参考資料

「イスラム国」が一部制圧した難民キャンプを取材しました。

05/06 19:22

過激派組織「イスラム国」が一部制圧した難民キャンプに、FNNの取材班が入りました。


「この世の地獄」ともいわれるヤルムークキャンプを撮影した写真には、やつれた顔で通りを埋め尽くす、食料の配給に殺到する人々が写っています。
現在は、「イスラム国」が街の一部を占拠したため、配給といった国際的な支援も届かなくなりました。
世界から見捨てられた街の現状を取材しました。

建物の入り口で、仲よさそうにたわむれ、無邪気な笑顔を見せる子ども。
そして、自分に向けられたカメラを、真っすぐなまなざしで見つめる。
しかし、一方で、大人たちは、一様に険しい表情を浮かべている。
政府軍と反体制派の内戦が続いていたシリアの首都、南部のヤルムークキャンプに、過激派組織「イスラム国」が侵攻したのは、4月のことだった。
このヤルムークキャンプは、ダマスカスの中心部から、わずか5kmほどの場所にある。
ヤルムークキャンプの入り口から、奥の方に進んでいくと、まだ「イスラム国」の戦闘員が、一部を占拠している。
そして、この中には、今なお1万人以上の人々が取り残されて、厳しい生活を余儀なくされている。
付近には、多くのスナイパーがいて、いつ狙われるかわからないため、通りの間には、目隠しのために布がかけられている。
ヤルムークキャンプで最も栄えていた通りの1つは、激しい戦闘を経て、現在は、がれきの山と化している。
住民の姿は、一切見当たらない。

そして、同行していた兵士は「ここから200メートル行ったところが前線だ」と説明した。
ヤルムークキャンプは、かつては18万もの人が暮らす、にぎやかな町だった。
しかし、およそ2年前から、内戦により、町は戦場と化し、激しい戦闘が続いていた。
その街に、さらにダメージを与えたのが、「イスラム国」の攻撃。
「イスラム国」は4月1日、このヤルムークを襲撃し、一部を占拠した。
このため、国連の関連団体などによる支援物資の搬入は完全に止まり、地区の住民の物資不足が深刻化している。

4月に撮影されたヤルムークの街の様子を映した映像。
子どもと一緒に列をつくり、順番を待つ多くの人々。
食事の配給をもらうため、容器を持って並んでいる。
しかし、住民たちに配られていたのは、緑色のスープ。
これは、雑草などを煮込んでいるものなのだという。
さらに、涙を浮かべる高齢の女性の姿もあった。
キャンプ内で暮らす住民は「食料をもらいに行ったけれど、追い出され、ののしられ、何もくれなかった。追い出されて失望した。なぜなのでしょうか?」と話した。
国連も、「死の収容所」と表現するヤルムーク。
「イスラム国」が侵攻するまで支援を行っていた国連のパレスチナ難民支援機関の清田明宏保健局長は「食料も入らない、水も入らない、医薬品も入らない。最悪の状態が、最悪の場面で起きてしまった」と話した。
こうした中、「イスラム国」の襲撃から必死の思いで逃れてきた住民たちは、今、隣接する地区の学校で生活している。
およそ1カ月前にヤルムークを脱出した、ムハンマドさん一家。
現在、家族7人で、ここに身を寄せているが、ムハンマドさんの息子は、「イスラム国」との戦闘で負傷し、病院で療養している。
ムハンマドさんは「(『イスラム国』に)忠誠を誓わないと、斬首されます。怖がらせるために、頭をボール代わりにして、けっていました。2つの家族が、広場で全員斬首されたんです」と話した。
義理の娘のファトマさんは、「イスラム国」が攻撃する直前の3月30日に子どもを産み、乳飲み子を抱えて逃げてきた。
ファトマさんは「恐怖の生活でした。いつ殺されるかと、ただ待つだけでした。多くの人は、犬や猫の肉を食べていました。わたしたちは食べていませんが、小鳥の足さえも食べるような状況でした」と話した。
シリア内戦が始まってから丸4年。

「イスラム国」の台頭で、国際的な支援も届かず、市民たちを取り巻く状況は、さらに悪化している。
この取材にあたった佐々木 亮記者は、次のように語った。
ヤルムークキャンプは、4年以上の内戦で複雑化した今のシリアの縮図といってもいいと思います。
(「イスラム国」と政府軍が戦っているというだけではなく、かなり混とんとした状態が続いている?)
そうですね。もともとは、中に拠点を置いた反体制派と、そこを包囲したシリア政府軍による戦いという対立構造で、こういった構造は、もともとはシリア全土も同じでした。

こうした状況の中でも、国際機関などは、双方と交渉して、住民への人道支援だけは続けることができていました。
しかし、「イスラム国」という過激派が入ると、全く状況は異なってしまいます。彼らとは話が全くできませんので、人道支援が届かず、しかも、恐怖支配におびえている住民は今、極限に追い詰められているという状況です。
(内戦が始まって4年、収束の見通しは?)
収束の見通しは全く見えていません。

どちらとも、一進一退の攻防を続けていまして、どちらかが、力で勝ちを取るということは、もう非常に難しい状況ですので、政治的な解決なしには、この内戦を終えることはできないのが現状です。