オドリバエと生物学
Empididae in biology
Empididae in biology
オドリバエ上科 Empidoidea は、オドリバエ科 Empididae、アシナガバエ科 Dolichopodidae、セダカバエ科 Hybotidae などを含む単系統群です。触角の形や、蛹についている裂け目など、いわゆる "アブ" とよばれる双翅目短角亜目直縫群との共通点が多いグループです。
このオドリバエ上科は、いわゆる "ハエ" 双翅目短角亜目環縫群 Cyclorrhapha と姉妹群の関係であることが知られています。
双翅目全体の系統関係、特に "アブ" から "ハエ" にかけての関係を調べるときに、進化の中間段階に端を発する分類群として参照できるかもしれません。
性的役割の逆転
有性生殖する多くの生物は、その個体が生産する配偶子の大きさによってオスとメスに識別されます (作る配偶子が大きい方がメス)。配偶子は生産にコストがかかるので、大きい配偶子を作るメスの方がオスより少数の配偶子を作る傾向にあります。このため、オスが次世代により多くの子を残す条件は、より多くのメスと配偶することです。その結果、1個体のメスに多くのオスがアプローチする状況が生まれ、オスはオス間競争 intra-sexual competition、メスは配偶者選択 mate choice が厳しくなる傾向が多くの生物で見られます。この、配偶行動の性差を、それぞれの性の性役割 sexual role と呼びます。
オス間競争で有利になる装飾、体サイズ、武器形質、メスによる配偶者選択でメスに選好される装飾がオスで発達するのが典型的な性的二型です。
オドリバエでは、なぜか性的役割が雌雄で逆転する種が知られています
Rhamphomyia longicauda
Methyl Salicylate に誘引される (Shamshev & Selitskaya 2016, Entomological Review, Rhamphomyia (Amydroneura) gibba)。
花によるオドリバエ♀への擬態? (Kuiter, Findlater-Smith & Lindhe 2017, Aquatic Photographics, ラン科 Pterostylis plumosa - Empis sp.)。