Praatスクリプトとは？
スクリプトとは，簡単なプログラムのことです。Praatにはそのようなスクリプトを書き，実行する機能が備わっています。スクリプトを利用することで，様々な作業を自動化することができます。スクリプトとはどのようなものかを理解するために，二つの例を見てみましょう。
例1
たとえば，「音響音声学の基礎」の「（1）純音」に出てくる作業を取り上げてみましょう。ここで行っていることは，以下の三つの手順から成っています。
Create Sound from formulaでSoundオブジェクトを作る
PlayでSoundオブジェクトを再生する
Editで音声波形とスペクトログラムを見る
スクリプトを作って実行することで，この三つの手順を一度に実行することができるようになります。
スクリプトを走らせてみる
以下のファイルは，上の手順を実行するスクリプトです。ダウンロードしてみましょう。
sine100.praat
ダウンロードしたら，このスクリプトをPraatで開いてましょう。上部メニューPraat -> Open Praat script... で開くことができます。
スクリプトを開くと，以下のようなウィンドウがあらわれます。これをScriptEditorといいます。これをみるとわかるように，このスクリプトは3行からなっています。この3行が何を意味するかは，後で説明します。
とりあえず，このスクリプトを走らせてみましょう。ScriptEditorの上部メニューからRunを選び，その中からさらにRunを選んでください。スクリプトがちゃんと走れば，上の手順が自動的に行われ，最終的にSoundEditorが開くはずです。
このように，手作業で行えば三つのステップからなる作業が，スクリプトを書くことで1回のRunにより済むようになります。
例2
「Praatの基本操作（2）：TextGridの利用」では，破裂と声帯振動開始点をTextGridに記録しVOTを計測するという作業を説明しています。このTextGridからVOTの測定値を取り出すという作業を，スクリプトを用いて行ってみましょう。
以下はTextGridとスクリプトのサンプルです。
ta-da.TextGrid
vot_measurement_multiple.praat
（なお，このスクリプトは複数のトークンを含むTextGridオブジェクトに対応しているため，やや複雑なものになっています。トークンが一つだけの場合は，vot_measurement.praat というスクリプトでも計測できます。こちらはよりシンプルなスクリプトです。）
TextGridをオブジェクトウィンドウに読み込んだ状態でスクリプトを開き，例1の場合と同様にRunしてみましょう。測定結果が表示されるはずです。
スクリプトを利用するにはどうすればいいか
上に挙げたのはスクリプトのほんの一例です。上のようなスクリプト以外にも，様々なスクリプトを作ることができます。スクリプトを用いることにより，手作業だと膨大な時間を要するような作業を，あっという間にできるようになります。
では，スクリプトを利用するにはどうすればいいのでしょうか？方法は二つあります。一つは他人の書いたスクリプトを利用する方法です。インターネット上には，自作のPraatスクリプトを公開している人たちがいます。（Praatに関する情報源のページにまとめてあります。）
もう一つは，自ら必要に応じてスクリプトを書く方法です。ここでは，スクリプトの書き方の基本を説明していきます。