要点:
虫体に直接触れずに、標本の移動・観察ができる状態にする
半永久的に保存することが可能な乾燥した状態にする
採集データと虫体を物理的に紐づける
マウントしておくことで、すぐに研究に利用できる状態になります。
参考にした文献
山岸. 2006. 昆虫採集と標本整理. 昆虫の生物多様性調査と環境評価のために. 1-14.
丸山. 2014. 小型甲虫の台紙貼り標本とラベル の基本的な作り方と注意点 . 九州大学総合研究博物 館研究報告 , 12, 21-32.
長島. 2016. 小型昆虫の三角台紙貼り標本の作成手順. ニッチェ・ライフ, 4:4-10.
中村. 2017. 昆虫標本作製法・撮影法・活用法(2)剥離紙を用いて軟弱化した液浸標本を展翅する方法. 昆蟲ニューシリーズ, 20(3):132-137.
採集の仕方はこちら
針を刺すことで壊れる情報が多いような虫は、台紙に糊で貼ります。貼り付ける面が大きいほど剝がれにくくなりますが、貼り付ける面が小さい方が、台紙によって隠されないので、多くの特徴をそのままの状態で観察できます。
採集後の処理
翅を背中合わせにして乾燥させます
台紙の準備: ケント紙、中性紙、台紙を入れる容器
厚めの中性紙 (ケント紙など) を用意します。大体中性です。
厚さは葉書くらいはあった方がよいです。虫の重みで垂れ下がることを防ぎ、針との摩擦が増えて滑り落ちにくくなります。
ケント紙を切って帯を作ります。著者は幅 8 mm が好みですが、小さすぎだと言われます。
高さ 8 mm (帯の幅) の鋭角二等辺三角形を切り出します。底辺側が後で針を刺す場所です。台紙の先端は 30 ° が好みです。
3-1. 片手にハサミを、もう片手に帯をもちます。帯を交互に傾けながら、橋のトラフを描くように三角形を切り出します。
3-2. 小さめの裁断機を用意します。裁断機の紙を置く部分に、厚紙やビニールテープでガイドを作ります。最終的に30° の三角形を作りたいので、15° ずつ逆に傾けて、「ハ」字形に置きます。ケント紙の帯を間にセットして、ガイドに沿わせながら裁断する位置に合わせ、裁断します。
番外編: 紙じゃなくても虫を貼ることができます。
微針の頭 (推奨; 多少高価)
テグス
1.5 cm 程度に切ったテグスの一端を、2枚の小さなケント紙片で挟んで糊付けします。テグスのフリーなもう一端に糊をつけて虫に貼ります。標本針はケント紙に刺します。
袋の中で保湿された接着剤ケース
ケースの蓋にあけた穴から ピンセットで三角台紙を挿し込み
先端だけに接着剤を付ける。適度な量を付ける。
三角台紙の先端を胸部に貼る
虫体への貼り付け: ピンセット、ボンド、標本針、標本を仮置きするためのポリフォーム、できれば実体顕微鏡
糊を準備します。そこそこ早く乾き、長期間変質しない材質で、できれば水溶性のものがよいです。ボンドや膠の類が該当します。
ボンドは粘性が高く弾かれやすいので、同量の水と、ごく僅かに洗剤 (界面活性剤) を加えてよく混ぜます。
糊は乾かないように、濡れティッシュとともにケースに入れるのがおすすめです。
虫の、台紙を張り付ける面を表にして、机や実体顕微鏡のステージに置きます。
虫の、なるべく邪魔にならない場所を確認します。これは普段の同定で使う形質を把握している方のみで結構です。
三角台紙の先端に糊をつけます。
なるはやで虫に貼り付けます。
乾く頃に、台紙をピンセットで持って移動し、台紙に針を刺します
三角台紙の先端に胸部をつける
台紙を貼り付けた
台紙の根元を硬いものに置く
標本針を台紙の根元に刺す
針の先端だけ刺さる
ピンセットの隙間で針を深く刺す
データラベルを付けて標本箱に入れる
標本の完成
採集データを過不足なく記したラベルを針に刺します。過の場合は2枚に分けて刺しましょう。文字を損傷しないよう、よく狙ってください
また写真や動画を追加します。取り急ぎ。
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