唐人町商店街の変遷から考える長続きする店の特徴
唐人町商店街の変遷から考える長続きする店の特徴
1959年 (唐人町ライフワーク・ステーション構想より引用)
1989年 (唐人町ライフワーク・ステーション構想より引用)
2020年
唐人町商店街:佐賀県庁のある城内とJR佐賀駅とを結ぶ中央通りのなかほど、約600mに渡って続く商店街
戦前
この商店街のある唐人町は長い歴史を持ち、始まりは1599年。高麗出身の李宗歓が朝鮮出兵の際、藩主鍋島直茂の命を受けて陶工6~8人を連れて帰り、この地に居住させたことを由来とする。宗歓は、唐物の繊維品、陶器類など日本に無い珍しいものを直輸入し、これらを扱う商人が集まって、唐人町の基礎を形成していった。 それから、明治まで大きな変化は無かったが1921年に国鉄佐賀線が開通すると、唐人町は城内と駅を結ぶ役割を果たすようになる。この唐人町商店街が挟んでいる城内と駅を結ぶ通りは、後の「中央大通り」として1931年に都市計画街路として計画が決定される。
戦後
第二次世界大戦後の1945年以降、唐人町周辺の市街化が始まり、問屋が多いという特徴のある商店街の一体的な形態が少し見られるようになる。1959年にはアーケードの建設によって昭和の商店街らしい装いを持つようになり、戦前に計画されていた「中央大通り」が1965年に完成。しかし、アーケードも年月と共に老朽化が進み、1985∼9年のシンボルロード整備事業の際に撤去。同時に電線の地中化や歩道の整備が行われ、唐人町商店街の現在の形になったのである。
左図は、唐人町商店街の南側、唐人1丁目交差点から中央橋交差点までの約280mの通り沿いの60年以上続く店舗を黄色、30年以上を白で表したものである。1950年代、この通り沿いには約80もの店が軒を連ねていたが、現在では約60店舗まで減少している。また、1980年代の商店街の業種構成は、衣料品店が最も多く占めており、次いで食料品店となっていたが、現在では飲食店次いで、衣料品店となっている。当時、商店街の経営上の問題点として駐車場の確保が最大の問題となっていたが、現在では店舗の減少、駐車場、空き地の増加により大きな問題では無くなっている。その中でも60年以上続く店が6軒、30年以上続く店が3軒あった。
1897年創業の醤油醸造元。昭和初期の洋風モダンな店構えで佐賀市都市景観賞も受賞している。中には佐賀市の歴史を辿る事が出来る貴重な資料も多数展示。ネット販売も行っている。
落ち着いた雰囲気の40年以上続く喫茶店。年配の方が多く訪れ、男女問わず地域の方の憩いの場となっている。また、オーナーが気さくな方でカウンターは会話で溢れている。
1階は精肉店、2階は佐賀牛を取り扱う焼肉レストランとなっている。ここと玄海店、唐津店の3店舗があり、ネットでの販売も行っている。
上記で、唐人町商店街の長続きする店の例を3つほど紹介している。そして、これらを含めたほとんどの長続きする店で共通している特徴が主に3つあると考えた。
1.1店舗当たりの敷地面積が他と比べ少し大きい→そもそも資本力がある
2.インターネット販売を行っている店舗もある→時代の変化に対応
※佐星醤油、肉の丸福、珈琲喫茶店 珈茗璽がネット販売を行っている
3.街になじんだ落ち着きのある空間→居心地が良く、地域の人が通う
他にも高い質のサービスの提供、後継者への事業の継承がきちんとなされているなど沢山あるかもしれないが、中でも3番目の居心地が良く、地域の人が通うが特に重要なのではないかと考える。居心地の良さは、空間デザインである程度つくることが出来る。しかし、それだけでなく店で働く方の人柄も居心地の良さを創出する要因であると思う。地域の方に親しまれる人となりこそ、人と人のつながりを生み、その店がコミュニケーションの場となることで、安定的に地域に支えられる長続きする店になるのだと思う。
近年現れた居心地の良い空間としては、オープンテラスを併設したおしゃれスポットがもしかしたらこれからの長続きする店になるかもしれない。ここ、唐人町商店街でも近年の店舗デザインの傾向として敷地や建物を道路や隣地などの境界線から離す(後退させる) いわゆる、セットバックが多く用いられている。芝生や木などの植物を店の前面に配置、また、大きなガラスを用いたオープンなファサードで開放的でくつろげる空間を演出している。今ある老舗と共にこれからの唐人町商店街を作り上げるお店となるかもしれない。そして、唐人町商店街、さらには中央大通りの店がセットバッグを用い、前庭空間のある通りとして一体的な開発を行えば、中央大通りが緑溢れる面白い通りになっていくのではないかと考える。
1)唐人町商店街振興組合事務局. 唐人町ライフワーク・ステーション構想 ,(株)サガプリンティング, 1991
2)福岡 博,佐賀・多久・小城の100年,郷土出版社、2002
3)福岡 博,佐賀・小城・多久の今昔,郷土出版社,2012
朝倉 隆平
福岡生まれ福岡育ち。
好きな食べ物はインドカレーと韓国料理と手羽先です。
フィギュアスケートが好きです。