パラシュートへの誤解
その7-2

自動開傘装置は未経験者が知識を得ずに使えるという意味ではない 続き


PJ

その7-1 では

1 パラシュートを扱うにはトレーニングによって知識を身につけることが必要です。

2 自動センサーによる危機の感知と自動射出

3 自動開傘という機械に頼った危うさの理由

4 緊急用パラシュートは国家資格となるほどの情報量を必要とする

5 無人航空機用緊急パラシュートに特化した講習の必要性 ドローン危機対策技術者の提唱

その7-2 では

 自動射出であってもパラシュートは道具に過ぎない

 パラシュートを装備する目的についてよく理解すること

 パラシュートの取り扱い


⑥ 弊社では前身企業時代からそして代表者の就業時代を含めて通算35年間フライト機材を扱っています。
その年月においては国内外での指導経験も含まれています。
国民性の違いも、それぞれのハングググライダー、パラグライダー、パラモーター(モーターパラグライダー)、スカイダイビングといったフライト種目ごとに操縦者の安全行動への認識や、第三者への配慮の認識も異なる現状があります。
ここではそれを深堀りしませんが、アクシデント発生へのケアが最も欠けているのはパラモーターのパイロットです。
このことについては別項で紹介しますが、地上から上昇できる機械を備えていて他の自然滑空、または自然降下を行う種目の中では最も優位にあるはずの種目です。
確実に一ついえることは、機械に依存しすぎていることがアクシデントの発生を誘発しています。
全員ではないですが多くのパラモーターパイロット達と対面して意見交換していても、機械があるからなんとかなるだろうという根拠の見えない意識が強く伝わってきます。このことに強い違和感とほとんどのアクシデントの発生原因と分析しています。

他のコーナーで何度か紹介した表現ですが「パラシュートは楽器に例えて考えるのと同様に、ピアノを未経験で手に入れても鍵盤をたたけば音が鳴りますが、それは演奏ではない、演奏をするためのものであるならばそれはレッスンをして演奏を学ぶ必要がある」ということです。
パラシュートが必要となるのは突然、予期せぬタイミングでやってきます。
もしそれが今日は、ここでは少し危険かもしれないと判断できれば その突然のタイミングは訪れることはありません。
突然のタイミングで 自動でパラシュートが開くはず、それで墜落が緩和された降下速度になるはず と考えていれば それはそうならない可能性を含んでいます。その理由は7-1の3と4をもう一度読み返してみてください。

⑦ パラシュートはいくつかの種類があり、その中で今回説明しているのは緊急用パラシュートというタイプのものです。とくに予めパラシュートを使用することが確実に予定されている回収用パラシュートとは大きく異なります。
対人用の緊急パラシュートの場合はその目的は使用者、装着者が何らかの飛行機材によってフライト中に墜落という状況に至り、その生命を守ることに集中しています。
しかし無人航空機の場合は目的が異なります。
昨今の産業用ドローン(無人航空機)は高額なものが増えてきています。さらに測量用などの高額な機材まで搭載していると墜落危機からの破壊から守りたい心情は重々理解できるのですが、それは経済活動でしかありません。
最も避けるべき、そして守るべきは地上に存在する無関係な第三者への衝突です。
ドローンを飛行させる側は各々のビジネスの都合で飛行させるわけですから、そのアクシデントが故意でなかろうとも第三者への影響があってはならないわけです。
そのためのパラシュートだろう!ということなのですが、あくまでも道具としての装備です。
前述⑥での道具としての説明からして「演奏会でいろんな曲が自動で演奏してこそピアノだろう!」と言う人はいないのと同じです。
突然やってくる墜落危機に備えて 知識を積むことで無関係の第三者を衝突危機から守る責務を感じてもらえることを切望します。

緊急用パラシュートではなく開傘確率の高い 予め開傘が予定されているパラシュートでさえアクシデントが発生することがあります。動画では脚にパラシュートが絡んでいますがドローンではブームやプロペラなど絡みつく突起がいたるところにあります。学ぶことなくパラシュートが扱えると思いますか?

動画資料 instagramより https://www.instagram.com/reel/C4cvlunJskU/?igsh=YWNxNG0ycWxya25k


⑧ パラシュートの素材はナイロンまたはポリエステル系の生地とテープ(コード)からなります。
織ってあり、編んであり、それらは伸縮や変形をします。気温差によっては伸縮もあり得ます。金属や硬質プラスチックなどを素材とした加工品とは違ったメンテナンスを必要とします。
何度も言いますが突然やってくるそのタイミングで必ず期待した正常な開傘を発動させるためには常にメンテナンスしてケアをしておく必要があります。