第10回 山本崇広先生(経済学部)

第10回目は、経済学部の山本崇広先生にインタビューさせていただきました。

山本先生は駒澤大学で、「マクロ経済学」と「経済原論」をご担当されています。

「経済原論」を受講していた法学部の学生FDスタッフは、他学部であるにもかかわらず分かりやすい授業に先生のファンになってしまい、今回お話を伺わせていただきました。


Q:山本先生が経済学を学ぼうと決めたきっかけはありますか?

A:一番のきっかけは、高校生くらいになると世の中について、「自分なりの見取り図を持ちたい」という関心を持つようになり、西部邁さんの本を読んだことです。西部邁さんはもともと経済学を専門としていた人で、こういうものの見方や考え方ができたらおもしろいだろうなと思いました。ちょうど高校の頃にバブルが崩壊したこともあり、どうも経済ってのは重要なんだな、という思いもありましたしね。

ちなみに、西部邁さんという人はずっと主流派経済学の批判をしていた人なので、きっかけとしてはちょっと変わっているかもしれませんね。

Q:高校生のときから興味を持っていらっしゃったんですね。

A:はい。そこから大学3年生のときにゼミで論文を書いたりしたことで、「経済学のツールを使って言いたいことが伝えられるんだ」というのを体感し、もう少し腰を据えて経済学をやってみようと思うようになりました。それが、研究の道に進んだきっかけですね。

Q:山本先生は学生時代、どんな学生だったんですか?

A:僕は、いわゆるいい学生ではなくて、授業にきちんと出席するタイプではなかったですね。ただ、「大学で勉強をしたい」という意欲は強かったので、極力アルバイトはせずに、自分の関心のある分野の本を読んだり、その内容について友達と議論をしたりしていました。

Q:好きなことを貪欲に勉強していたんですね!

A:そうですね。大学生になって時間ができて、世の中のことを理解するためにようやく好きに時間が使えるぞと。

もちろんよく遊びもしましたしね。興味のある、面白い授業には一生懸命出ていましたが、そうでない授業には時間を惜しんで友達に代返してもらうことも…。あまり模範的とは言えないかもしれませんが、ゆっくりものを考えたり、いろんな経験をしたり、そういう過ごし方ができるのも大学生活の醍醐味かなとは思います。

Q:アクティブな学生だったのですね。学生時代にやっていて、特によかったと思えることはどんなことですか?

A:時間を気にすることなく、興味の赴くままに本を読んだりとか、わりと真面目なことについて夜通し話をしたりしたことは、今考えても大学生のときにしかできない貴重な時間だったと思いますね。

本について言うと、自分の専門分野に限らず興味のあることを一通り触れることができたのはよかったなと。たとえば経済について考えるときでも、法学や政治、社会のあり方と切り離して考えることはできないわけです。経済学だけではなく隣接する分野について、大雑把にでも学ぶことができたのは、高校生のときに考えていた「見取り図を得る」という意味では大きかったですね。

Q:授業はいかがでしたか?

A:ゼミがすごくよかったなと思います。たんに本を読むだけではなく、ゼミという議論する場があって、自分の考え、ものの見方を試すことができました。何かを学ぶ上で、自分の考え方に関心をもって耳を傾けてくれて、自分とは違う見方を示してくれる、友人・先生・場所を得られたということはすごく大事なことだと思います。

Q:逆に、学生時代で後悔していることはありますか?

A:授業を選択するときに、もう少し遊びを持てばよかったなと思うことはありますね。僕は自分の関心がはっきりしていたので、興味のあることには一生懸命取り組むけど、最初の数回だけ授業を聞いて「これはあまり関係ないな」と思ったら、早々とこの授業はいいや…と。

あとになって何がつながってくるかなんて分からないですから、ヨーロッパの歴史の授業とか、今考えたら面白そうだったんですよね。もう少しちゃんと聞いておけばよかったなと。だから、自分の直接興味のある授業だけではなく、1つ2つは少し関心から離れたものもとってみて、ちゃんと授業に出ていればよかったなという思いは少しありますね。

Q:高校生から経済学に興味のあった山本先生ならではですね。山本先生にとって、誰にも負けない!ということはありますか?

A:フリードリヒ・ハイエクという人が、「知性には2つのタイプがあり、マスター(達人)とパズラー(混乱した人)がいる」と言っています。マスターはどんなことでも器用に整理して明快に説明してみせる人。パズラーは、何か言いたいことはあるんだけど、いつもうまく明晰な表現にたどり着けない人。だけどパズラーはしつこく物事を考え抜くからどこか一貫性がある。

僕はパズラータイプで、しつこく物事を考えて、なんとかそれを表現しようとするという粘り強さは、自分の強みかなとは思います。たんに混乱しているだけかもしれないんだけどね(笑)

Q:経済学への愛が伝わってきます!そんな山本先生の、息抜きや趣味は何ですか?

A:うーん…、趣味と呼んでいいかは分かりませんが、人と話をするのは好きですね。

特に、経済学とは全然関係のない分野の人や研究者じゃない人と話して、全く違う考え方に遭遇したり、他愛もない話の中でも自分の考えに共感を得ることができたりしたときに、「伝わったな」と感じる瞬間が好きですね。

Q:色々な考え方全てが先生のパワーになっているのですね。先生にとっての理想の先生像はありますか。

A:大学院のときの先生の影響は大きいですね。

僕が通っていた大学院の専攻は相関社会科学で、政治学や哲学、経済学と、いろいろな関心を持った人が集まっていたんですね。大学院の時の先生は、それぞれの関心に耳を傾けて、うまくつなげていくんですよね。

しかもそれがめっぽう面白くて、投資の話から企業組織の話になり、知識の伝承の話になり、果ては落語や格闘技の話にも繋がっていく。そうすると、自分が専門領域の中だけで考えていたことも社会に開かれるようになり、全く違う関心を持った人の話や関係ないと思っていた出来事にも繋がっていく。

学生が考えることに対してもちろん1つの答えを示すことはできないですけど、多様な関心をつなげる触媒のような、そういう風にできたらいいなと思ってはいます。

Q:先生が大事になさっている「色々な考え方」につながっているのですね。大学院の先生の影響を受けて、授業で工夫されている点はありますか?

A:学生の学ぶ意欲に丁寧に付き合えるように、授業の中では心掛けています。

ただ先に進めていくのではなく、いろんな角度から説明してみたり、関心のある学生が授業前、授業後に学べるようにスライド配布や文章でまとめたプリントを配布したり。

興味を持ったときに考えるきっかけとなるように、そういう形式にしています。

Q:ありがとうございます!最後に、駒澤大学生にひとことをお願いします。

A:一つあるとしたら、授業でやったことを素直にそのまま受け止める学生が多かったり、テストのことをすごく気にしたりしている学生が多いかなと。

僕自身は、学生に単位を取らせたくてやっているわけではなく、なにか面白いことを見つけられるよう、学生の関心を刺激したいと思ってやっています。

そういう意味で、学生にはもう少し色々なことに疑問だとか自分なりの関心を持ってほしいなと思っています。

授業でやったことに対して持つ疑問や違和感は、関心を持つ一つのきっかけだと思うので、そういうものを大事にしてほしいと思いますね。

Q:学生の興味を引き出してくださる学生思いの山本先生、お話を聞かせてくださりありがとうございました!

聞き手:学生FDスタッフ

法学部3年 加地