳しく言われてもk先輩の言い分が正しいので誰も文句は言えませんでした。しかし,私には何故か親しく接してくれました。
ただ,今考えると親切だったからではなく,発達障害が少し残り,厳しく指導してもぽかんとして,反応が鈍く,とんちんかんな事を言う私には厳しく言っても効果がないと判断したからではないかと思います。
あまり本を読まず,同じような質問を繰り返す私に,こいつには構いきれないと思ったのか,k先輩が言ったのは上記の「読書百遍意自ずから通ず」でした。早い話しが「お前は馬鹿だから1回読んだけでは本の内容が理解できないから,100回読め。そうすれば少しは本に書かれている内容が解かるだろう」ということでした。
k先輩は半ば冗談でこの言葉を言ったようですが,根が単純な私はこの言葉をまともに受け取りました。数学が得意ではない私が相対性理論の数式を100回見ても理解はできないと思いますが,仕事に必要とされる程度の技術書なら100回読むと確かに大凡は理解できました。英語も不得意ですが,一般的な文献ならば100回も読むと完全ではありませんが,辞書無しでも何となく意味が解かるようになってきます。
当時仕事(構造解析・設計)ではこれまでの手動による計算(計算尺や電卓など)からコンピューターを利用することが始まろうとしていました。しかし,上司や先輩の殆どがコンピューターを使ったことがなく,どうしてよいか解かりませんでした。そこで白羽の矢を立てられたのが私でした。たまたまほんの短時間でしたが大学時代にコンピューターに触れており,若いので何とかなるだろうとのことだったようです。
ただ,上記したように上司や先輩はコンピューターの経験が無いので,指示を仰ぐことも,相談することもできません。そこで,頼ったのがコンピューター関連書籍でした。しかしコンピューターが一般的に利用されるようになった黎明期でもあり,一部は英語の書籍でした。
夢中でこれらの書籍や資料を読みました。無論全てが理解できた訳ではありません。しかしこれらの書籍や資料を読み解く内に,何となくプログラミングの知識ができてきました。全くの自己流ですが,コンピュータープログラムを作成し,仕事に使ってみました。最初のプログラミングは3次元方程式を解いて,道路計画の最適解を求めるものでしたが,以外に短時間(数日)で解を出しました。前記したような手動の計算方法では相当時間が掛かるでしょう。おまけに手動では条件が変わると最初から計算し直さなければなりませんが,コンピューターなら1回プログラミングしておけば,条件が変わっても再計算は数分です。
入社1年を過ぎてできが悪くて,あまり使い物にならないと周りから思われていた自分が誰も社内できないことをやってのけました。周りの目も違います。これは大きな自信になりました。技術者として落ちこぼれかかっていた身が何とかつながりました。
k先輩から貰った言葉は私の運命を左右する重要な言葉でした。これ以降様々なことでk先輩の言葉が役に立ちました。とても有りがたいことです。これから数年後,私は会社を退職し,k先輩と一緒に仕事をする機会はなくなりましたが,良い先輩にめぐり会えたと感謝しています。
2010年以降,スマホが身近な存在となりましたが,残念ながら私の周りにはスマホのプログラミングができる者はいません。そこで当時の経験を思い出し,独学でスマホのプログラミングにも挑戦しました。今は有りがたいことにネットでプログラミングの様々な情報が手に入れられます。お陰で数日で自分にとって役にたつアプリの開発ができました。私のスマホにはこの自作アプリが入っています。
あなたも仕事上の困難に直面した時「読書百遍意自ずから通ず」に挑戦してみませんか?きっと困難な問題が解決できると思います。今の時代,読書だけではなくネット上の情報も参考になることがありますので知識を幅広く収集してください。
なお,100回繰り返すとは,ボーと100回繰り返すのではなく,自分の中で繰り返し反芻し,自分なりの理解を導き出すという意味ですので,お間違えのないように。