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写真に暗号、公園で報酬…なお続く露の諜報活動

6月29日23時56分配信 読売新聞

【ワシントン=本間圭一】米国が28日発表したロシア・スパイ拘束事件は、関係強化に動く米露の間で、「冷戦時代のスパイ小説」(米ABCテレビ)さながらの諜報(ちょうほう)活動がなお続いている現実を映し出した。

「米国には長期派遣。教育、銀行口座、車、家を与えるのは、任務の完全遂行のため。米国の政策立案者を調べ、関係を築き、情報を送れ」

ロシア対外情報局(SVR、旧KGB)が、今回拘束されたスパイにあてた秘密のメッセージだ。司法省の資料などによると、スパイは偽造パスポートなどで1990年代半ば以降から米国に住んでいた。家庭生活を営み、子供も育て、近所付き合いもしながら、SVRからの連絡を待つ男女のスパイもいた。

SVRの指示は具体的だったようだ。2009年のオバマ大統領訪露前には、米国の核兵器削減方針や対イラン政策の情報などを要求。スパイはこうした指示に従い、米国家安全保障会議(NSC)の元高官らと接触することもあった。ボストンのスパイが2004年、核施設勤務者と接触し、地中貫通爆弾「バンカーバスター」の情報を収集した例もあったという。

情報伝達では、文書や写真などに暗号を埋め込む手法のほか、スパイとロシア政府関係者がノート型パソコンで無線通信する手法が、今月5日にワシントンのレストランで確認された。報酬受け渡しも小説さながら。あるスパイは南米で、1万ドル(約90万円)入りのバッグを八つ受け取った。公園のベンチに座ったロシア諜報員が、隣に座ったスパイにバッグを渡した例のほか、報酬を地中に埋め、それを別の人物が掘り起こすケースもあった。

米当局もまた、隠しマイクや隠しカメラ、電子メールや電話の傍受などを駆使して捜査を進めた。

◆露が非難声明

【モスクワ=貞広貴志】米国で男女10人がロシア当局のスパイとして拘束された問題で、露外務省は29日、「(米司法省の)措置には根拠がなく、不適切な目的を目指したものだ」と非難する声明を発表した。

声明はさらに、過去にも両国関係が改善しつつある時に、同様の事件が起きたと指摘。米露関係の改善を望まない米政府内勢力による陰謀との見方を示唆した。 最終更新:6月29日23時56分

読売新聞