近年、企業や公共施設の衛生管理への意識が大きく高まり、それに伴って「受託清掃サービス(契約清掃サービス)市場」が世界的に成長を続けています。調査によると、世界の契約清掃サービス市場規模は 2024 年に約 3,369 億 9,000 万米ドルに達し、2025 年から 2032 年の予測期間には年平均成長率(CAGR)3.7% で拡大すると見込まれています。
受託清掃サービスとは、企業や施設が清掃業務を外部の専門企業に委託し、契約に基づいて継続的かつ計画的に提供される清掃サービスのことです。一般清掃から消毒業務、窓ガラス清掃、産業施設の特殊清掃まで多岐にわたり、施設の衛生レベルを高く保ちたい企業にとって欠かせないサービスとなっています。
企業の間では、非中核業務を外部に委託する動きが年々強まっています。特にオフィスビル、医療施設、教育機関、空港、物流センターなどの大規模施設では、日常清掃・定期清掃・衛生管理を専門企業に委託するケースが増加し、市場の成長を後押ししています。
パンデミック以降、清潔で安全な環境を維持することは企業の重要な責任となりました。これに伴い、室内空気の質管理、定期的な消毒作業、衛生基準の強化などが一般化し、高品質な清掃サービスへの需要が増大しています。
多くの企業が ESG(環境・社会・ガバナンス)方針を取り入れ、環境にやさしい清掃剤の使用、低 VOC 製品の採用、廃棄物管理の改善などへ重点を置くようになりました。これらの動きは、プロフェッショナルな清掃サービスの採用をさらに促進しています。
強い成長が見込まれる一方で、この市場にはいくつかの課題も存在します。
清掃業務は多くの人手を必要とするため、従業員の確保が重要な課題です。高い離職率や人件費の上昇が企業の利益率を圧迫することがあります。
市場には多数の企業が存在し、サービスの差別化が難しいことから価格競争が激しくなりがちです。この結果、特に中小規模の清掃企業にとって利益確保が困難になる場合があります。
清掃ロボット、IoT を活用した管理システム、データ分析ツールなど先進技術が注目されていますが、導入コストが高いため、中小企業にはハードルとなることがあります。
医療機関、製薬工場、食品工場、データセンター、空港など、厳しい衛生管理基準が求められる分野では契約清掃サービスの需要がさらに増加しています。
床清掃ロボットや自動消毒システム、衛生状態を可視化するアプリなど、技術革新が進んでいます。これにより、効率性向上と人件費削減が可能となり、サービス品質の底上げにもつながっています。
従来の「時間で料金を支払うモデル」から、「清掃品質や成果に基づく契約」への移行が進んでいます。これにより、清掃企業はより高品質なサービス提供を求められるようになり、業界全体のレベルアップが期待されます。
契約清掃サービス市場は以下のように分類されます。
一般清掃・定期清掃
特殊清掃・産業用清掃
消毒・衛生サービス
廃棄物管理・その他サービス
住宅(居住施設)
商業施設(オフィス、ショッピングモール、ホテルなど)
産業施設(工場、物流施設、データセンターなど)
特に、商業施設向けサービスが市場をけん引しており、ビルメンテナンス需要の増加が顕著です。
受託清掃サービス市場には多くのグローバル企業が参入しており、代表的な企業には以下が挙げられます:
ISS A/S
ABM Industries
Compass Group
Sodexo
Mitie Group
Rentokil Initial
これらの企業は買収戦略、新技術の導入、サービス強化を進めることで市場での競争力を高めています。
日本においても、少子高齢化や人手不足、衛生管理強化の流れを背景に、契約清掃サービスへの依頼が増加しています。医療施設や高齢者施設、オフィスビル、商業施設では、高品質な清掃と継続的な衛生管理が求められており、外部委託需要は今後さらに拡大するでしょう。
また、ロボティクスや IoT 技術の普及が日本の清掃業界にも変革をもたらし、サービス品質向上の大きなチャンスとなっています。
受託清掃サービス市場は、衛生意識の高まり、アウトソーシング拡大、技術革新といった要因により今後も安定した成長が期待されます。特にパフォーマンスベース契約の普及や環境配慮型清掃の需要増加が、企業に新たなビジネスチャンスを創出しています。日本市場でも同様に、サービスの高度化と自動化が進むことでさらなる成長が見込まれます。