第11回 石川祐二先生(経済学部)

第11回のインタビューをお答えいただいたのは、経済学部の石川祐二先生です。

石川先生の授業は、学生が選ぶベスト・ティーチング賞でも「プリントが見やすい」「先生が学生思い」等の理由で投票があるなど、学生から大好評です。

石川先生はどういった心掛けで授業をされているのでしょうか。


Q:石川先生は会計がご専門とのことですが、学問を始めるきっかけはなんですか?

A:大学生のはじめの頃に税理士だとか会計士とか、会計の職業人になろうと思って会計の勉強を始めたんですね。だけど実際勉強をしてみて受験勉強よりも研究をする方が楽しくなり、研究の道に進もうかなと思いました。それが大学院に行くきっかけになったのかなと思っています。


Q:資格の勉強がきっかけになったんですね。

A:そうですね。大学は商学部に入ったというのもあり、最初は専門職に就こうと思って、そこで取れる専門の資格は何かと思った時に会計士の道を考え、会計の勉強をはじめたことが会計学に関わるきっかけになりました。

その後会計のゼミに入って、そこでの師匠との出会いや話、やりとりを経て大学院に行くことを決めたという感じですかね。

Q:ゼミの先生を「師匠」と呼べるのは、素敵な関係ですね!お師匠さんとはどんなやりとりをされたのでしょうか?

A:会計の話は前提としてあるけど、師匠のやっていること自体が少し人文科学に足を突っ込んでやっていて、言語学に関連するようなことをもやっていたんですね。たまたま自分の大学進学が決まった高校3年生の、時間がある時期に構造主義についての本を読んだことがあって、師匠との話をしている中で構造主義的な考えや言語学的発想に触れ、「この先生はこういうことをやっているんだ」とよく分かり、師匠のやっていることに興味を持ったことが研究の道への興味を抱くきっかけになりました。

Q:先生はどんな学生時代をお過ごしでしたか?

A:初めは公認会計士を目指していたので、ダブルスクールで大学と専門学校を行き来する、勉強面としては忙しい生活を送っていました。朝早く起きて、へたすると7時前には専門学校に行き、その後大学に行き、それから夜9時過ぎまで専門学校があるような。朝から晩まで勉強をしていたので、そういった点では大変でした…。

Q:それは忙しいですね!大変そうです。

A:大変ではありましたが、ゼミや専門学校の勉強仲間と資格取得を目指して一緒に勉強していたので、ある種一つのチームになって動いて。良い仲間ができたと思います。だいたい一緒の時間感覚で動いていたので、スケジュールを合わせやすいということもあり、その勉強仲間とたまに息抜きとしてバーベキューや飲み会などもしていましたね。

Q:大変さを共有することで良い仲間ができたんですね。アルバイト、サークル活動などは参加されていたんですか?

A:特にアルバイト、サークルはしていなかったですね。ですけど大学、専門学校が休みだった夏休みの期間だけ、中学生向けの夏期講習の補助教員としてアルバイトはしていましたね。

Q:私も経済学部に所属しているのですが、学生のうちに読んだ方がいい、オススメの本などはありますか?

A:先ほど師匠との話にも出てきた、高校3年生の時にたまたま本屋さんで見つけて読んだ「はじめての構造主義」(橋爪大三郎)という社会学に関わる本です。社会についてどう扱うかということに関して非常に為になる本で、小難しいこともあるけれども、文章が読みやすくてすんなり入ってくるように書かれているので社会科学に興味がある人にとってはいい本なのではないかと思っています。

Q:その本を読んで先生自身が変わったことはありますか?

A:正直、目から鱗が落ちたみたいなところがあって、もしかしたらその本を読んだことが大学教員になるきっかけになっていたのかもしれないと思っています。構造主義の考え方の背景に言語学の話があって、その言語学の話のところでソシュールという人の話が出てきます。そのソシュールの言葉に対する見方が今までの自分が思っていたことと全く違うことが説明されていて、それがこの本を読んで良かったなと思いました。

Q:ありがとうございます。今の学生の気持ちを引き込むために行っていることはありますか?

A:私の場合は、穴埋めプリントを毎回配っています。それを通して黒板を見て聞いて書き込む作業をしてもらうことで、授業に集中してもらう機会を作るというのが1つのポイントです。その結果、授業評価アンケートなどで、プリントがわかりやすかったという反響があるのでその点は良かったのかなと思っています。

Q:私も履修していますが、穴埋めプリントは本当にわかりやすいです!逆に、学生に期待していることはありますか?

A:個人的には来るもの拒まず精神だけど、やはり勉強の面で言えば、勉強に興味を持って積極的に質問にしに来てくれる学生がもっと増えてくれればいいなと思っています。

Q:大学教員の中でやりがいを感じる場面はどんなときですか?

A:一番跳ね返ってくることに関しては、ゼミの学生が卒業後に会いにきてくれて、そこで「昔先生があんなことを話してくれたことが、今こういう風に役立っている」と言われると嬉しい気持ちになりますね。

Q:石川先生とお師匠さんのように、卒業生との関係を築いていらっしゃるんですね。在学中の駒澤大学生に伝えたいことはありますか?

A:大学を出るということは基本的に社会人になっていくということなので、ぜひ大学にいる間にいかに自律的に行動するかを考えてほしいです。自分で自分のことを律しながら、さらに立つ方の自立も含めて、大人として自律できるように卒業までの4年間を通して考えながら学んでいってほしいと思います。

Q:自立を含めた自律ですか。では、大学は自分探しの場といっていいのでしょうか?

A:正直な話、自分探しという言い方は個人的に好きではなくて。なぜかというと自分はもうここにいるわけで、それをどこかで探すのではなくて、自分自身が今の自分なんだということをきちんと理解することが出発点であるべきだと思うからです。なりたい自分というのは、まず自分がどういう状況かということをしっかり認識しないと分からないわけです。英語がもう少しうまくならなければならないという認識を持てば、英語の勉強をしなければならない。むやみに世界中を旅したからといって何かが見つかるというわけではなくて、まずは最初に自分自身の原点というか、そこをしっかり押さえていかなければならないのではないかと思っています。

Q:知識だけでなく、人間としての成長を促してくれる石川先生。私も自分の立ち位置を認識し、卒業するまでに「自律」できるよう頑張りたいと思います。ありがとうございました!


聞き手:学生FDスタッフ

経済学部3年 山田

経済学部2年 郝