第12回 深見泰孝先生(経済学部)

第12回は、経済学部の深見泰孝先生にインタビューさせていただきました。

大人数の授業を担当しながら、吹奏楽部の部長でもある深見先生。お忙しい中でも、授業は「初心者にもわかりやすい」と学生から評判です。

そんな深見先生の教え方の秘密に迫ります。

Q:まず、学問をやるきっかけは何でしたか?

A:もともとはFPの資格を取ったことからですね。それで金融に興味をもって、もう少し勉強したいなぁと思って大学院に入学したことじゃないでしょうか。大学院では、最初は銀行経営の歴史を研究しました。ただ、この分野は他にもたくさん研究している方がおられ、先行研究もたくさんあり、途中くらいから「新規参入の余地がないな」と思うようになったんですね。

他方、保険の歴史はあまり研究者が多くなくて、先行者利益があることに気づいたんですね。大学院では何らかのSomething newが求められますが、この分野ならSomething newが出せるかなと思って始めました。

Q:先行者利益…専門分野を選ぶ考え方も、経済学的だったのですね!先生はどのような学生でしたか?

A:もちろん勉強していました…と言いたいところですが、学部の頃はあまり勉強していませんでした。学部のときはどちらかと言うとクラブ活動などが中心でした。

Q:学生時代にやって良かったと思うことは何かありますか?

A:クラブをやっていたのは良かったですね。勝負に対するこだわりや、やる以上は最後まで諦めずに一生懸命やる、皆で力を合わせるといった大事なことを学びました。何より皆で勝ったときの喜びを経験できたのが良かったです。

Q:スポーツをやられていたのですね。アクティブな深見先生が、勉強や研究に力を入れたのはいつごろですか?

A:大学院のときです。修士論文の中間諮問のときに一時間以上怒られたことが大きな転機になったんじゃないでしょうか。

Q:怒られてしまったのですか!何があったのでしょうか?

A:中間諮問には主査と副査の先生がいらっしゃるわけですが、副査の先生からは一時間半くらい、「お前の論文は欠陥論文だ」とか言われて、こっぴどく怒られました。それまでも自分なりには勉強してはいたんですよ。でも、それからは研究室に日が変わっても残って勉強していましたね。博士課程に進学すると、中間諮問で怒られた先生が指導教官になっていただいたので、後日、中間諮問のときの話を聞くと、「あれはなぁ、主査の先生から、深見君が博士課程に進むと聞いていたから、敢えて厳しくやったんや。まずガツンと叩いておいて、そこから這い上がってくる人しか成果は出せないし、博士で苦労する」とおっしゃったんですね。本当は博士課程で苦労させないように、僕のことを思って厳しくして下さっていたんですよ。そんなこと当時の僕には分かりませんしね。「欠陥論文だ」ですからね。まぁ、欠陥はあったんですが…。

Q:欠陥とは、なかなかつらい言葉でしたね。

A:しかも博士課程に進学すると、その先生が指導教官でしょう。この先生は大学でも有名な厳しい先生で、噂どおり厳しい指導でした。でも、そのおかげで学会賞をいただいた論文を書けたと思っています。振り返ってみると、修士のときは先生から折に触れヒントをもらって書いていたところがありましたが、博士課程で先生に出会って、段々と研究の面白みや意味とかを考えるようになりました。

Q:厳しさに感謝できる、深い信頼関係があったんですね。そのことから、先生の心持ちが変化しましたか?

A:そうですね。だから、僕も先生と同じように指導しています。そのため、学生からは厳しいと言われることが多くあります。

Q:それでは、今の学生を引き込むために、授業で工夫していることはありますか?

A:今日は僕の授業が面白いとおっしゃって来ていただいたわけですが、僕は自分の授業の何が面白いのか分からないのですよね(笑)。

ただ、学校の授業って、その日の授業のどこが重要かを事前に教えてくれないじゃないですか。だから、私は授業の最初に「今日のポイントはここで、ここを理解するように」というようにポイントを明確に伝えるようにしています。また、人間の集中力は50分くらいしか持たないと思うので、途中で1,2分の休憩をとるようにしています。

Q:深見先生の授業は「休憩時間があることで効率がいい」とベスト・ティーチング賞の投票でコメントがありました!私も履修していますが、メリハリがあってとても聞きやすいです。

学生からも深見先生の教え方は評判ですが、先生自身はどんな先生になることを目指していますか?

A:私もやはり、自分の指導教官みたいな先生になりたいですね。厳しいこともおっしゃっていましたが、一番親身になって指導してもらいましたからね。先生のように一人ひとりの学生さんのことを思い、寄り添ってあげられるような先生になりたいですね。

Q:厳しくすることは、学生のことを本当に思っているからこそなんですね。学生のうちに読んでおいた方がいい、おすすめの本などはありますか?

A:『川合一郎著作集』の第3巻、株式価格形成の理論という本です。この本は60年前に書かれた本ですが、株式の権利には複数あって、投資家はそれによる効用を得たいという動機から株式を購入するわけです。川合先生はここに着目され、買い手の動機によっては同じ会社の株式であっても買ってもいいと考える価格の上限が変わることを説き、多面的な株価形成を理論的に整理した名著です。

Q:深見先生には、息抜きができる趣味や特技はありますか?

A:特技といえるものはないですね。とにかく忙しくて、趣味や特技はあまりないです。ただ、音楽を聴くことは好きですね。特に、吹奏楽はいいですよ。駒澤の吹奏楽部の演奏は本当に素晴らしいですよ。ぜひ演奏会に駒大生もたくさん来てほしいです。

Q:先生は吹奏楽部の部長でもいらっしゃいますもんね!

それでは最後に、駒澤大学の学生たちに伝えたいことはありますか?

A:なんでもいいから熱中できるものがあるといいですね。クラブ活動でも勉強でも、なんでもいいです。1つでも、「4年間自分はこれをやった」と言える実績を作って、自信をもって駒澤から羽ばたいてもらいたいと思います。

Q:忙しく一生懸命な中でも、経済学の観点をうまく使って効率を求められる、深見先生。勉強だけでなく、考え方も大変勉強になりました。ありがとうございました!

聞き手:学生FDスタッフ

経済学部2年 郝