2021年度巻頭言 (第8回大会)
大会パンフレットより転載
大会パンフレットより転載
常葉大学外国語学部長
戸田 裕司
2019年度に新型コロナウイルス感染症の世界的流行が始まって以来、私たちのくらしは先の見えないものになっている。経済的損失を被った方も数多くおいでであるし、実際に感染して苦しい時を過ごした方もおいでである。これは紛れもなく災禍である。
だが、この2年間弱を振り返って、「良かったこと」が少なくとも1つあったと思う。
それは、計画したことがその通りに実現することは無いし、それで世界が終わるわけでもない、ということが人々に徹底されたことである。
私たちは物事が思い通りにならない事に大きなストレスを感じる。私たちのこのような気質は、社会や組織を成り立たせるためには非常に有効である。美点であると言ってもよい。しかし、この気質は私たちを非常に窮屈にもさせ、時としてかなり追い詰められた気持ちにさえさせる。
昔「約束は守れる間だけ守ればよい」というアラビアの箴言を読んだ。
まだ若くて純粋であった私は、これを読んで極めて不誠実なことばだと感じた。しかし、2019年度末以来、私たちはみんな色々なところで約束を破っている。仕方がないのである。そして、心ならずも約束を破ってしまったとしても、実は世の中はそれなりに回っていくことにも気づいた。
改めてアラビアの箴言を見ると、約束は守れる間は守るべきだが、守れない状況になったら無理をする必要はない、という今の私たちを支えてくれる言葉だと思われてきた。
ここに課題文として提示された各国の詩文は、いずれもあなたの心の拠りどころとなり得るものである。皆さんがより美しく伝えてくれることを期待している。……が、上手く行かなかったからと言って世界が終わるわけではない。
常葉大学外国語学部グローバルコミュニケーション学科長
谷 誠司
本年度も無事に、「第8回多言語レシテーション大会」を開催することができ、本当に嬉しく思っております。コロナ禍の中で参加を決めてくれた出場者、引率者の高校の先生方、聴衆としての参加者や運営スタッフの皆様には心から御礼申し上げます。
昨年度は動画投稿形式での実施でしたが、今年度は感染状況が昨年度より良いこともあり、対面開催(ただし、観客はzoomによるオンライン参加)としました。それはたとえ、観客はzoomによるオンライン参加であったとしても、できるだけ場を共有したいと考えたためです。
「オンライン」と聞くと「対面」ができない時の代替案と思われがちですが、私自身のオンラインでの講義を体験してみて、改めてオンラインならではの良さを実感しました。皆さんも相手の顔が見えないからこそ安心できる、本音を話せる、自分らしく振舞えると感じたことはありませんか?そして何より、見えないからこそ「自由に想像すること」ができます。オンラインの向こう側にいるのは、家族、友人、先生、恋人…もちろんBTSでも構いません。どうぞ心を込めて発表してください。
出場者の皆様、そして聴衆の皆様にとって実りの多い時間になることを切に願っております。