パラシュートは最低開傘高度というものが必ず存在します。弊社のHPで紹介するパラシュートに関する説明ページにおいてもパラシュートへの誤解その2 開傘速度・最低開傘高度(距離) の閲覧数は安定して多くパラシュートの装備に関心を持たれているであろう各社の興味が集中していることが想像できます。
最も気になる情報であることは理解できますが、パラシュートに基礎知識を必要とすることを軽んじて手っ取り早く得たい情報だけを得ようと考えるのは無謀な行為で、必要な知識を伴わずセンサーと自動射出機能に依存してもどうせ正しく開傘する確率は低下しますので弊社製品を供給することはありません。
パラシュートへの誤解その9 非経験者からのパラシュート要望条件のリスク
パラシュートへの誤解その7-1 自動開傘装置は未経験者が知識を得ずに使えるという意味ではない
パラシュートへの誤解その7-2 自動開傘装置は未経験者が知識を得ずに使えるという意味ではない
パラシュートへの誤解その11 回収用パラシュートと緊急用パラシュートは別物!!回収用パラシュートは緊急時には使用してはいけない
緊急用パラシュートは予想外の事態を原因としてドローンの墜落リスクからの軟着陸をすることに使用されるものですがそれらは上空で軌道飛行中を想定しています。
ドローンの飛行中に、より地上に近い高度でのトラブルに対処できることを切望される心境は手に取るようにわかりますが、パラシュートのより低高度での使用の可否よりもドローンの操縦者が学ぶべきもっと大切なことがあります。
例えば戦闘機に装備されているようなパイロットシートごと上空へと射出されてパラシュートが開傘するようなシステムの目的は、地上に近い高度で墜落リスクが発生することに対応することに起因しているのではありません。
上空でトラブルが発生した戦闘機の機体が地上に墜落するポイントを住宅密集地から遠ざけて被害を最小限に抑えるためにパイロットが回避行動をするための時間的限界を稼ぎ出すためのシステムで、ドローンの操縦者が切望するものとは目的が異なりますので弊社ではそのようなシステムをドローンに装備するような本末転倒なことは今後もありません。
ではドローンはじめ他のパラシュートを装備するとが少ない軽飛行機やヘリコプターなどの飛行体、まして大型旅客機などはどうしているかについてを例にとり説明します。
まずドローンが普及した理由は離陸、着陸、ホバリングがそれまでのラジコン飛行機に比べると容易になったことが最大要因ですが、容易になった技術的、知識的なことは以前のラジコン機に比べて(またほかの有人飛行体に比べても)登竜門のトレーニングを試験免除的になっている状態と言い換えられます。
実はこの試験免除になっている部分こそが緊急パラシュートの非有効高度であるデッドゾーンでの安全確保を大きく左右します。
他の航空機の事故の大半は着陸時、または離陸直後に集中しています。
離陸については事前に飛行制限空域の確認のほかに気象情報(気圧配置、気温減率、局所的な気流の風向風速など)、離陸地域の地形(建物や電線の有無、それらが気流に与える影響も含む)、使用機体のスラスト、旋回など各性能について事前に確認、メンテナンスすることで(ドローンは電波の有効空域確認なども含む)アクシデントの発生原因を消去抑制してゆくことが可能ですが、私がパラモーター委員長を経験したパラモーターの例で言えば、発生した事故の原因調査をしてみるとほぼ前述したことがおざなりになっていることが見られました。
離陸は十分なコンディションが確保できていない場合は取りやめることで事故を回避することが可能なのですが、着陸はいったん離陸してしまえば必須となりますので、離陸後に前述のコンディションのいずれかが確認を怠った、または状況が変化したなどのケースにおいて大きなリスクを抱えての着陸行動となりますのでもっとも危険率が高まります。事故発生件数も確率的に高くなることは明確です。
そのため着陸予定エリアは離陸前に十分な調査をすること(気象条件ごとにアプローチコースをすべて想定し把握すること必須)、また飛行経路中の緊急着陸エリアの調査とメイン着陸エリアと同様の調査も行って本来なら使うことのない無駄にも思える準備によってその大きな労力で得た緊急対策のうち一部分が”想定外”での安全確保を可能にすることがあります。
パラシュートのデッドゾーンは前述の危機対策をして回避を試みることが航空機本来の知的技術です。
パラシュートの最低開傘だけを気にして盲目的な依存をすることがいかに無謀かについて理解の一助となることを祈っています。