インフルエンザ治療薬市場は、世界的に季節性インフルエンザの増加や診断技術の進歩、治療薬開発の活性化などを背景に、安定した成長を続けています。2024年の世界市場規模は約 9.3億米ドル と評価されており、2032年までに 11.7億米ドル に達すると予測されています。これにより、2025年から2032年の年平均成長率（CAGR）は 2.8% と見込まれています。
過去数十年間、重篤かつ生命を脅かす可能性のある感染症の発生率が世界的に増加傾向を示している。こうした重大疾患の一つが各種インフルエンザであり、主にインフルエンザウイルスの変異特性に起因して、世界的に罹患率が着実に上昇している。米国などの主要成長国における年次的な流行や、世界各国のインフルエンザ発生も、世界市場の成長を牽引すると予測される。米国疾病予防管理センター（CDC）によると、2019年10月以降、米国では推定970万件のインフルエンザ症例が報告されている。
世界のインフルエンザ治療薬市場は、感染リスクが高まる季節性要因により毎年大きな需要が発生しています。特に北米は市場シェアの大部分を占めていますが、アジア太平洋地域は今後最も成長率が高い地域と予測されています。これは医療アクセスの向上、啓発活動の強化、医療支出の増加などが影響しています。
インフルエンザ治療薬市場を押し上げる主要因は以下の通りです。
インフルエンザ感染率の増加：毎年の流行により、診断と治療薬の需要が継続的に発生。
診断技術の進歩：迅速診断検査の精度向上により、早期発見と早期治療が可能に。
新規治療薬の登場：バロキサビル・マルボキシルなどの新世代抗ウイルス薬は市場拡大を加速。
高リスク人口の増加：高齢者、妊婦、免疫不全者が増加しており、治療薬の必要性が高まっている。
インフルエンザ治療薬は複数の薬剤クラスで構成されています。特に以下の薬剤が市場で大きなシェアを占めています。
オセルタミビルリン酸塩（代表的な経口抗ウイルス薬）
バロキサビル・マルボキシル（新規作用機序の抗ウイルス薬）
これらの薬剤は投与経路においても、患者にとって利便性の高い 経口薬が主流 となっています。
日本は医療制度が整備されており、インフルエンザ治療の普及が非常に高い国の一つです。インフルエンザの流行期には迅速診断・治療が積極的に行われるため、治療薬市場も活性化しています。
さらに国内の製薬企業は、グローバル市場の動向を研究し、自社の開発戦略に取り入れることで、市場競争力を高めています。日本の製薬技術は世界的にも高い評価を受けており、新薬開発の面でも重要な役割を果たしています。
インフルエンザ治療薬市場には、多くの国際的製薬企業が参入しています。主要企業としては次の企業が挙げられます。
塩野義製薬
グラクソ・スミスクライン
ジェネンテック（ロシュ傘下）
バイオクリスト・ファーマシューティカルズ
アストラゼネカ
これら企業は幅広い抗ウイルス薬ポートフォリオと研究開発能力を持ち、市場拡大を牽引しています。
インフルエンザ治療薬市場は、感染症リスクの高まりと新しい治療法の普及を背景に、今後も安定成長が見込まれます。日本市場は高い医療アクセスと診断精度の向上に支えられており、国内外企業にとって大きな成長機会を提供します。
2019年10月：ジェネンテック社は、インフルエンザ関連合併症発症リスクの高い患者向け「ゾフルーザ（バロキサビル・マルボキシル）」のFDA承認を発表。
2019年10月：塩野義製薬株式会社は、インフルエンザウイルス感染の曝露後予防を目的としたXofluza（バロキサビル・マルボキシル）の追加新薬申請（sNDA）を日本で提出したことを発表した。