第6回 百田義治 先生(経済学部)

第6回インタビューは、経済学部の百田義治先生。

2019年3月で定年退職なさる百田先生は、2019年2月17日に最終講義を行われました。

これまでたくさんの学生を駒澤大学から社会へと送り出して来られた百田先生に、現在の駒大生への思いなどを伺いました。

Q:百田先生のご専門は「経営学」とのことですが、先生が経営学を学び始めたきっかけは何ですか?

A:それは、大学時代のゼミです。

1年生の時に基礎ゼミ(駒大でいう新入生セミナー)でたまたま割り当てられた先生がとてもいい先生で、2年生でその先生のゼミを選んだら、先生の専門がたまたま経営学だったんです。4年生になった時に、友達に勧められて安直に大学院に行くことを決めて、面白くなって博士課程まで上がったらもう潰しが効かなくなって、大学の先生にでもならないと食べていけないと思って……(笑)

一般的にゼミ・少人数クラスというのは、「大学でどう勉強するのか」という意味で非常に重要です。「巡り合わせ」というものもありますが、僕の場合はたまたま先生とゼミに惹かれて、大学院にも行こうと思ったんです。紆余曲折あるけれど、それで今に至っています。


Q:百田先生がそのゼミに惹かれた一番の要因は何だったんですか?

A:人間関係と人柄です。いろんな先生によって教育方法も様々だと思うんですけど、僕の先生は、勉強しろとは言いましたが、何をどのように学ぶべきかなどについて何も言わない先生。今、自分が教員になって思いますが、「ゼミ生に何も言わないでいる」ってすごく辛いんですよ。でもそこでじっとこらえて、最後に一言言うんです。研究者って自分で勉強するのが筋だから、先生が「あれしなさいこれしなさい」と言うのではなくて、じっとこらえて見ている中でたくさんの人たちが育つ。そんな先生でしたね。

Q:百田先生の「理想の先生」像も、そういう先生ですか?

A:人は「こういう生き方をしたいな」と思う人に出会えると、その人のような道に進むんです。そんな風に学生にいかに思ってもらえるかが決定的なことではないかと思います。

駒大にもいい先生がたくさんいます。私自身も駒大を40年間辞めずにやって来たのは、「駒大っていい大学だな」って思っているから、ということが大きいんですよね。これも巡り会いですね。

Q:今の駒大生をみてどう思いますか?

A:すごく「人が良い」です。そういう面でいえば大好きですけど。いつもゼミ生に言うのは、駒大卒業生は、人柄としてはすごくいいけどリッチにはなれないぞと(笑)

もちろん、素晴らしいビジネスパーソンとして活躍している駒大卒業生もたくさんいます。だけど現役生について総じて言うと、「もっと貪欲に、視野を広く」ということ。世の中のことや社会の動きに敏感になってもらいたい。僕の専門が経営学だからかもしれないけど、新聞やニュースを見たりして世の中がどういう風に動いているかを雑学でいいからもっと知ってほしいんです。

就職するであれ起業するであれ、学生の皆さんにはこれからチャレンジがいっぱいあります。でもそれをチャンスとして掴めるか掴めないかは人によって分かれるんですよね。掴めるチャンスを増やすためには「世の中の動きを的確に捉えておく」ことが必要です。どんなにすごい考え方を持っていても、時代的な背景がなければただのアイディアで終わってしまうので、知識に対して貪欲に敏感に生きてもらえたらと思うんです。

Q:具体的には、どのようなことに取り組んでいけばよいでしょうか?

A:うまく大学を利用してください。いい授業がいっぱいあるのに、何で真面目に受ける人が少ないんだろうと思います。多くの卒業生が、社会に出てから「経営学はもちろんですが、どんな科目でももっと勉強しておけばよかった」と言うんですよ。だから、せっかく恵まれて現役でいる時に、貪欲に勉強してほしいです。

ビジネススクールやアメリカの学生は、自分で稼いだ給料・奨学金・銀行ローンを使って勉強しているので必死です。簡単に言えば「前から教室が埋まって行く」んですけど、日本は逆で後ろからなんですよね。本当にもったいないですよ。

そんなわけで、嫌われるのは分かっているんだけどついつい私語する学生には「真面目な学生の時間を盗むな」と大声で叱ってしまいます。


Q:学生のことを心配しているからなんですね。学生へのオススメ本はありますか?

A:学生には、古典を読んでほしいですね。

経済学部生だったらマルクスの「資本論」でも、ケインズの「一般理論」でも、アダム・スミスの「諸国民の富」でも何でもいいので、原典をきちんと読みなさいということです。

ノーベル賞を受賞した本庶佑先生の「教科書に書いてあることが正しいとは限らない」という言葉があります。教科書や本というのは、書いた僕らの頭の中のバイアスを通っていますから、基本的には僕らの考え方なんですよね。だから、若い学生に大事なことは「原典を読む」ということ。自分の考え方で読んでみるといろんなものを感じ取れるのではないかと。

夏目漱石の本を小学生の頃に読むのと今読むのとでは感じ方が違うのと一緒で、経済学の古典というのも大学生の時に読むのと30~40歳になってから読むのとでは全然読み方が違うと思うんです。大学生には大学生の読み方があると思うので、ぜひぜひ僕は大学生に古典を読んでもらいたいと思っています。古典を精読すれば、後の本は乱読でいいんですよ(笑)


Q:学生を引き込むために行っていることはありますか?

A:うまくいく時といかない時がありますが、学生の反応や顔色を見て授業をしています。学生の頭に入っていきやすいように、抽象化された理論だけでなく、常に現実の話と結びつけて話すようにしています。歴史的なことを話すときでも「現在で言えばトヨタやユニクロが……」と例えて話をします。

学生に「なぜ?」と思わせることが大事だと思って努力しています。大学の授業は全て何らかの意味では役立ったり為になるものですので、そのきっかけをどう与えるか学ぶかがすごく大事だと思っています。


Q:ありがとうございます。百田先生はこの3月で駒澤大学をご退職されるとのことですが、最後に駒大生に一言お願いします。

A:時間を大切にして、目標設定をして頑張りなさい。大学時代の過ごし方も経営学的に学べるし、戦略論です。

20歳は一生に一度だから、遊ぶのは大いに結構。学ぶことも大いに大事です。

Q:駒澤大学の学生に向けて、温かい言葉をありがとうございました。また駒澤大学に遊びに来てください!


※百田先生の最終講義(2019.02.17)のご案内はこちらです。

聞き手:学生FDスタッフ

経済学部3年 山田

経済学部3年 荻野

GMS学部1年 岩原