第9回 岩永正晴先生(仏教学部)

第9回のインタビューは、仏教学部の岩永正晴先生

いつも学生を応援してくださる岩永先生の穏やかなお人柄について、うかがってみました。

Q:岩永先生のご専門は「正法眼蔵」ということですが、先生が禅について学び始めたきっかけは何だったんですか?

A:中高生の時は内向的で、落ち込みやすい性格でした。悩んでいる私を、高校の先生が地元長崎の曹洞宗のお寺の坐禅会に連れていってくれて、そこで後の師匠に出会ったことがきっかけです。

当時高校生の頃には弓道部に所属していましたが、弓道は精神面の支えとして禅の教えを取り入れています。

また、社会科の時間にも道元禅師の教えに少し触れて興味を持っていました。そういったことが、背景にあります。


Q:大学に入る前から、禅に惹かれていたんですね。大学時代に取り組んで良かった事はありますか?

A:アルバイトの経験です。学部時代の授業料は両親に出して貰ったのですが、家賃やその他の生活費は奨学金とアルバイトでまかなっていました。大学院の博士後期課程に進学する時は、入学金なども自分のアルバイトでなんとかしました。 一所懸命仕事していると、まわりの大人が一人前扱いしてくれるので嬉しかったし、社会の色んな人に会えたので、良かったなと。ただし良い事だけじゃなくて、アルバイトに入れ込みすぎると勉学が疎かになりますからね。


Q:思い当たる節があります(笑)大学の先生になって、普段の授業で岩永先生が気をつけている事を教えてください。

A:その授業で扱う内容の項目を最初に伝えてから、話を広げるようにしています。以前、あるお寺でお世話になっていた時に、地元の小学生に向けて話をしたことがあります。少し難しい内容になりそうだったので、「今日はふたつのことを話します、ひとつめはこのお寺の歴史、ふたつめはこのお寺に関わる歷史的な出来事です」というように、初めに話す項目を挙げてから話してみました。そうすると小学生たちも混乱せずによく理解してくれたと感じました。そこで大学でも、前回の振り返りをしてから、ニュース番組のヘッドラインのように「今日はこれとこれについて話します」としてみました。それだけでも聞く人は、「今何の話をしている」と整理しながら聞けるし、「一度聞いた話だ」と感じてもらえるのではないかと考えています。


Q:岩永先生の、誰にも負けない強みって、ありますか?

A:うーん、無いなあ。他の人に勝っているとは何も思わないけど、気を付けている事はあります。昔ある大学の先生が言った言葉を本で読んだのですが、「大学で授業するには学び続けなければならない」ということです。だから同じ科目を担当するのでも、去年言えなかった事が今年は最低一つでも言えるようになろう、そのために勉強しよう、と思っています。皆そうだと思いますけどね。


Q:先生になっても、ずっと学び続けなければならないんですね。頭が下がります。お休みの日にはどんなことをしてリフレッシュなさっているんですか?

A:音楽を聴くことが好きです。自宅の近所のCD屋さんによく行きますね。そこの店員さんがとてもマニアックな知識があって、教えてもらっていろんな音楽を聴いています。日本やアメリカなどのポピュラー音楽をよく聴いています。古いものも新しいものも聴きますね。


Q:岩永先生の、「理想の先生」像を教えていただけますか?

やっぱり、日々勉強し、学問的な成長をしている先生でしょうか。歳をとっても積み重ねながら、様々な意見を取り入れていきたい、頑張りたい、と思います。あくまで理想ですけどね。

あと、学生から信用されるためには、こちらが先に学生を信頼しないといけないと思います。僕も何人かの「理想の大人」に会ってきたので、そうなりたいな、と。その方々の中には厳しい人もいたけれど、ちゃんと信頼してくれていました。


Q:それが、今の岩永先生のお人柄につながっているんですね。すみません、個人的な話ですが、卒業論文の書き方についてのアドバイスもお願いします。

A:僕も学生時代どう書いて良いかわかりませんでした。初めて書くのですから、大変ですよね。でも、だからこそ自分でテーマを決めて欲しいです。先生にテーマを決めてもらうと「やらされている!」気持ちになって、挫けてしまうのではないかと思うので。テーマ決めに困るようでしたら、「図書館で色んな本を眺めて、興味の持てるキーワードを三つ以上持ってきてください」と伝えています。そのキーワードを見れば、その学生さんがどのようなことに関心を持っているかが想像できて、具体的なアドバイスができます。本人が自分で調べたいことを提案してくれないと、こちらから押しつけて指導することはできません。

それから、「目次が卒論の重要な設計図になりますよ」とも伝えています。20,000字以上、原稿用紙50枚を書くのは辛いけど、原稿用紙5枚の文章10本なら書けそうでしょう。目次はその10本の文章をどう並べるかという設計図だと思って、目次の組み立てをどうするか、よく自分でもよく考えてみてほしいと思います。

Q:ありがとうございます。卒論の提出を控えている私には、大変参考になりました!


聞き手:学生FDスタッフ

仏教学部4年 辻